民主主義は選挙で議員や首長を選んで終わりではありません。
特に地方議会では、議会の議員と自治体の長とが、別の選挙で選ばれる二元代表制をとっていて、それぞれが、議決や執行、予算の提案などの役割を担っています。
ところが、昨今、大田区では、専決処分と言って、議会を招集せず、首長の独断で契約議案を決めたり、条例を改正したりするようになっています。
専決処分は、行うと、議会への報告と、議会の承認が必要ですが、仮に議会で承認されなくても、処分は有効で、首長の政治的責任が問われるだけです。
背景には、地方自治法が改正され、議会を開催せずに首長の独断で決める要件が緩和されたこともあります。
しかし、それでは、議会招集が出来なかったというのが、真にやむを得ないかと言えば、私が見る限り、必ずしもそうではなく、議会を開催し議決している自治体もあります。
国の法改正に伴う条例改正についての専決処分への、奈須りえの意見です。
報告第10号条例改正の専決処分の承認について反対の立場から討論いたします。
この専決処分は、地方自治法第179条第一項にある
「普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕が無いことが明らかであると認めるとき」
に基づき行われた専決処分であると説明されています。
昨年の特別定額給付金の給付事務における専決処分に引き続き、この「議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕が無いことが明らかであると認めるとき」という理由で専決処分が行われます。
専決処分をした場合、議会に報告し、承認を求めることとなっていますが、専決処分が適法になされていれば、不承認でも長に政治的責任が残るのみであり、処分の効力は有効であると解されていますが、専決要件を満たさない専決処分は本来無効で、不承認であっても無効であることに変わりはありませんが、一度専決処分が行われると、住民訴訟等により争われない限り、当該処分の内容で行政が執行されてしまうことになります。
それだけ、区長の専決処分というのは、真にやむを得ない場合に限り行うことのできるものだと思います。
今回の専決処分において、フェアな民主主義 奈須りえが注目したのは、
この条例改正において、専決処分で改正したのは23区中17区で臨時議会を開催した区が5区、通年議会のため、議会で改正した区が1区で、臨時議会を開催した区が、新宿区、文京区、杉並区、荒川区、練馬区の5苦あったということです。
他区で議会を招集することができたのに、大田区が臨時議会開催を議会に求めなかった理由について、大田区は、
法改正のスケジュールを示し、出来なかったのだと説明しました。
3月2日、衆議院可決
3月26日、参議院可決、
3月31日18時に官報で法文確認。
しかも、議会の招集は、原則7日前に告示ですべての議員が参集する余裕が必要だから、そうした余裕が無かった、のだそうです。
確かに、地方自治法は、
招集は、開会の日前、都道府県及び市にあつては七日、町村にあつては三日までにこれを告示しなければならない。
としています。
しかし、この条文は、こう続きます。
ただし、緊急を要する場合は、この限りでない
緊急を要するから、区長の独断で議会を排除し専決処分するのと、
緊急を要するから、議会を7日を待たず招集するのとどちらが民主的でしょうか。
しかも、今回の法改正に伴う条例改正の必要性は、突然、生じたものではありません。
官報こそ、3月31日の18時に届きましたが、その前、
3月2日には、衆議院
3月26日には、参議院を
可決し、改正条文も確定しているのです。
大田区が、議会に事前に説明し、31日の夜に議会を開くので直前に招集するから準備をしておいて欲しいと説明することは可能だと思います。
大田区は官報を確認してから行ったので31日の18時に官報が届いたから開けなかったと説明し、
区民に利益のあることだから
専決処分でも良いと思ったといっていますが、
区民に100%良いことは、議会も一緒に良いことだと考えるのではないでしょうか。
区長の専決処分の理由にはなりません。
それより、区長の独断で、決めるほうが、問題があるのではないでしょうか。
平成22年2010年、8月4日
全国都道府県議会議長会
会 長 金 子 万寿夫
全国市議会議長会
会 長 五 本 幸 正
全国町村議会議長会
会 長 野 村
の会長が、連名で、
議長の招集権に関する緊急声明を出しています。
全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会及び全国町村議会議長会は、かねてから長が
議会を招集する現行の仕組みを改め、議長に議会招集権を付与するよう求めてきたところである。
このような中、一部の自治体で、法令の規定に違反し長が議会を招集せず、専決処分を濫
用し、議会の権能を封じ込めるという異常な事態が発生している。
これは、二元代表制の否定につながり、地方自治の根幹を揺るがす重大な問題であり、極
めて遺憾である。
国は、このような現状を重く受け止め、事態を打開すべく、速やかに所要の法改正を行う
よう、強く要請する。
この緊急声明は、私たち大田区議会の思いでもあります。
そうした意味では、条例で定めることで通年議会開催は可能です。今回の条例改正で1区は通年議会だったため、そこで審議することができました。
私たち議会も、通年議会開催を考える時期に来ていると思います。
確かに、大田区の説明の通り、今回の法改正と官報送付のスケジュールが、これまでの大田区議会の慣例通りに行っていたのでは、難しい部分もあります。
大田区長は、最大限の努力をもって二元代表制の地方自治を堅持すべきです。
区長が提案し、区長が決めることは、二元代表制ではなく、一元代表、行政の独断になります。
議会でも、異論を受け入れないどころか、意見すること、発言することを制限しようという動きもあります。
それがまかり通れば、全体主義が始まります。
議会内の、そして、行政と議会との自由闊達な議論から、最善の、より良い方策が選択できること。それが何よりも区民の利益につながることをあらためて確認し、専決処分には不承認といたします。