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「宮沢賢治」でございます!(その3)

2016年07月20日 | 小説・映画等に出てくる「たばこ」
「風の又三郎」③
【86~87ページ】
そこで、とうとう、一郎が云いました。
「お、おれ先に叫ぶから、みんなあとから、一二三で叫ぶこだ。いいか。
あんまり川を濁すなよ、
いつでも先生云うでなぃか。一、二ぃ、三。」
「あんまり川を濁すなよ、
いつでも先生云うでなぃか。」
その人は、びっくりしてこっちを見ましたけれども、----。
鼻の尖った人は、すぱすぱと、煙草を吸うときのような口つきで云いました。
「この水呑むのか、ここらでは。」
----、アルプスの探検みたいな姿勢をとりながら、青い粘土と赤砂利の崖をななめにのぼって、崖の上のたばこ畠へはいっていまいました。
すると又三郎は
「なんだいぼくを連れにきたんじゃないや」と云いながらまっ先にどぶんと淵にとび込みました。
【97ページ】
「ああひで風だ。今日はたばこも粟もすっかりやらえる。」と一郎のおじいさんが潜りのところに立ってじっと空を見ていました。

[ken] 今でこそ、葉たばこ産地でもJTの社員を「先生」とは呼ばないでしょうし、産地で直接指導する業務も多くは耕作組合が行なうようになったようです。専売局、専売公社の時代は、葉たばこが農家にとって貴重な現金収入を得る農作物であり、産地に駐在して指導にあたっていた職員さんは長年「たばこの先生」と呼ばれていました。これまた、私にとっては「日常的」なことでした。そして、97ページの台風や雹に見舞われると、大事な葉たばこのことが心配になるのも当然ですね。せっかく青々と育った葉たばこが枝折れしたり、雹で穴が空いたりしたら大きな収入源につながり、農作物がいくら天候に左右される宿命にあるからといって、子どもながらにもハラハラした記憶が残っています。(つづく)
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