読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

伊岡 瞬の『悪寒』

2022年04月21日 | 読書

◇『悪寒

   著者:伊岡 瞬   2019.8 集英社 刊 (集英社文庫)

 

 山形の系列子会社営業所に飛ばされて、初めての営業仕事に悪戦苦闘して
いる男が現れて、東京に残した妻子の今を思っているシーンで、ありきたり
のサラリーマン小説かと思ったが、違った。

 大手製薬会社の社内権力抗争に巻き込まれた藤井賢一。組織上専務派と目
されていたのに対立する常務から贈賄事件の実行者として責任を問われ、系
列会社の営業所に出向という形で左遷された。

 田舎町での配置薬販売の営業仕事に嫌気がさしていた藤井は突然非日常の
世界に放り込まれる。
 ある夜妻の倫子から脈絡のない不審なメールを受ける。心配になって練馬
区の自宅に帰るが、バスの中で倫子の妹優子から妻倫子が自宅で殺人を犯し
たという話を聞かされる。しかもその被害者が常務の南田隆司だという。一
体何が起こったのか。しかも常務がなぜ妻と一緒にいたのか。

 警察の執拗な取り調べが続く。警察の疑念は賢一の殺人教唆である。山形
の営業所に飛ばしたが南田隆司だから。
 ところが娘の香純が意外なことを口にする。
 「母は南田隆司に妊娠させれれていた」
 賢一にとっては測り知れないショックである。
   妻が起こした殺人事件。しかも妻の不倫・妊娠・堕胎…。

 裁判が始まった。そこから
次々と意外な事実が明らかになる。
さて真相は。

 これではサリーマン小説どころか完璧にサスペンスである。実際ありそう
な状況設定なので「中年男の鈍感さ」を含め結構リアリティがあって読者を
惹きつけてやまない筋書きである。                    
                       (以上この項終わり)
 

 

 
 
 

コメント (2)
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