誰や知る 雪のきよきを憎みて
ちまたに塵をまきし 彼の朝のことを
誰や知る 花のあかきを憎みて
錆びたる鎌にちぎりし 彼の夕のことを
痛々しき傷ににじむ 血のかをりに
おまへを軽んじた 彼の夜の闇のことを
あらゆる百合のかなしみに
あをくさのまなざしに
泥の針をまぜ あざ笑はねば
生きてゆけぬ心臓を抱き
幻の城に君臨した 我のこの日々の痛きことを
誰も知らぬ 我のほかは
誰や知る あをき若枝のごとき
ますぐなる指もて それを記すものを
誰や知る いはぬことばにもえ
しづかに怒る花の 我の中に咲くことを
永遠の吐息を
なきものの柱にとぢこめ
死に絶えた貝のうらみに
すべてをとかしてしまひたかった
誰も知らぬ この愚かさを
誰や知る 我のほかに