「いねむり先生」とたばこのつづき(その3)です。
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時間を見ると、まだ十五分も休んでいなかった。カーテンの隙間から差し込む陽射しが強い。
寝所の方を見ると、山のように盛り上がった蒲団から、こっちにむけて靴下を履いたままの足の裏が赤ん坊のそれのように覗いていた。
煙草に火を点けた。
煙が白い糸のように、ゆっくりと部屋の中を流れていった。
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そこまで話して先生は我に返ったような目をして、
「ごめん、変なことを言い出して----」
そうして、アチッ、と声を上げた。
指にはさんでいた煙草の火が指先まで燃えてきていた。放り捨てた煙草が夏草の中で煙を立てた。
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※たばこの話ではないですが、感銘を受けた「いねむり先生」の言葉です。
「サブロー君、人は病気や事故で亡くなるんじゃないそうです。人は寿命でなくなるそうです」
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蒲団に入ったが、とても眠れそうになかった。
庭に面した木戸を開けた。
夜風が勢いよく入ってきた。
濡縁に腰を下ろし、煙草を点けた。
マッチが湿って火が点かなかった。
煙草をくわえたままぼんやりしていた。(その4につづく)