読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

ロジャー・ホッブズの『ゴーストマン・消滅遊戯』を読む

2017年11月08日 | 読書

◇ 『ゴーストマン・消滅遊戯』(原題:VANISHING GAMES)

              著者:ロジャー・ホッブズ(Roer Hobbs)
              訳者: 田口 俊樹  2017.9 文芸春秋 刊


  

      21世紀最高のノワール・シリーズ第2弾。21世紀に書かれた犯罪小説で10指に
 入る傑作とされた『ゴーストマン・時限紙幣』に次ぐ。
  ゴーストマン対殺し屋ローレンス対中国マフィア。全篇これ犯罪者同士の半端な
 い闘いのみ。我々一般人の想像を絶する非日常の世界が展開する。単純なハードボ
 イルドとはまた違った血沸き肉躍る攻防が楽しい。

  世界で屈指の犯罪者ゴーストマン(私)にアンジェラから6年ぶりに連絡が入っ
 た。かねて示し合わせたサインSOSである。
  アンジェラは私の師匠。私が犯罪の第一人者になるまで、必要なすべてを教わっ
 た。5歳年上だ。
  アンジェラに何があったのか。罠かもしれないがアンジェラのためなら死も厭わ
 ない。ゴーストマンは敢然とマカオに飛ぶ。

  アンジェラはジャグマーカー(犯罪計画者)としてミャンマー産出の稀少サファ
 イヤの洋上強奪を企画、3人のチームを仕組んだ。彼らは見事運搬船の襲撃に成功
 し、目的のサファイアを手に入れたのであるが、チームの一人は目的の宝石の価値
 を幾層倍上回る戦利品を手に入れた。そしてプラン通りマカオの海岸に上陸したの
 であるが…。正体不明の殺し屋が待ち構えていて、宝石はあっさりと奪われた。

  アンジェラは宝石強奪の知らせは受けたものの、仲間は肝心のブツの引き渡しに
 現れない。代わりに届いた荷物には仲間の一人の頭部と「盗んだものは返せ、返せ
 ばサファイアはお前のものだ ここで明日見張っているからな」のメッセージ。
  アンジェラは危険を察知しゴーストマンにSOSを発し直ちにアジトのホテルを脱
 する。

  無事に再会を果たした二人は、殺された仲間が海中に隠した戦利品の何とか回収
 したのであるが、それは超精巧な偽札であった。その額はなんと1500万㌦。これ
 ほど精巧な偽札を作る組織はならず者国家、情報機関、将軍、独裁者しかいない。
  アンジェラと私は水上警察巡視艇や殺し屋ローレンスの苛烈な追跡を逃れて何と
 かマカオの隠れ家に落ち着く。

  二人は二つの殺し屋に狙われる。一人はサファイア取引を横取りされたと信じて
 いるの中間業者で故買屋でもあるマカオマフィアの龍頭。もう一人は偽札の持ち主
 を依頼人とする殺し屋ローレンス。

  後半シルビアは龍頭と丁々発止の駆け引きでなんとか危機を乗り越えようと機略
 を尽くす。一方私は奪われたサファイアを取り戻すためにローレンスと相まみえる。
 とにかくローレンスとゴーストマンの死闘シーンは手に汗を握る。

  サファイアを取り戻し偽札を手に入れた二人は、いつとも知れぬ再会を約してま
 た別れる。 

  作者とすればゴーストマンシリーズとして第3作、第4作を続ける意図があったよ
 うであるが、2016.11薬物の過剰摂取で亡くなった。享年28。

                             (以上この項終わり)

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