読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

西川三郎の『瘤』

2017年11月03日 | 読書

◇『』  著者:西川三郎  2009.8 幻冬舎ルネッサンス 刊

  

     会社経営者にして作家の西川三郎の作品。

  横浜・みなとみらい地区の「臨港パーク」にある公衆トイレで男の死体が発見され
 た。ポケットには10桁の数字が書かれた紙が。遺体はマスコミ・放送界の重鎮藤原公
 平と判明。
  その1週間後、やはりみなとみらい地区「象の鼻」近くで男性の水死体が上がった。
 背広のポケットにはやはり10桁の番号を書いたメモがあった。調べが進みこの数字は
 基礎年金番号であることが判明。被害者は織田五郎、日本医会会長。年金番号は殺人
 予告ではないかと捜査陣は次の殺人防止に意気込む。しかし番号該当者は神奈川県選
 出の代議士山上太郎代議士。前二者は郷里福岡の高校同級生という関連はあるものの
 山上代議士との関連がわからない。

 犯人は誰か。
 織田五郎の息子心臓外科医の祐一郎。祐一郎に求婚されている看護師の結子。結子の
 遊び相手水口靖男。織田祐一郎にいびられている早川医師などが容疑者。

 今は社保庁関内社会保険事務所職員の水口靖男には暗い過去がある。母親は織田五郎
 の元愛人。その愛人をお抱え運転手にあてがい生まれたのが靖男。祐一郎とは同い年
 で同じ屋敷内に住んだ。父親は公金横領のぬれぎぬを着せられて自殺。母と靖男は家
 を追い出されるが母親は失踪する。
 その母親は少女時代に藤原公平に強姦された過去があった。

 そんな水口靖男が偶然病院で祐一郎に会う。そして祐一郎の付き合っている結子と割
 ない仲になる。これは偶然か意図的か。女性遍歴の多い祐一郎が年貢を納め結子に求
 婚する。しかし結子は求婚を受け入れながら依然として水口と会い続ける不思議さ。
 早川医師は祐一郎と結子の結婚を阻止しようと水口をそそのかすが…。
 博多の二人の住人が奇しくもみなとみらい地区で殺される偶然。警察では一つ以上の
 偶然は受け入れない。第三の殺人は起きるのか。そしてそれは誰なのか。
 果たして犯人は。

 結構筋立ては複雑であるが、いくつかの偶然が重なっていて好都合でありすぎる。犯
 人も途中で見当がついてしまう。
   犯人の独白。「人は必ず裏切る。それを知った人間はもうひとりでしか生きてはいけ
 ない」この観念は犯人の人生観である。

 ところで『瘤』とは?
 水口靖男の母は言う「お母さんは、瘤だったとよ」「えっ、瘤?」「瘤はじゃまだけ
 んね」本書の題名の由来と思われる痕跡はこれだけ。作品の内容を表象しているわけ
 ではない。

 (以上この項終わり)

  
 

 

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