アスベストの使用は禁止になりましたが、過去に使用されたアスベストはまだ私たちの身の回りに存在しています。
1970~90年代は年間約30万tのアスベストが輸入され、年間20万程度のアスベストが建築物に使用されてきました。
2005年現在約4300万トンのアスベスト建材(含有率は5%~25%程度)が住宅などの建築物に蓄積されています。これらが今後、年間100万トン。ピーク時には130万トンが、解体により排出されるという試算がでています。
仮にすべてのアスベスト建材が解体時に分別されなければ、年間20万トンのアスベストが再生砕石として私たちの身の回りにばらまかれることになります。
再生砕石に混入したアスベストは一部自治体の問題ではありません。
第三回定例会において、この建物解体時におけるアスベスト建材分別と再生砕石の問題について取り上げました。
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8月20日の東京新聞の一面に「再生砕石」アスベスト混入。という見出しの記事が掲載されました。
建設リサイクル法により、建物解体から出たがれき類を再利用した「再生砕石」と呼ばれる砂利にアスベスト建材が混入しているという内容です。
今回報道の発端となったさいたま市の市民団体が調査したところ、埼玉県、東京都、神奈川県、香川県の133か所でアスベストを含有する「再生砕石」が道路工事をはじめとする公共工事や駐車場などで幅広く使用されていることが判明しています。
■大田区がすべきこと■
・再生砕石にアスベストが混入する理由
なぜ、「再生砕石」にアスベストが混入してしまうのでしょうか。それは、建物解体時の分別が徹底されていないからです。
・建設リサイクル法
平成14年5月30日から完全施行となった「建設リサイクル法」は、建物解体により発生する木材やコンクリート、アスファルト、鉄などを分別し再利用することを義務付ける法律です。解体現場から出た廃材などは、建設廃棄物の中間処理施設に持ち込まれ、再利用されます。アスベスト建材は、解体現場で、リサイクルできない建材として他の建材と分別されなければなりませんが、特にレベル3とされるアスベスト含有建材は、ほとんど分別されることなく破砕機で破砕されます。
・チェックの届かない解体現場
今年の予算特別委員会でも指摘いたしましたが、北千束で行われたマンション建設に伴う解体工事は、調査が十分でなく、住民が指摘するたび、アスベストの使用されている箇所が増えていきました。住民が指摘しなければ、多くの建材が、アスベストが無いものとして処理されていたと推測されるケースです。こうしたずさんな工事により、アスベストが入っているにも関わらず、アスベストが無いものとして建設廃棄物リサイクル場に持ち込まれた建材が破砕されてできたのが「再生砕石」なのです。
「再生砕石」の問題を解決するためには、まず解体現場において、分別の徹底を実現しなければなりません。
先ほどの北千束のケースの場合、大田区が、指導に入ったことで、その後の、対応が大きくかわりました。事業者は解体を報告書にまとめ区に提出しましたが、そうしたわずかな指摘が事業者の姿勢を大きくかえるのです。
・大規模解体こそ地元自治体に情報を
9月3日に、池上のトーヨーボールの解体工事の届け出がありました。トーヨーボールは敷地面積が10,000㎡以上のため届け出が東京都になっていますが、敷地規模が大きく区民生活により大きな影響があるにもかかわらず、大田区には何の報告もありません。しかも、大田区への届け出の際に必要なアスベスト事前調査報告も東京都は説明を求めていません。東京都は届け出受付後速やかに当該自治体大田区に報告すべきです。
また、トーヨーボールの解体工事では、アスベストが多く使用されていた時期に建てられていることや、愛知県のトーヨーボールが廃墟化し、大量の吹き付けアスベストが劣化したこと。今回トーヨーボールの解体工事を請け負っている関係事業者が名古屋で高層ビルの解体工事の際アスベスト粉じんを養生からもらしてしまう失敗工事を行っていると疑われることなどから、近隣住民が住民説明会開催を要請していますが依頼から2週間が過ぎたいまも、何の連絡もありません。
・リスクコミュニケーションの重要性
