今回はイソップ寓話のパロディをやってみました。
これはもともと、読み聞かせボランティアグループの、パネルシアターの原案だったものなんですが、処々の事情あってそれができなくなり、そのまま放っておいた原稿を掘りだして、少し書きなおしたものです。
旅人のおっかさんは、とても優しくて、たいそうなお人好しらしかったようだ。きっと若い時に夫を亡くして、女手ひとつで小さな息子を育ててきたんでしょう。貧乏でも、正直に生きて、ひっそりと死んでいったんだろうなあ。息子に、小さな畑を残して。
ほんとうにね。生きることは大変なことがいっぱいある。精一杯生きて、この世に残せるものと言ったら、本当に小さなものだ、たいていは。おっかさんが残していったのは、畑よりもむしろ、息子の中のやさしさだったんでしょう。
今の世の中、そんな甘いことで生き抜けていけるはずはないと思っている方が大方でしょうけれど。悪いことの一つや二つ、できなければ、生きていけないと思っている人が多いでしょうけど、わたしはそういうのはいやだ。なぜならそれは、間違っているから。
旅人にも、これからつらいことはあるかもしれないけれど、おっかさんのように、たとえ貧しくても、正しく、明るく、神様に恥じることのない生き方をしてほしいと思う。猫だって、馬鹿にしてはいけませんよ。大切にすれば、人間に、本当に大切なことをしてくれるんだ。
でもにんげんは、にんげんをあまり大切にしないんだ。なんだかみんな、いつも文句ばかりをいって、だれかにけんかをふっかけるようなことを言っている。憎みあったり、傷つけあったりするのは、つまりは、相手の方が、自分よりよく見えてしまうからですね。何度もこのことは言ったけれど、他人は絶対、自分にはないものを持っている。そんなの、人によって違うのは当たり前だから、うらやましがったり、欲しがったりするのは間違いなんですが。にんげんはどうしても、他人のものを欲しがるようだ。だから、傷つけあう。ねたみあう。醜い争いがおこる。
もういいかげん、やめたほうがいいと思うけどなあ。もうだいぶわかってきていると思うんだけど。