◇『モンテ・クリスト伯(二)』(原題:Le Conte de Monte Cristo)
著者:アレクサンドル・デュマ(Alexandre Duma)
訳者: 山内 義雄 岩波書店 (岩波文庫)
<遺骸と置き換わって>
司祭は亡くなった。ダンテスは司祭の遺骸を自分の獄房に寝かせ、自ら遺
骸袋に入り脱獄することにする。墓場に土をどうするか心配しているうちに
獄吏たちは横着をして遺骸を断崖から海に投げ捨てる。しかも重石を結び付
けて。
ダンテスは持っていた小刀で嚢を切り裂き、重石を外し監獄島とは別の小
島を目指し泳ぎついた。
そして通りかかった帆船を目指し必死で泳ぎ続けた。
<密輸船に助けられ>
それはジュヌ・アメリー号という密輸入船の一つだった。嵐で遭難した船
の乗員の一人という説明に、やや不審に思いながらも巧みな操船技術に惚れ
込んだ船長の計らいで船員の一人として働くことになった。
そして数カ月経った。偶然にもトルコ絨毯の密輸入品の交換場所としてモ
ンテ・クリスト島を選んだことを知り、この機会に島の宝物探検を行う決心
をする。
ダンテスは野山羊撃ちを口実に財宝のあるという洞窟を探し出した。彼は
怪我を装って独り島に残り財宝確認を図る。取引を終えたらまたこの島に寄
ってもらうことにして。
<財宝を発見>
ダンテスは巧みに装った花崗岩の壁奥に財宝の箱を発見した。金貨、金地
金、ダイヤ・真珠・紅玉などの宝石が燦然と輝いていた。
とりあえずダイヤをポケットに一杯詰め込んだ。財宝の箱は元通りに隠し、
6日目に戻ってきた船で港に戻った。財宝のことはおくびにも出さなかった。
<まずは恩人たちに感謝 >
ダンテスは溺れかかった彼を救出してくれた恩人のジャコポに真新しい船
を1艘買い与え、自分の父とメルセデスという女性の消息を聞いて来て欲し
いと頼んだ。
ジュヌ・アメリー号の船長には暇を貰った。そしてジェノワ製のヨットを
買いスペインの貴族という触れ込みでジェノワを出港した。船はモンテ・ク
リスト島に寄り、財宝はヨットに積み込まれた。
ジャコポは調べた結果を持ってきた。老ダンテスは亡くなり、メルセデス
は行方不明だった。
ダンテスはかつての自分たちの住まいだった家を買い取り、同じ家に住ん
でいた仕立て屋カルドッスが落魄しマルセイユで旅籠屋をしていることを知
る。
ダンテスは司祭の姿に身を変え、運河開通で昔の街道筋の旅籠業が立ち行
かなくなったカルドッスに会う。そして父の最期と誰がどういういきさつで
ダンテスを罪に陥れたのかを聞き出した。そして父の最期を看取って呉れた
カルドッスに5万フランもする大粒のダイアモンドを与えて去る。
<かつての船主モレル氏>
モレル氏は破産の危機にあった。持ち船の5隻をなくし、今はファラオン号
の帰りを待つばかり。期日が迫っている手形もあった。そこに現れたダンテ
ス(船乗りシンドバットと名乗る)。その手形を買い取り支払い猶予してあ
げたが、次の2件の借財の決済資金85,500フランも工面がつかなかった。か
つてファラオン号の会計担当で今は銀行家の娘婿として裕福になっていたダ
ングラールに資金融通を頼んだが断られ、破産者の汚名を着る前に自殺する
しかないという状況に陥っていた。シンドバットは秘かに金を用意し、モレ
ル氏は経営危機は乗り切った。しかもモレル氏の娘ジュリーの結婚費用もプ
レゼントするなどし過去の恩に報いた。
<イタリアに現れたシンドバット>
イタリアのフィレンツェに滞在するフランツとアルベールという若い青年
貴族の2人。ローマの謝肉祭体験のためにやってきたが、ある日歌劇場の桟
敷席に船乗りシンドバットを見出し奇遇に驚く。この先この二人がどう絡む
のか。
(以上この項終わり)