区は、近隣住民に個別に説明すればよいと指導したようですが、要綱で住民からの求めがあれば説明会を開催しなければならないことになっているのに個別説明でよいと指導することは問題ではないでしょうか。近隣に配布されたチラシには解体期間程度の極めて簡単な内容しか記載されておらず飛散性アスベストがあることには全くふれられていないのです。説明会開催を求める住民がいるのですから、説明会を開催するよう事業者を指導すべきです。複数の住民が同席することで、様々な視点からの不安の解消にもつながり、リスクコミュニケーションが図られ、結果として、より安全で適正な工事がおこなわれます。
・大田区でも流通している可能性のあるアスベスト入り再生砕石
私は、大田区における再生砕石の使用状況を調べるため「北千束の更地」「駐車場」「多摩川河川敷ガス橋付近」そして、「大田体育館工事現場」等から拾ってきた石をアスベストセンターに調査してもらいました。昨日は、アスベストセンター職員が現地調査しています。現在のところ目視による調査だけですが、どの現場の石にもスレート板が破砕されたと見られる石が混入していたという報告を受けました。「再生砕石」のアスベスト混入の問題は一部自治体の特別な問題ではないのです。しかも大田体育館の「再生砕石」は城南島の建設廃棄物リサイクル施設から持ち込んだものです。
・破砕施設や保管施設の多くある大田区の安全性の確保
大田区には5つの建設廃棄物を破砕する施設があり、破砕してできた土砂などを保管する100㎡以上の施設は19にも上ります。
これまで私は「廃棄物処理施設が集中しているにも関わらず安全面においてその対策が十分でない。対応すべき」と指摘してきましたが、残念ながら不安が現実のものになってしまったかたちです。破砕施設は城南島・京浜島など臨海部に存在していますが、保管施設は臨海部に加え仲池上、馬込、中央、久が原、矢口など内陸部にもあります。いずれにしても大田区では、日常的にアスベスト建材が解体され、運搬され、飛散防止策を取らずに再生のため破砕され、流通していることになります。
・大田区で起きた過去のアスベスト問題は活かされているか
大田区はこれまで梅田小学校体育館用地として東京都から購入した土地にアスベスト建材が放置されていたり、区営住宅の天井に飛散性アスベストであるひる石が使用されていたり、大森南のアスベスト工場跡地から大量のアスベストが見つかるなど様々なアスベストの問題を抱え莫大な税金を投入してきました。私はそのたびにアスベスト建材の解体・改修に関わる分別の徹底や飛散防止策、住民とのリスクコミュニケーションなどの重要性について議会で取り上げてきました。
結果として大田区のアスベスト対策は、他の自治体に比べ進んだと言えるのでしょうか。単に問題に対応しただけでアスベスト飛散をどのように防止するかという視点は無かったのではないでしょうか。
・縦割り行政の弊害
解体の届け出は建築調整課、大気汚染防止法は環境保全課、解体した建設ガラを破砕する産業廃棄物施設の都市計画決定を所管したのは都市計画担当課、「再生砕石」を使うのは、施設建設の現場では経営管理部施設管理課と教育委員会施設担当課、道路工事では都市基盤管理課と関係する部署もざっとあげただけでも6課にわたります。今年の予算特別委員会においてもこの縦割り行政の問題を指摘しましたが、区民の健康と命を守るためには、関係部署が連携し、アスベスト建材がリサイクルされないようにすることが何よりも重要です。
今回の「再生砕石」にアスベストが混入し流通する問題は非常に深刻です。まずは、縦割り行政の弊害を排し、緊急に部署を超えた対策組織を立ち上げこの問題に取り組むべきと考えますがいかがでしょうか。
具体的には「監視体制を強化する」「解体届け出と同時にレベル3も含めたアスベスト調査報告書を区に提出させる」「届け出のあった解体工事をHPで公表する」「住民からの要望があれば説明会開催を解体事業者に指導する」「抜き打ちの見回りなどを行う」など大田区と区民の目でチェックできるしくみを作ることが適正処理につながると考えます。
分権の目的は、区民に一番身近な自治体が生活課題を解決できることにあるのであり、国の指示を待っていたのでは、分権の意味はありません。
大田区としてアスベストの混入した「再生砕石」の問題を受け、解体時におけるアスベスト混入を防ぎ区民の命を守るための対策として何をすべきと考えるかお答えください。
・大田区の公共工事における再生砕石のアスベスト混入状況は?
