ほんとうの幸いはなんだろうと
賢治に問われたことがある
ぼくはそれを知っている
ぼくは胸の中の小籠に
小さな銀の栗鼠を飼っているけれど
その栗鼠が時々
水晶の水のような声で
歌を歌うときがある
すると
大きな風がざっと吹いて
緑のくすのきの梢を吹き上げるように
見えない神様が
ぼくの中を通り抜けていくのだ
そのとき ぼくは世界がひっくり返って
まるっきりひっくり返って
とんでもない お日様とお月様の秘密を
見てしまう
そのときの驚きを叫ぶとき
僕の声は 一羽の白い鶴の声になっているのだった
ああ 幸せだ
ぼくはそう 鶴の声で鳴く
前身に満ちわたる熱いものが
星空の歌う交響楽に似ているのを感じる
真実は
真実は愛そのものなのだ
幸いは それがわかることだ
理屈じゃなく
体全部で
ぼくの存在 全部で
すべてがわかることだ
体全部で感じるその幸いを
ぼくは小さな詩にして
賢治に教える
この砂はみんな 水晶だ
中で 小さな火が 燃えて いる
この世界はみんな たった一羽の小鳥だ
歌で 永遠の愛を 燃やして いる
さいわいの 歌
ぎんがてつどうの 夜