読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

『犯罪心理捜査官セバスチャンー少女ー(上・下)』

2018年01月12日 | 読書

犯罪心理捜査官セバスチャン―少女―』(原題:DEN STUMMA FLICKAN)
          著者: M・ヨート&H・ローゼンフェルト(Michael Hhorth & Hans Rosenfeldt)
          訳者: ヘレンハルメ美穂
          2017.11 東京創元社 刊 (創元推理文庫)

  

セバスチャンシリーズ第4弾。心理学者で元スウェーデン国家刑事警察殺人捜査特別班
 所属のプロファイラー、セバスチャン・ベリマンが主人公。
  プロローグでいきなり一家4人皆殺し事件の殺害直前シーンの描写。そして唯一の目撃
 者「少女」が現場から逃れるシーンへ。

  所轄の県警警部エリックは妻のピア(トシュビー市の市長)の示唆を受け国家警察殺人
 特別捜査班に支援を求める。そのリーダーであるトルケル、刑事のヴァニャ、ビリー、怪
 我で休職中の鑑識官ウルスラ等が事件解明の捜査に当たることになるが、そこにプロファ
 イラーとしてセバスチャンが加わる。
  特別班では迷惑男セバスチャンの受け入れには異論もある。何が迷惑かといえば、難事
 件解明で有能であることは間違いないものの、自分勝手で横柄、自信過剰で協調性ゼロ何
 よりも女とみれば誰彼構わず
口説いてベッドを共にするというつわもの(担当検事とまで)。
 欧米人の性的
放縦さに改めて呆れたのであるが、後ほどセックス依存症と知ってある意味
 納得。
  シリーズものではある程度主要人物のキャラクター造形と彼らの相互関係さらにその動
 きにページを割くことは避けられないと思うが、前作からの状況変化の説明にページを費
 やし過ぎると正直言って飽きてくる。

  犯人と目される男ヤン・セーデルが拘引されるが、証拠不十分で釈放された直後何者か
 に射殺される。

  実はそこまでの間延々と捜査陣各人の面倒な人間関係、個人的事情が語られていい加減
 にしてほしいと思い始めてようやく「少女」の逃避行の足取りとセバスチャンの推理によ
 る発見、そして犯人が目撃者の少女・ニコルを入院先の病院で殺害を図るという緊迫場面
 があってようやく事態が動き始める。

 保護されたニコルは殺人現場のショックで失語症状態に。セバスチャンは心を開かせよ
 うと懸命な努力を続ける。実はセバスチャンはかつてスマトラ沖大津波で妻と当時4歳の娘
 サビーネを失うというつらい過去がある。
ニコルに対してわが子のような特別の感情を抱く。
 (ここまで上巻)

  やがて事件担当検事のマーリンの兄が最有力容疑者であったセーデルと知り合いである
 ことがわかり事件から降りることになる。
  この辺りからようやく殺人事件の本筋が表に出て流れが動き出す。
  
  聞き取りが進むにつれて殺されたカールステン一家を含む地域一帯に有力な鉱脈が走って
 おり、鉱山会社が一帯の民地購入を働きかけていたこと、カールステン一家が反対したため
 に買収交渉が頓挫し、カールステンに恨みを持つ人がいることが明らかになってきた。
  セバスチヤンとヴァニャ、ビリーとイェニフェルの二つのチームが証拠固めの調べを進め、
 ついに買収交渉で抜け駆けを図りコスタリカに高跳びしたマッティを探し出す。しかし彼は
 本筋ではなかった。犯人は意外や意外、やはり土地買収に絡むフランクらしいことが明らか
 になっていく。フランクは身障者の息子を持ち多額の介護資金を必要としていた。しかも市
 長ピアの前任者。

  一方病院でのニコル殺害に失敗した犯人はセバスチャンの家にかくまわれた
ニコルを探し
 出し、再び殺害を図る。しかし捜査の進展を知ったフランクは自殺する。

  ここで意外な共犯者(殺人への関与)が現れる。ニコルは、自身の記憶に潜んでいた殺人
 目撃者と一緒の車に乗る羽目になって、ようやく緘黙状態から抜け出し母親のマリアに告げ
 る。「この人があそこにいた。みんな死んじゃったときに」。
     