大田体育館工事でアスベストの混入した再生砕石が使用されている可能性が極めて高いことが判明しましたが、大田区では道路工事の路盤材にも再生砕石を使用しています。
大田区が行った工事における「再生砕石」の使用実態を調査するとともに、可能であれば、民間の駐車場などの使用実態についてもわかる範囲で情報を収集すべきではないでしょうか。また、今後、アスベストの混入した「再生砕石」を使用することの無いよう、「再生砕石」を使用するのであれば、アスベスト混入の無いことを確認してから使用する必要があるのではないでしょうか。
国は都道府県に対し、破砕施設への立ち入り検査の実施の依頼を通知しています。過去に大田区が使用した「再生砕石」の仕入れ先を今のうちに明確にしておくことも必要です。
少なくとも、区が行う「再生砕石」を使用した道路などを掘削する工事の際、どのように安全確保を行っていくかも調査すべきではないでしょうか。
■東京都に対し要望すべきこと■
2003年の都市計画審議会において城南島スーパーエコタウン内の建設リサイクル施設の都市計画決定について諮問されました。当時委員だった私は、この建設廃棄物のリサイクル施設内にアスベストの使用されている建築廃材が運び込まれる可能性を指摘していますが、区は、アスベストは運び込まれないことになっているという非常に甘い認識でした。施設稼働後の2005年に、私が視察したところ、現場では混入したアスベスト製品を手で取り除く作業を行っていました。このことを2005年の第三回定例会において当時の西野区長に指摘したところ、「アスベストが入らないとは断言はできない。」と答弁を覆しました。そのうえで、産業廃棄物施設の認可を行った東京都に指導するよう強く言っていくべきであり要請をしていこうと考えるとも答弁しています。それでは、大田区は、東京都に対してこれまで何をしてきたのでしょうか。区の認識と対応の甘さの結果アスベストの混入している再生砕石を大田区の工事現場で使用することになってしまっていないでしょうか。
大田区には、東京都が認可している規模の大きな産業廃棄物処理施設が数多くありますが、3000平米未満であることを理由にこれまで、環境アセスメントを逃れてきています。地元自治体として、東京都に対し、建設廃棄物リサイクル施設へのアスベスト建材の搬入防止の徹底とアスベスト飛散防止措置の強化やアスベスト濃度の測定を要望していくべきではないでしょうか。納得のいく安全策が講じられないのであれば区民の健康と命を守る責務として大田区はエコタウン外からの購入も含め、公共工事に使用する再生砕石使用を控えるべきであると考えますがいかがですか。
■国に対し要望すべきこと■
国は、この問題について、9月9日に国土交通省・環境省・厚生労働省の三省合同で「分別解体の徹底」「関係法令の遵守」「ばく露防止対策」の徹底などについての通知を行っています。
ちょうどその日、私は、この問題について、中皮腫・じん肺・アスベストセンターと市民活動グループなどとともに、内閣官房長官、環境大臣、厚生労働大臣、国土交通大臣、経済産業大臣に要望書をとどけるため国会に行っていました。
以下は、その際提出した要望書の一部です。
現行の建設リサイクル法はアスベストが混ざっていようが廃棄物処理施設が受け取ってくれればよいという法律で、労働安全法は労働者の安全衛生が確保できていればアスベストが周辺に飛散しようが関係ない。大気汚染防止法は建築物の解体などにおいて、レベル3のアスベストについてはいくらアスベスト粉塵が発生するような方法で解体してもよく、また、再生砕石に混入してもかまわない。廃棄物処理法はアスベスト建材の破砕は禁じているものの、実態としては野放しという状況にあります。ところが、この間、関係省庁はそれぞれの所管する法律の不十分さを認めながらも、自分の省庁だけで対応する問題ではないと主張し、具体的な対応を検討してきませんでした。つまり、関係省庁の枠を超えた対応が必要な事案なのです。
ここまでが要望書ですが、
現在のところ、国の通知文からは、その対策を自治体にまかせるばかりで、法の不備について何ら対策をとる気配がありません。
・首都圏の建設廃棄物のリサイクルを担う自治体として大田区がすべきこと
