前回のふたつ目の譜例における赤い音符について、弾かなくてもいいかも知れない、と書きました。でも弾いてもいいのです。
はっきりして欲しいと思われるかも知れませんが、弾いても弾かなくても、もっと別の和音の形をつかったりしても構いません。もちろんバスに合っていない和音を弾いてはいけませんが。
要するにそのときどきで適宜選んで弾けることが重要で、弾く和音を書き込んだり覚え込んで固定してしまってはいけない、ということです。
あるいは次の譜例みたいに旋律的な動きを加えるのもひとつの方法です。
もちろん上の譜例からもっと音数を減らしてもいいでしょう。
実際の演奏では特にリュートの場合は楽器のポジションの関係である程度パターンは決まってしまうこともあるでしょうし、和音を弾くのがポジション的に少し困難を伴う場合は固定した弾き方になってしまうこともあるでしょう。でも演奏の流れで音を選び弾いていくというのが本来の姿ですし、それこそが「即興的に」和音を入れていくという当時のスタイルに沿った弾き方です。沢山ある音の選択からその都度選んで弾いていきますので、次に全く同じように弾けと言われてもはっきりとは憶えていないのが普通です。
前回の2番目の譜例のような楽譜を用意して、それを見ながら「通奏低音」を演奏するのは通奏低音を弾いたことにはなりません。単に書かれた伴奏譜を弾いたに過ぎません。
チェンバロでやる場合でも右手の音は全て即興的に演奏してるんだ!(ですか?)
全然種類は違うけど、古典的オペラのレチタティーヴォの譜面は全音符か二分音符の単純な和音が記されてるだけだけど、奏者によって全然違うパッセージや装飾音を加えて自由にやってるのに似てるんだワン🐶
レチの場合は普通和音が書いてあることはなく、二分音符とか全音符が単音で書かれているのが普通です。それから歌手に併せて和音を入れていきます。