空になったコーヒーのパックと一緒に
愛を ゴミ箱に捨てて
君は淋しげな瞳で
愛が欲しいと言う
胸の中を吹く青い風は
海から吹いているのではない
かすかに香る潮のにおいは
海の匂いではなくて
君の血の匂いだ
忘れるために
君がハサミで切り落としていた
薔薇の木の枝は
本当は小さな細い君の指だった
切るたびに 血が流れる
切るたびに 指は生えてくる
生えるたびに 切る
血がとまらない痛みを
忘れるために
小さなコーヒーのパックを
握りつぶすように
君は小籠に住んでいた
白い小鳥を握りつぶす
忘れるために
君がすりつぶして殺していた
小さな蟻は
君が言いたかったのに言えなかった
秘密の言葉だった
言えない言葉をつぶすたびに
それは君の心臓を鉛に浸していく
萎えていく命を
しびれる悲哀の中に溶かして
君はうつろな笑いの中に消えてゆく
(欲しかったわけじゃない
ただ なんにもない
空っぽの孤独の中で
お日様を馬鹿にして
冷たい光を 浴びてみたかった
いなくなった愛の
いたところに 何もない
白い影が見える
欲しかったわけじゃない)
空になったコーヒーのパックと一緒に
愛を ゴミ箱に捨てて
君は淋しげな瞳で
愛が欲しいと
言う