シリーズ4作ともなると、登場人物のキャラクターもはっきりしてきて、とりわけ自分勝手
で横柄、自信過剰で協調性ゼロというセバスチァンの特性は際立っていて、ァニャやトルケ
 ルなどに手
厳しくやり込められるのであるが、今回ニコルとその母マリアとの出会いで、女
 に手が早い
セバスチァンがマリアへのアプローチに逡巡し、セバスチアンにしてはしおらし
 い動きになっているところが面白い。しかし自分の結婚歴、子供の有無についてマリアの
 問いに正直に答えなかったことで
マリアの不信をまねき、折角水中に転落した車から投げ出
 されたニコルを身を挺して助け出したにもかかわらず、心を寄せた二人が去っていく。
 少しかわいそうだ。
  心を寄せていたウルスラもトルケルの方がダンスがうまいと言って去っていった。バンド
 の曲は「オンリー・ザ・ロンリー」。

 そして本人とセバスチァンにとっていま明らかになったビリーの秘密。

  スウェーデン法制では容疑者の家宅捜索には日本のような令状は必要としないらしい。捜
 査官が必要と認めれば有無を言わさず徹底捜索を行う。ある意味怖いところである。

                                (以上この項終わり)
  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新春初歩きは東京七福神巡り

2018年01月10日 | 里歩き

◇ 新春恒例七福神巡りは「千寿七福神」

  今や恒例となった東京七福神巡り。今回は「千寿七福神」めぐりとなった。
  雨上がりの翌日は天気予報では4月上旬の陽気との触れ込みで、上衣の選択に困ったが
 結果はほどほどの陽気で歩きとしては大いに助かった。

 「千寿七福神」は割合狭い地域にまとまっている。
   ルートの取り方はいろいろあるが、今回は北千住駅⇒①本氷川神社(大黒天)⇒②大川
 町氷川神社(布袋尊)⇒③元宿神社⇒④千住神社⇒⑤八幡神社⇒⑥河原町稲荷神社⇒
 ⑦仲町氷川神社⇒北千住駅で5.2キロ2時間弱の歩行距離である。

 <出発点>北千住駅
  北千住駅から駅前通りを直進し、宿場町通りを越えて三菱信託銀行手前の道を右に折れると
 千住本町小学校の先に「本氷川神社」がある。





<本氷川神社>足立区千住3-22(大黒天)

 門をくぐると大きな輪がある。「茅の輪」と言って素戔嗚尊(スサノオノミコト)が八岐
大蛇を退治した神話にちなむ。茅の輪は大蛇を表し、これを潜り抜けることによって自らの
罪障を祓い、疫病も避けられるという。一礼の後、輪をくぐり左に回ってまた輪をくぐり今
度は右に回って更に輪をくぐり、左に歩いて拝殿に向かうのが作法という。折角の機会と思
い作法通りにお参りした。





<大川町氷川神社>足立区千住大川町12-3(布袋尊)

  サンロードという商店街で左折。ちょうど角の店で昔ながらのさつま揚げを売っていた
 ので揚げたての熱々を数個買った。
  あつあつなのに夕食用で、すぐに食べるわけではないのでもったいない。



 国道4号(日光街道)をわたる。



  さらに北上すると荒川土堤の道に突き当たることになるので左に折れる。
  土堤下に「大川町氷川神社」が。




境内に「千住川田浅間神社富士塚」という塚がある。富士山の溶岩を使った塚で天保2年
の築造である。山頂まで塚を囲繞する道があって登ってみた。



 途中に立派な昔ながらの銭湯があった。入口には見事な彫り物がある。ただ入口にある
「ぬ」という掛札の意味がどう考えても分からない。





<元宿神社>足立区千住元町33-4(寿老人)

  
荒川堤防の土手道の裏道を行く。昔足立第三中学があった(今は老人施設)右奥に
 「元宿神社」がある。江戸時代日光街道千住宿が設けられる前は奥州道の宿場として
 ここが中心であったため「元宿」と呼ばれた。そのむかし桜堤として知られていたが
 今はない。のちに植えられた桜並木も今は老桜となっている。








<千住神社>足立区千住宮元町24-1(恵比寿尊)

  
千住籠田町交差点で墨堤通りと別れて進むと足立区立青葉中学校(旧区立第15中)の
 先に「千住神社」がある。
八幡太郎義家陣営の地とあるように由緒ある神社である。
  ここにも「千住富士塚」があった。
  江戸中期の富士信仰の流れであちこちに富士塚ができたらしい。祭神は木花咲耶比売命。
 7月1日のみ拝登可とあった。


