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不思議な、歌、ばかり。
不思議な、歌、ばかり。
それでいて、素通りしてしまうのではなく、
少しばかり歩くスピードを落とすような、
それでいて、止まるまではいかない・・・
不思議な、寺井奈緒美さんの短歌。
今雨が降っています で始まった手紙の雨がもう止みました
愛されるために生まれてきたのでしょう賞味期限のないお砂糖は
ささやかな幸せのためささやかな命を奪われたクローバー
焼かれるという経験のないままに晩年を迎えるカップ焼きそば
牛乳が足りなくなって豆乳を足した不思議なラテの味
まとめても500円にも達しない過去をやっぱり持ち帰ります
まだ少し他人行儀であったのに西瓜のシミで夏と化すシャツ
ドーナツの穴の中の心境になれる気がする神社の中は
そんなにも生きるのですかお寂しいでしょうと蝉に同情されて
スマホから顔をあげるたび 達磨さん転んだ のように夜が近寄る
心電図の直線よりもあたたかいレシートの終わり告げる赤は
まだ丸を保っていたいかなしみの小袋のなか割れた煎餅
三日分ためた新聞引き抜かれ郵便受けが深呼吸する
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