ごまめ~の~いちょかみ・Ⅱ

趣味(落語と本)の話と大好きなうどんを中心に、ごまめになってもいちょかみで幅広くお届け

夜にあやまってくれ~鈴木晴香

2019-06-11 02:03:04 | 本の少し
 ☆☆☆☆
あの短歌好きにはたまらない、メッカともいうべき“葉ね文庫”
へ行ったときに購入した本の中の一冊。

鈴木晴香さん、先月の「借り家」短歌会に出て居られて、
丁度テーブルが一緒で私と同じグループ。

一見クールにみえる美人さんだが、どこかホットな心情が見え隠れする。

“葉ね文庫”でパラパラとめくれば、あの日と同じ感性の歌がいっぱい。
ためらいもなく、購入の一冊に決定でしたな。

まずは、お気に入りの歌を(今回は多いですよ)

パンケーキショップの甘い蜂蜜の香りがしたら右に曲がって
おたがいの体に等高線を引くやがて零メートルのくちづけ
君の手の甲にほくろがあるでしょうそれは私が飛び込んだ痕
レトルトカレーの揺れる熱湯のどこまでもどこまでも透明
脇役の多い映画を見た後は悲しみが誰かに似てしまう
太陽を見つめたままのひまわりが赤いリボンで縛られてゆく
かつて火を熾していたこの両腕で君の体を引き止めること
自転車の後ろに乗ってこの街の右側だけを知っていた夏
太陽に向かって咲いている花に嫌気がさしている夏の午後
花を買うことに理由がないように恋を束ねて片腕に抱く
近づけば近づくほどに遠ざかる触れたときから失っている
どちらかが始めた嘘を終わらせて少なく見積もっても明日は雨
お揃いのほくろがあれば何度でも出会えるような筋書きになる
一日が朝で終わる日 君といた時間のすべてに落ちていた月
冷たくも温かくもない雨の下のふたりは濡れてまた巡り会う
もう一度 (例えば恵比寿の改札で)振り向こうと思えば振り向ける
転がったペットボトルの蓋ほどの偶然の行き先のその先
恋人をやめたときから君の目を眼鏡越しでしか見られなくなる
もう一度ふたりが出会う世界では君から先に私を見つけて
花を切るための鋏で君からの最後の手紙を花びらにする
悲しいと言ってしまえばそれまでの夜なら夜にあやまってくれ
がたがたのトウモロコシの残骸の汝を愛することを誓います
好きだって言わなくたってもセックスはできるものだというお告げあり
側道を行く自転車の後輪が春の終わりを巻き込んでいる
当たり前のように重たくなる花瓶  時間はこうして重さに変わる
眼裏にまだ君がいる真夜中に今度は私から好きと言う
太腿の上に座って抱かれれば夜空に少しだけ近づいて

なかなか、ストレートでありながら、エロくないふたり

聡明であるがゆえに、一定の距離感を保つ、この具合が心地よい。

そんな、鈴木晴香さんの歌集でございます。


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