リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

プレリュード・フーガ・アレグロのヘ長調編曲(11)

2022年04月17日 13時07分28秒 | 音楽系
さて998のヘ長調編曲の最新バージョンを見てみましょう。この調は2016年に一度試みてリサイタルで弾く予定でしたが、それを断念して今またやる気になっているというのはこの連載の始めのころに書きました。




赤で一杯訂正していますが、これは何度も弾きながら最適化を図るプロセスです。昨日はオーケーだと思って書き込んでも翌日になると待てよ、前のママのほうがいいな、というケースも結構あります。ここからまだ沢山変わりますので、これは途中経過だと思って下さい。やっていくことは運指、ポジションの最適化と自分化(自分にとって一番弾きやすく表現しやすい形にする)このようにしたものが他人様にとって弾きやすいかどうかはわかりませんが、確実に弾けるひとつの形ではあります。

ネットにはバッハの編曲タブなどは「机上の空論」みたいなのがあって、実際には演奏不可能なものとか、可能ではあってもとても実用的とは言えないものがあります。本編曲はそういった類いのものとは一線を画しています。ただ一般的には机上の空論タブなのかどうかはかなり演奏技術が高くないとわからない(=空論タブも一線を画するタブもどちらも難しくて弾けない)ところが難しいところです。確実に言えることは空論タブはどれだけ練習して実力を付けても弾くことができないということです。

さて訂正を重ねていきますと何と書いてあるかわからなくなってきます。そういうときは一度清書しなおします。上の楽譜も何やらわかりにくくなってきていますのでぼちぼち清書しなおさないといけません。またそのうち綺麗に書いたのを掲載します。というか全曲清書したのを掲載する予定ですので弾いてみて下さい。と言われてもきちんと弾くのは相当難しいでしょう。でもきちんと弾けなくてつまみ食いするみたいなことでも結構楽しいものですので活用してみてください。

タブと使用する指が決まったら、私の場合暗譜します。その後の練習は大体暗譜でしますが、本番では古楽演奏家の作法?で楽譜を見て演奏することにしています。まぁこれだと本番でうっかり思い出せないということはないので安心です。ギターを弾いていた若い頃は本番も全て暗譜、単純にそんなもんだと思っていたんですね。今は年くって脳も多少は劣化しているでしょうから、この古楽器奏者の作法はある意味ありがたいものです。

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5 コメント

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Unknown (やまねこ)
2022-04-17 16:36:39
こんにちは。
1度お聞きしたいと思っていたことなのですが、先生が「暗譜」される場合、うっかり忘れた場合の保険として譜面を置いているとのことだと思いますが、その暗譜とは、演奏する指の置き場、運びだけでなく、和音、音符1つ1つの展開まで記憶されてるといことなのでしょうか。
 私は一時期、クラシックギターでは完全暗譜(指の運び、曲の進行に沿った指を置く運指だけ)でした。エレキの場合はコード進行だけを覚えておき、コード内でのアドリブだけ(この場面でプリング、スライド、アームビブラート、カッティングなどするという記憶だけ)でした。リュートは、クラシックギターに近い暗譜です。
 本当は、リュートにおいても、コード進行を意識して暗譜したほうがいいのではないかと思うのですが、ちと難しすぎて、大体、ニ短調、ハ短調、395Hz、415Hzとか音感的にも慣れにくい。
ですから、譜面は絶対に必須です、私の場合は。譜面無しで完全暗譜は、1か所でも忘れた場合は、もう後がボロボロになります。大分以前、リュート演奏の発表会でヴァイスの組曲の内の2曲だけを演奏したことがありましたが、当時のファクシミリ譜を使ったのが失敗でした。途中でどこを弾いてるのか、目が飛んでしまってわからなくなり、中断状態に。。。。
最初からもう一度弾くなんてできませんから、お客さんに頭を下げて退出しました。終演後の懇親会も出ずに帰宅してしまいました。あの時は、顔が真っ赤になってしまって、1週間くらい、あの場面が走馬灯のように、夜寝る時にも思い出されて悲しくなりました。
演奏会では、大きめのはっきりわかる譜面に書き直したものでないと、ダメですね。
 エレキのライブでは、忘れるということが無いんですが、クラシックギターやリュートは、なにか改まってしまい、人前では妙にエレキ演奏とは違う緊張感が常にありました。エレキのような大音量効果やペダル効果や奏法での誤魔化しは一切通用しない、ご愛敬も許されない厳粛なものがあると思います。ナーバスな感じがあります、でも、私はリュートの幽玄な厳かな音色が好きです。太陽の紫外線で茶色に変色したファクシミリ譜に、昔の苦い思い出と暗譜について、懐かしく思い出されました。
 
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re (nakagawa)
2022-04-17 17:01:40
古楽で譜面を見て弾く習慣があるのは、それを見て即興的なフレーズを入れるためです。譜面を見て譜面に書いてないことを弾く、実は通奏低音でも同じ事をしています。ど忘れの保険というのはあまり大きな理由ではありません。実際何曲かは暗譜で弾くときもあります。

暗譜というのは曲の全てを暗記することだと思っていますので、演奏する指の置き場、運びだけという暗譜はちょっと理解しがたいです。暗譜をしたら、その絶対音(ヘ長調なら415のヘ長調)で頭の中で押さえるポジションや右手の指使いも含めて再現します。ある程度覚えたら楽器のない環境でバーチャルで曲を再現して練習して、そのあとで楽器を持って練習というのを繰り返します。私が取りあえず暗譜すると言うのも、楽器のない環境でも練習できるからです。
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Unknown (やまねこ)
2022-04-17 21:07:32
深いご説明をありがとうございました。
私ごときの暗譜などお恥ずかしき限りです。
楽器の無い環境で頭の中でバーチャルに再現する練習!、凄いです、
そういえば、アスリートなどその道のプロも、実際、走らず動かずとも頭でイメージする練習をするとかいう記事を読んだことがありました。イメージトレーニングのようなものでしょうか。
絶対音での再現!、やはりプロの方の練習というものは違いますね。
勉強させていただきました。
ありがとうございました。
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re (nakagawa)
2022-04-17 23:22:09
アスリートのイメージトレーニングはどうスウィングするかなど短い時間でのイメージのような感じがします。マラソン選手が2時間かかるイメージトレーニングというのはしないと思います。そう考えると頭の中で曲の演奏するのとは異なる感じがします。そろばんの暗算に近いような気もしますがそろばんに音は必要ないのでその点においては大いに異なります。

興味深いのは暗譜演奏で使う脳と読譜演奏で使う脳の部位が少し異なるみたいで、暗譜していても読譜に切り替えると何か違和感を覚えます。そのため本番前には読譜での演奏のみに切り替えます。

それならもう読譜での演奏を止めて暗譜でやればいいじゃないかと突っ込まれそうですが、長年そうやってきているので一部を暗譜で弾くことはあっても今更オール暗譜というのは怖いです。

曲の練習という点から見ると暗譜してみるというのは便利な方法ですが、別にしなくても曲は完成できます。本番に関して言えば、暗譜か読譜かはどちらでもいいことで、いい演奏が出来るかどうかが重要なことです。
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Unknown (やまねこ)
2022-04-18 10:00:36
さらなる詳細なご解説をありがとうございました。
 本質を突く核心をみた思いです。後学のために参考とさせていただきます。
リュートの練習に何か一層励みになる気持ちを得ました。
 いつもありがとうございます。
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