「粗」にして野だが卑ではない
城山三郎
文春文庫・476円
☆☆☆
第5代国鉄総裁・石田禮助の生きざま「精神のダンディズム」を、
城山三郎が描く。
数え93才で亡くなった石田が、息子の嫁に指示した遺言がある。
長くなるが、思いがすべて語られているので掲載する。
○死亡通知は出す必要はない。○こちらが死んでしまったのに、
第一線で働いている人がやってくる必要はない。気持はもう頂いている
○物産や、国鉄が社葬にしようと言ってくるかも知れぬが、おれは現役
ではない。彼等の費用をつかうなんて、もってのほか。葬式は家族で営め
○香典や花輪は一切断われ○祭壇は最高も最低もいやだ.
下から二番目ぐらいにせよ。○坊さんは一人でたくさんだ.
○戒名はなくてもいい。天国で戒名がないといって差別されることも
ないだろう
○葬式が終わった後、「内々で済ませました」との通知だけ出せ。
○ママは世間があるからと言うかも知れぬが、納骨以後もすべて家族だけだ。
○何回忌だからといって、親族を呼ぶな。通知をもらえば、先方は無理をする
○それより、家族だけで、寺へ行け。
形見分けをするな。つゆ(奥さん)が死んでも同じだ。
作者城山三郎は、全て取材をもとに一切自分の思いをいれる事がない
ドキュメンタリーのごとく、事実のみを書いているようだが、
石田のいきざまに、共感、惚れていなければ書けない文章である。
昭和63年の初版。ベストセラーになり、流行語にもなったとか、
遅まきながら、読んだ、羨ましいいきざま・・・。
「粗にして野だが卑ではない」、男たるもの、この様に生きたいものだ。
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