リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バス弦戦国時代(3)

2024年05月09日 09時03分26秒 | 音楽系

20年何年か前までは多くの演奏家は1.の金属巻き線を使っていたと記憶しています。それがここ10年くらい前から多様化が始まりました。バス弦に関してこれだけ多様な選択肢が現在までに出て来ている流れを見ていきましょう。

バロック・リュートのバス弦に金属巻き弦を使うことは古楽の黎明期から続いていましたが、それを疑問視する人が徐々に増えてきたということです。その分岐点はいつ頃かは定かではありませんが、かなりはっきりしてきたのは今から10何年か前のことだろうという感じがします。そこでやはり昔のガット弦にすべきではと考える人が出て来ました。

この昔のガット弦にすべきだという考えは決して間違ってはいませんが、ただ大きな落とし穴があります。それは例えばヴァイスが使っていただろうレベルの弦が現在まだ開発されていないという事実があるからです。つまり現在売られているバスレンジ用のガット弦はヴァイス時代に使われていた弦とは恐らくレベチなのです。

という事実はプロの演奏家ならすぐわかることですが、アマチュアの場合は某著名演奏家がナントカ社のナントカというガット弦ならオーセンティックだと言えばそれに従ってしまう、というのは無理なからぬことでしょう。

某著名演奏家は別に自分の選択でやっているのでお好きなようにやればいいでしょうけど、かわいそうなのはそのことを信じ込んでずっとうまく鳴らないガット系バス弦を使っているアマチュアの人たち(=ガット信者)です。