大田区は、産業廃棄物処理施設を多く抱える首都圏のいわば建設廃棄物リサイクルを担う自治体です。国の認識の甘さや法整備の遅れにより、「再生砕石」を流通させるという最悪の事態を招いていますが、アスベストの混入した再生砕石を使用し飛散事故を起こした時区民から責任を追及されるのは大田区です。今こそアスベスト建材のリサイクルによる弊害を被っている大田区が、これ以上、区民の健康や生命を害することの無いよう、国に対して法整備を行うよう文書で強く訴えるべきと考えますがいかがでしょうか。
なお、中西準子さんはアスベストに関してどんなことを言っているかと思い、そのホームページを見ました。大変参考になりました。(ご存知かと思いますが、彼女は日本のリスク研究の第一人者かと思います。)雑感319-2005.10.3「アスベスト対策過去の対応調査 -NHKニュースも政府の発表も不可解-」には、次のような部分があります。
日本のアスベスト対策
では、日本のアスベスト対策に問題がなかったか、そうではないと思う。私が、問題だと思い続けてきたのは、以下の3つである。
(1) アスベストについて強く思い、しかしアスベストに限らない問題だが、職場環境に起因する病気の情報が、隠されている。或いは、適切に収集する努力が行われていない現実である。今でもそうである。
(2) 80年代後半にアスベストの問題に直面していたとき、どうしても納得出来ないことがあった。それは、問題になって以後、アスベスト入りスレート板の製造量が増加していったことである。
その当時、スレート板使用に伴うリスクを調べたが、それはゼロに近かった。しかし、作業に伴う、または、廃棄に伴うリスクはかなり大きいことが推察されたし、将来必ず問題になることだった。その時点での禁止は行き過ぎだが、少なくとも、増産されない措置、そしてやがて少しづつ減らす措置が執られるべきと思ったが、増えた。こういう場合の、対策の取り方、中位の規制措置的なこと、それがなぜできないかについては、検証すべきだと思う。(以下略)
私なりに考えますと、再生砕石に微塵でもアスベストが含まれていれば問題だというのではないと思います。どのくらい含まれるとその後健康被害に結びつくかを調べ、この程度なら許せるというレベルが明らかになる必要があるでしょう。そのレベルがはっきりしない限り、0.00000%でも許されないというのはおかしい、というか非現実的。ですから、あなたの報告で、現在再生砕石にアスベストが含まれているかいないかを調査中とのことですが、含まれていれば直ちに問題だとするのではなく、どの程度かが問題だとおもいます。もちろん、基本的に大事なことは、いつアスベストの含有量の多い再生品が出回るかわからないような現実を何とかしなければならないということですね。特に問題になるのが、アスベストに不注意なままのいい加減な解体のときの解体作業員や付近住民の健康、そして、そういうときに出たアスベストを含むものから再生品を作る工場の従業員の健康でしょう。そして、次に起こる問題として、かなりの問題を持つ含有量の再生品が将来破砕されるような場合に、それをアスベストの多く入ったものだと知らないで処理することでしょう。(21日付けブログで、アスベストが11~20%含有されていたことがわかったということですが、これは問題になる数値だろうと思いますが、わたしにはわかりません。)
今後のご健闘を祈ります。2010.9.22. 後藤貞郎(呑川ネット)
中西さんは水の本を読ませていただいています。アスベストについて書かれていたとは知りませんでした。
さて、疑問に思われている含有率、あるいは、吸った量や時間と発症の関係ですが、未だに解明されていないそうです。
過去にブレーキパットなどに使用されてきたこともあり私たちの肺の中にアスベスト繊維が入っている可能性は低くありません。しかし、アスベスト繊維が入っても発症しない人はいます。発症までの期間が長いため発症していない可能性もあります。
だからこれくらいだから大丈夫と言えないとアスベストセンターの方や医師などからうかがっています。
別の話になりますが、クボタは、工場から半径1.5kmの方たちに対して補償しています。アスベストセンターでは、現在2km以内の方への補償を働きかけているところだそうです。
アスベストが2km先にまで被害を及ぼすということをです。
自治体のHPなどでも「発じん性が比較的低い」などという飛散しにくいと受け取られるような表現をしていることにも問題があるかもしれません。