◇『ヘリコプター・ハイスト(舞い降りた略奪者)』(原題:THE HELICOPTER HEIST)
著者:ヨナス・ボニエ(Jonas Bonnier)
訳者:山北 めぐみ
2017.9 ㈱KADOKAWA(角川文庫)
新年おめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
この本、TVでおなじみの「オーシャンズ13」を思わせる大金強奪チームの一部
始終である。
のちに「史上最も華麗で大胆な銀行強盗」と称されることになる大胆な犯罪計画
をわずか4人の手で成功させた。
ところはスウェーデン・ストックホルム。
首謀者はゾラン・ミルコビィッチ(ユーゴスラヴィア人実業家)、ミッシエル・
マルーフ(レバノン出身・独身)、サミ・ファルハン(イラク出身・妻子あり)、
ニクラス・ノルドグレン(スェーデン人電気工)が主要人物でもちろんスポット
で働く協力者は何人もいる。
マルーフが屈指の警備会社に新型の現金運搬ケース売込みに失敗した。それに
代わる計画は何か。新たなプラン強奪事件の圧巻場面は、ほとんど終わりに近い
52章以降である。現金強奪のターゲットはG4Sという警備会社の運搬資金集約場
所。10億クローナという莫大な現金が集計課に集められ2階の金庫室に収められる。
彼らはこの集計室を狙う。そして集計室はビルの5階にあるためヘリを使う。
屋上と防護壁を壊す爆薬、5階まで下りる梯子、警察車両をパンクさせる鉄菱鎖、
時限爆弾を思わせる仕掛け、ヘリと操縦士の調達等々、およそ9か月かけて周到な
準備がなされ、実行に移されるのであるが、結構詰めが甘いところがあって、こん
な連中でほんとうに成功させることができるのか心配になる。
ところが警察陣も抜かりはない。要注意人物であったミルコヴィッチの電話を盗
聴しているうちにこの犯罪計画の進行を察知したスウェーデン警察のカロリーネ・
トゥルン、マッツ・ベリグレンが主体となり、ターゲットの資金集約場所と襲撃日
と目された日も特定するが、当日国家特殊部隊も動員しながら捜査陣を終結させた
ものの、まんまと裏をかかれ、一週間後に実行に移される。しかも時限爆弾に見せ
かけたランプに惑わされて銃撃を避けたためにみすみす現金袋を積んだ移動ヘリを
逃してしまう。
15分間で犯行完了とした計画が実際には33分かかり、しかもヘリの燃料がガス欠
寸前という綱渡りの犯行後見事連絡用ボートに移し替えたのであるが…。
最後の最後にどんでん返しがあって計画は成功したが金は手に入らなかった。
結局実行犯はみんな逮捕され、裁判で実刑をくらった。
本編の8割かたは現金強奪計画とその準備、実行過程の緊張した場面の描写に費やさ
れ幾分退屈するが、最後にほんとに頭の良い誰かが果実を独り占めにするというオチ
で締めくくられ、クライムノベルというよりも犯罪アクション映画である。
(以上この項終わり)