建て替えのため稼働がストップした大田清掃工場は、焼却能力各600トンの2つの工場と140トンの処理能力を持つ灰溶融施設からなる施設です。昨年3月に灰溶融施設の建設計画が1期工事から2期工事に延期され、その後、今年3月になって、600トンの焼却施設と灰溶融施設双方を建設する2期工事そのものが見直しになりました。
埼玉県の市民団体に呼ばれ、この大田清掃工場施設整備計画変更の経緯と市民の役割についてお話してきました。
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■東埼玉資源環境組合の場合■
埼玉県の草加市・越谷市・八潮市・三郷市・吉川市・松伏町の5市1町は、ごみ焼却を共同でおこなっています(東埼玉資源環境組合)。現在、稼働している第一工場に加え、これまで休止していた第二工場の建設計画があがっています。
しかし、休止している間にごみ量は減り、第二工場建設は不要なのではないかと考える市民が様々な視点から、第二工場建設の必要性について検証しています。
清掃工場建設に使う交付金のため「東埼玉資源環境組合」が作成した計画は、
①ごみ量が増加していく計画は承認できない
②第一工場の改修を理由にした第二工場建設計画は承認できない
という二つの理由から、環境省の承認を受けられずにいるそうです。
こうした背景から、計画の妥当性について市民が検証するためには
【1】一組策定と自治体策定ごみ量計画のかい離を埋めるために
”無責任”な市民不在の計画策定を是正する
23区でも同様のことが起きていますが、広域処理を選択すると、各自治体と組合や広域連合との間で計画のずれが生じることがあります。
各区のごみ量計画を足しこんだ数字と組合のごみ量計画の間にかい離が生じているのです。
組合は、自治体のごみ量計画に基づき施設整備を行えば、焼却できなくなることもあるため、各自治体の計画値を足しこんだ数字をもって組合のごみ量計画値にすることはできないと説明します。
つまり、自治体の無責任な計画で清掃工場建設計画を作ると、ごみを焼却できなくなると組合は言うのです。
果たして、自治体は、そのような無責任な計画を建てているのでしょうか。
一方で組合は、自治体がたてた計画とは別に、自治体の個別事情やごみ減量などのプランを全く無視した形で計画をたてています。
自治体がたてた計画は、清掃工場施設整備の基礎データに使われることなく自治体内の単なる努力目標でしか無いのが現状です。また、組合は、せっかく自治体が作った計画が適正であるかを検証するわけでもなく、別途計画を策定し、独自にごみ量を予測し、現場である自治体のごみ減量の意欲や努力を施設整備に反映させようとしていません。
自治体・組合ともに大変無駄なことをしていることになります。
自治体・組合は、こうした現状を放置することなく、無責任にならない計画をたてるためにどうするかを考えるべきではないでしょうか。
例えば、
・ごみ量予測の○%は焼却余力として施設整備計画に反映する。
・自治体が、たてた計画を○%以上上回るごみを輩出した場合には、焼却費用に割増料金を課す。
”ごみ量予測の前提を明らかにし検証する”
ごみ量予測は、人口や世帯(単身・高齢など)構成、昼間人口、事業者数、景況、ライフスタイルなどに大きく影響します。
どのような前提で予測したのか明らかにすることで、予測の精度がわかります。
【2】ごみ処理の在り方について検討する
言いつくされていますが、やはり、混ぜればごみ。分ければ資源。資源化する品目や資源化率を検証することで、今後のごみ量が大きくかわります。自治体が持続可能な社会形成のために、今後ごみ処理の在り方がどうなっていくのか考える必要があります。
【3】コストを明確にする
直接関係ないかもしれませんが、意外に遅れているのが、ごみ処理に関わるコスト意識です。東京23区清掃一部事務組合(一組)でも、清掃工場ごとごみの焼却コストやそこに減価償却費が算入されるようになったのはつい最近のことです。
23区の生活者ネットワークで毎年行っている一組との懇談会において、私が、清掃工場ごとのコストとそこに減価償却費を加えたものを算出してほしいと要求し実現したものです。
【4】意思決定過程を明確にする
一組や広域連合で運営されている事業は、市民による信託という意識に欠け、市民不在で運営しがちです。
意思決定は、最終的には、一組や広域連合議会の議決によって行われますが、議会の議員は、各自治体から選ばれた議長など寄せ集めで構成されていることや、清掃事業への興味関心が必ずしも高くない議員が選出されていることもあり、議論も無く、異議なしで数百億もの清掃工場建設が次々議決されているのが現状です。議会の代表として、一組や広域連合の議員になっているというのは名ばかりで、配布された資料さえ、自治体議会に提供しないのがほとんどです。
重要な計画策定や方針変更は、一組を構成する自治体の清掃担当課長会・部長会・首長の会議などで行われているようですが、都度、報告は自治体議会にもあがらず、気付くと決まっているといったことも少なくありません。
自治体や一組、広域連合など様々な組織に対し、議員をつかい情報を入手するとともに、各機関に働きかけ、現行の不備を改善することがあるべき安全で効率的なごみ処理実現につながります。