『「現代型うつ」はサボりなのか』
吉野聡 著
平凡社新書 699
部下を持つ人、人事担当者、そして子育て中の親に読んでほしい良書です。
「現代型うつ・新型うつ」の本の中でも、職場での対応や上司としての心得も書かれている点で非常に読む価値のある1冊になっています。
働く人たちのメンタルヘルスを扱う「精神科産業医」である著者が、「現代型うつ・新型うつ」を「会社に適応できない状態で心因性のストレスを感じ、心の病気になっている状態」として、きちんと「病気」「うつ病」の枠でとらえ、対処・予防についても書かれているところが秀逸です。
また、この本では、会社に適応できない若者を「未熟」と切り捨てる論調に疑問を投げかけています。
はたして、今の若者が「未熟」であるのか?今までの世代が「成熟」していたと言えるのか?そもそも「成熟」とはどのようなものなのでしょうか?
私も、「できる人が職場の空気を読んで自己犠牲で業績を上げてきた社会」が「成熟」しているといえるのか、非常に疑問を感じます。会社にとって都合の良い人間でいることを「成熟」というのは、経営者側の論理でしょう。
家族や恋人との時間を持てない社会が今の少子化の大きな原因の一つだと考えられますし、「プライベートも大切にし就業時間内で能率よく仕事ができる社会」のほうが、実際には「成熟」しているのではないかと思うのです。
多くの情報と選択肢を与えられて「自分らしく生きること」を理想に掲げた社会で育ってきている若者たちにとって、旧時代の「自己犠牲社会」が大きなストレスであるのは間違いないと思います。
仕事をしても仕事をしても、一昔前のように「終身雇用」「年功序列」もなければ、毎年の「基本給のベースアップ」や「ボーナス」も少ない社会では、無理をすることに魅力を感じないのは当たり前ではないでしょうか。
それでも、上司世代から見れば若者たちが怠けているように見えるのかもしれませんが、「未来への展望・生きづらさが違う」ということを会社側がしっかり認識しなければ、これからの時代の担い手を多く失うことになると感じました。
これからは、職場の上司こそが「職場を精神環境の良い場所に変えられるか?」「若手を育てる能力があるか?」「仕事の意味と目的をきちんと把握し、部下を納得させ、仕事へのやる気を高められるか?」試される時代なのかもしれません。
子育て中の私にとって、特に参考になったのは第6章。
「職場で『うつ』の若者とどう向き合えばいいのか」という職場向けの提案の中に、子育ての段階で気を付けていきたい子どもへの接し方がいくつも見えてきます。
親の行動として、
・自己肯定感・有意味感が育つような接し方をすること(見守り、ほめて育てること)
・一貫性のある言動・責任ある言動をすること
・「何でやったの?」でなく、「今後はどうする?」と叱ること(誠実に、具体的に叱ること)
・親の考えを押し付けずに、悩みを聞くこと
・他罰的言動を慎み、前向きな言動をすること
・「嫌なことはやらないでいい」環境を作らない
一番小さな社会としての家庭において、親が見本となれるように努力が必要なのだと思います。
<関連記事>
・『職場を襲う「新型うつ」』 - MOONIE'S TEA ROOM
吉野聡 著
平凡社新書 699
部下を持つ人、人事担当者、そして子育て中の親に読んでほしい良書です。
「現代型うつ・新型うつ」の本の中でも、職場での対応や上司としての心得も書かれている点で非常に読む価値のある1冊になっています。
働く人たちのメンタルヘルスを扱う「精神科産業医」である著者が、「現代型うつ・新型うつ」を「会社に適応できない状態で心因性のストレスを感じ、心の病気になっている状態」として、きちんと「病気」「うつ病」の枠でとらえ、対処・予防についても書かれているところが秀逸です。
また、この本では、会社に適応できない若者を「未熟」と切り捨てる論調に疑問を投げかけています。
はたして、今の若者が「未熟」であるのか?今までの世代が「成熟」していたと言えるのか?そもそも「成熟」とはどのようなものなのでしょうか?
私も、「できる人が職場の空気を読んで自己犠牲で業績を上げてきた社会」が「成熟」しているといえるのか、非常に疑問を感じます。会社にとって都合の良い人間でいることを「成熟」というのは、経営者側の論理でしょう。
家族や恋人との時間を持てない社会が今の少子化の大きな原因の一つだと考えられますし、「プライベートも大切にし就業時間内で能率よく仕事ができる社会」のほうが、実際には「成熟」しているのではないかと思うのです。
多くの情報と選択肢を与えられて「自分らしく生きること」を理想に掲げた社会で育ってきている若者たちにとって、旧時代の「自己犠牲社会」が大きなストレスであるのは間違いないと思います。
仕事をしても仕事をしても、一昔前のように「終身雇用」「年功序列」もなければ、毎年の「基本給のベースアップ」や「ボーナス」も少ない社会では、無理をすることに魅力を感じないのは当たり前ではないでしょうか。
それでも、上司世代から見れば若者たちが怠けているように見えるのかもしれませんが、「未来への展望・生きづらさが違う」ということを会社側がしっかり認識しなければ、これからの時代の担い手を多く失うことになると感じました。
これからは、職場の上司こそが「職場を精神環境の良い場所に変えられるか?」「若手を育てる能力があるか?」「仕事の意味と目的をきちんと把握し、部下を納得させ、仕事へのやる気を高められるか?」試される時代なのかもしれません。
子育て中の私にとって、特に参考になったのは第6章。
「職場で『うつ』の若者とどう向き合えばいいのか」という職場向けの提案の中に、子育ての段階で気を付けていきたい子どもへの接し方がいくつも見えてきます。
親の行動として、
・自己肯定感・有意味感が育つような接し方をすること(見守り、ほめて育てること)
・一貫性のある言動・責任ある言動をすること
・「何でやったの?」でなく、「今後はどうする?」と叱ること(誠実に、具体的に叱ること)
・親の考えを押し付けずに、悩みを聞くこと
・他罰的言動を慎み、前向きな言動をすること
・「嫌なことはやらないでいい」環境を作らない
一番小さな社会としての家庭において、親が見本となれるように努力が必要なのだと思います。
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・『職場を襲う「新型うつ」』 - MOONIE'S TEA ROOM