今度は、二冊目の著書、「小さな小さな神さま」から。
タイトル通り、いろんな神さまがいっぱい出てくるお話なのですけれど。
美しい谷をつかさどり、豊かな世界をつくっていた、小さな神様が、ある日、にんげんというおもしろいものがいると聞いて、にんげんをもらうために、はるかな山の神のもとへと旅をする、という話なのですが。
このお話については、立派な神様の絵を描いてもよかったと思うのだけど、それは本の挿絵にいっぱい描いたから、まあいいやと思って、お話の中に出てくる、ただひとりの人間、チコネを描いてみました。
神を裏切り、殺し合いを始めた人間たちの中で、ただひとり、それを悔やみ、神様のもとに帰ってきた人間、それがチコネです。そして神様は、たったひとりのその人間のために、すべてを与えていく。
にんげんは幼い。本当に何もわかってはいない。どんなにか神様が大事にしてくれて、愛してくれていたのかも知らずに、勝手なことをやりはじめて、神様を馬鹿にして、神様を見捨ててゆく。その中で、たったひとりだけ、帰ってきた。たったひとりだけ。
それが、小さな神様の心を揺り動かすわけなのですが…。
小さな神様は、人間たちに言うのだ。
悲しい日々だった。苦しい日々だった。やってはいけないことを、お前たちはした。だが、もう一度、わたしのもとで、やり直してみるか?おまえたちがそう思うならば、わたしはおまえたちのために、すべてのことをやってやろう。
チコネはどこにいるだろう? 今も、あの小さな神さまの谷に住んでいるだろうか。