これはソフィアでの話です。
バスに乗っていると大きな声でディベートが始まりました。その当時まだ半年しかブルガリアに住んでいなかった私でも「またか・・・」という感じの出来事です。一人暮らしのお年寄りが多いソフィアだからでしょうか、時々、バスや路面電車の中で周りの人々に普段のストレスを炸裂させて論議を吹っかける年配の人が多いのです。でも今回のディベートのテーマがあまりに興味深かったので取り上げてみることにしました。
事の発端はこうです。80歳くらいのおばあさんがバスに乗ってきて、10歳くらいの男の子を席からどかして自分が座ったのです。その男の子と、その子の弟らしいもっと小さい子を連れた二人のおじいさんらしき男性が彼女に猛抗議したのでした。そうすると彼女は、
「私も5人の子供を育てた!! でも必ず年寄りに席を譲るように教育したわよ!!!(怒)」
この、彼女の発言は私にとってとても興味深いものでした。なぜかというと何度も大人が子供に席を譲るのを見ているからです。たとえば小学校低学年の男の子をつれた母親がバスに乗って、席がひとつしか空いていない場合、そこに座るのは、母親ではなく(元気盛りの)男の子なのです。だから、先ほどのおばあさんのようなブルガリア人のマイカ(お母さん)は多数派ではないようなのです。
お年寄りに席を譲ることが日本では当たり前(今はどうかな??)のように美徳とされていますが、ブルガリアのこの習慣は真っ向から反することです。これは私からすると子供を甘やかしているように見えてならないのですが・・・でも、このバスの車内の他の乗客の発言ももっともです。「バスが揺れてこどもが転んだらどうするの!!!」 確かにソフィアのバスは運転が荒いし、整備状態も良くないのでガクンと急ブレーキで停まる事も多いし人が乗り降りしてるのにドアを開けたまま発進する事もしょっちゅう。時々乗りそこねたお年寄りが引きずられたり倒れたり、私もバスに乗ろうとしているときにドアにはさまれたこともありました。多くの旧式バスはバス停とバスの車内との段差が大きく、乗るときは「登る」という感じなので目線の低い子供が危ないと感じるのも無理のないことです。
そこで、このおばあさんの後ろに座っていた若い女性が、舌打ちをしてからその10歳くらいの男の子に席を譲りこのディベートは終わりました。この若い女性は(ほとんどすべての「若い」ブルガリア人はそうだとおもうのですが)この年寄りたちのディベートが嫌いなので早く終わらせたかったようです。
本当に、子供に対する親たちの反応がとても(!?)日本と違っていて興味深いのでまた後日取り上げたいと思います。