   



 今が盛り?冬さくら。





<八幡神社>足立区千住宮元町3-8(毘沙門天)

道は国道4号(日光街道)に突き当たる。これに沿って南下すると400mほどで
「八幡神社」。







<河原町稲荷神社>足立区千住河原町10-13(福禄寿尊)

  
国道4号を越えて南下すると左手に「河原町稲荷神社」。ここにも「茅の輪」が。
 そして見事な狛犬さんに感動のパチリ。









<仲町氷川神社>足立区千住仲町48-2(弁財天)

  
墨堤通りを東に進み、千住仲町公園脇の「仲町氷川神社」へ。ここが最後。
 この神社にも「茅の輪」があり、最後の輪抜け回りをした。








  弁財天

 <出発点へ>

 出発点の北千住駅に向かって千住仲町を北上する。
 旧足立区役所があった「東京芸大北千住キャンパス」に突き当たる。
 折角なので左に折れて「宿場町通り」に出てにぎやかな商店街を冷かしながら
 駅前通りを右折し北千住駅に向かった。

                      (以上この項終わり)


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヨナス・ボニエの『ヘリコプター・ハイスト(舞い降りた略奪者)』

2018年01月02日 | 読書

◇『ヘリコプター・ハイスト(舞い降りた略奪者)』(原題:THE HELICOPTER HEIST)
                      著者:ヨナス・ボニエ(Jonas Bonnier)
                      訳者:山北 めぐみ
                      2017.9 ㈱KADOKAWA(角川文庫)

  
新年おめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
   
 この本、TVでおなじみの「オーシャンズ13」を思わせる大金強奪チームの一部 
始終である。
 のちに「史上最も華麗で大胆な銀行強盗」と称されることになる大胆な犯罪計画
をわずか4人の手で成功させた。

 ところはスウェーデン・ストックホルム。
 
 首謀者はゾラン・ミルコビィッチ(ユーゴスラヴィア人実業家)、
ミッシエル・
マルーフ(レバノン出身・独身)、サミ・ファルハン(イラク出身・妻子あり)、
ニクラス・ノルドグレン(スェーデン人電気工)が主要人物でもちろんスポット
で働く協力者は何人もいる。

 マルーフが屈指の警備会社に新型の現金運搬ケース売込みに失敗した。それに
代わる計画は何か。新たなプラン強奪事件の圧巻場面は、ほとんど終わりに近い
52章以降である。
現金強奪のターゲットはG4Sという警備会社の運搬資金集約場
所。10億クローナという莫大な現金が集計課に集められ2階の金庫室に収められる。
 彼らはこの集計室を狙う。そして集計室はビルの5階にあるためヘリを使う。
 屋上と防護壁を壊す爆薬、5階まで下りる梯子、警察車両をパンクさせる鉄菱鎖、
時限爆弾を思わせる仕掛け、ヘリと操縦士の調達等々、およそ9か月かけて周到な
準備がなされ、実行に移されるのであるが、結構詰めが甘いところがあって、こん
な連中でほんとうに成功させることができるのか心配になる。

 ところが警察陣も抜かりはない。要注意人物であったミルコヴィッチの電話を盗
聴しているうちにこの犯罪計画の進行を察知したスウェーデン警察のカロリーネ・
トゥルン、マッツ・ベリグレンが主体となり、ターゲットの資金集約場所と襲撃日
と目された日も特定するが、当日国家特殊部隊も動員しながら捜査陣を終結させた
ものの、まんまと裏をかかれ、一週間後に実行に移される。しかも時限爆弾に見せ
かけたランプに惑わされて銃撃を避けたためにみすみす現金袋を積んだ移動ヘリを
逃してしまう。

 15分間で犯行完了とした計画が実際には33分かかり、しかもヘリの燃料がガス欠
寸前という綱渡りの犯行後見事連絡用ボートに移し替えたのであるが…。
   最後の最後にどんでん返しがあって計画は成功したが金は手に入らなかった。
 結局実行犯はみんな逮捕され、裁判で実刑をくらった。

本編の8割かたは現金強奪計画とその準備、実行過程の緊張した場面の描写に費やさ
れ幾分退屈するが、最後にほんとに頭の良い誰かが果実を独り占めにするというオチ
で締めくくられ、クライムノベルというよりも犯罪アクション映画である。

                            (以上この項終わり)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする