生きるのが 苦しいのはね
遠い昔 灰色の巨人が
嘘のワインを
地球の風に混ぜてしまったからなんだよ
だから人間は
息をするたびに苦しい
息をしなくては生きていけないのに
息をすれば死にそうになってしまう
嘘が 命の中に忍び込んで
いちばん大事な 心臓に住んでいる
銀のこりすを 殺そうとしてしまうんだ
大切な自分の 本当の愛を守ってくれている
かわいい銀のこりすを
こりすが死んでしまえば
人間はただの動くだけの空っぽの人形になる
あるいは もう
生きているのがいやになって
死んでしまう
悲しいね でも ぼくは
傷だらけになっても 生きていく
ぼくのこりすは 強くって
とても歌が上手なのだ
少しくらい毒を吸ったって平気なんだよ
詩を歌って こりすに聞かせれば
こりすはちゃんと生きていてくれる
僕の心臓は死んだりしない
ぼくの詩が尽きてしまわない限り
生きているのが苦しいのはね
遠い昔 灰色の巨人が
地球の風に混ぜた 嘘のワインを
ほんとうだと勘違いして
みんなが飲んでいるからなのだ
嘘のワインは それはもう
香りも色もほんものそっくりで
ほんものよりもきらびやかで美しくて
とても甘いから
生きるのが苦しいから
人間はもっと嘘のワインを欲しがる
それを飲めば しばらくは楽になるからさ
けれど 毒が体中に回って
愛のこりすがまた弱ってくる
生きるのが苦しいのが いやなら
もう嘘のワインを捨てよう
そして 本当の空気が流れている
本当の風の川を探そう
それはほんのすぐ近くにあって
耳を澄まさなくても
水音が聞こえる
おいで こっちに
もう苦しまなくていいんだよ