メギ科ヒイラギナンテン属。Mahonia japonica
種小名にはjaponicaとありますが、原産は中国だそうです。常緑低木。でも冬の寒い時期には、全体が赤っぽくなりますね。それがとてもきれいです。
これは幼稚園の近くの、スーパーの裏手に植えられているヒイラギナンテンです。今は、こんなかわいい黄色い花が、いっぱい咲いています。
人間が好きかきらいか、という観点で振り分けたら、このヒイラギナンテンは、どうしようかなあ?とちょっと考えたあと、中立派を選ぶことでしょう。
あんまりにやっかいなことをする人間は、ほんとはちょっといやなんだけど、痛いことをして、こけて、馬鹿だなということになって、苦しんでいる人間をみたら、やっぱり放ってはおけない。
仕方ないなあ、という顔で、影からそっと、やさしいことをしてくれる。でも人間は、そんなことにはぜんぜん気がつかなくて、ちょっと立ち直ったら、また変なことをやり始める。ヒイラギナンテンは、ちょっと悲しくなって、だまりこむ。
そんな感じです。
ヒイラギナンテンは、とてもかわいいし、低木なので、よく庭や公園などに植えられているのですが、なかなか美しい樹形になりません。どこかゆがんだり、ぼさぼさになったり、小さく縮こまった感じになったり。わたしの見たところ、人のたくさん集まるところに植えられているものほど、くたびれているような気がします。
それは、ヒイラギナンテンが、人々のやっていることを、みんな知っているからです。町で、ヒイラギナンテンを見かけたら、近寄って、たずねてみてください。「わたしのことを、知ってるの?」ヒイラギナンテンは、ただしずかに、まっすぐに返してくれるでしょう。
ヒイラギナンテンは、マツほどに強くない。痛いとげで、外壁を守り、あまり近寄らないでとは言っているけれど、かわいらしい花が、子供や、寂しげな大人に、ふっと微笑みかけてしまう。ヒイラギナンテンの木が、ゆがんでしまうのは、この自分のやさしさが、つらいから。意地悪が、できないから。
だから、人々の心のとげが、ひりひりと痛すぎるとき、ヒイラギナンテンはゆがんで、くたびれて、いつしか、溶けるように、消えていく。
ヒイラギナンテンのとげは、人を傷つけるためではない。やさしさに弱くなる自分の心を、精一杯、守るためなのです。