世田谷区の地域包括支援センター「(世田谷区立)あんしんすこやかセンター下馬」は、社会福祉法人日本フレンズ奉仕団」が世田谷区から受託し運営しています。
(社)日本フレンズ奉仕団は、同じ場所で保育園・特別養護老人ホーム・認知症のデイサービスなども行っています。
飯田熊子理事から施設の設立経緯の概略などについてううかがった後、まず、施設を案内していただきました。
高齢者施設の廊下は、ベッドが回転できる幅が求められるため、廊下幅が広くとられています。そのスペースを十分に活用するため、利用者が団らんできるようソファや車いすの方のためのテーブルを配置するなどの工夫が凝らされています。見学させていただいた時にも、そのスペースを使って利用者同士おしゃべりしていらっしゃいました。小さなことですが、利用者の生活を中心に心配りがされていることがわかります。
また、飯田施設長は、高齢者福祉における優秀な人材確保が大きな課題であると考えています。このことは、今年の3月11日に放送されたNHKスペシャル「介護の人材が逃げていく」でも取り上げられています。
「仕事がきつい」「給料が安い」「勤務時間が長い」「休日が取れない」「利用者の介護度が高い」などの社会的イメージもあり、介護の現場では、人材不足か深刻です。特に、昨今の景気回復による売り手市場が、こうした状況に拍車をかけています。
世田谷区内にある特別養護老人ホームの施設長会は、区民が安心して介護サービスを受けられる環境を作っていくため、施設内の課題に留まらない人材確保などの問題にも取り組んでいますが、飯田施設長はその中心的な役割も担っています。
「(世田谷区立)あんしんすこやかセンター下馬」(地域包括支援センター)は、この、経営理念と方針の明確な施設長の下で、主任以下三名のスタッフによって運営されています。
地域包括支援センターは、相談業務・虐待などの権利擁護・要支援の方のケアプランの作成などを行うために市区町村が設置している機関です。
予防に重点の置かれた昨年の改正により、新たに創設された要支援の方たちのケアプラン作成は、国によって地域包括支援センター(=自治体)が作成することが前提となっています。自治体(公)が予防をしっかり担うことで、今後の要介護者を抑制するという介護保険の今後の大きな流れを作るということだと思います。
そのためにケアプラン作成単価も、要介護プランに比べ低く抑えられているなど、民間事業者では採算がとれにくく設定されています。
昨年の改正の際、大田区議会において、大田区でこの要支援の方たちへの予防給付ケアプランの作成を自治体できちんと行うことができるのかということを多くの議員が指摘しました。
一年が経過し、大田区では、2006年4月から今年の3月までの間に2661件の新規の予防給付プランを作成しています。
大田区ではこのうち、地域包括支援センターでは1,520件。残りの1,141件は、民間の事業者に委託しています。
世田谷区では、述べ件数になるため、直接の比較が難しいのですが、昨年一年間に延べで24,147件の予防給付プランを作成し、そのうちの委託件数は926件となっています。
大田区では約43%の予防給付プランを地域包括支援センターではなく、民間の事業者が作成していますが、世田谷区ではわずか4%です。
「あんしんすこやかセンター下馬」の方にお伺いしたところ、世田谷区では、区が予防給付プランを作成することを明確にしており、委託できるものは
●遠隔地の場合
●ご夫婦で介護保険を利用していて、一方が要介護の場合
(プラン作成事業者が異なってしまうと利用者が混乱するため)
のケースに限られているそうです。
「あんしんすこやかセンター下馬」では、年間に1400件弱家庭訪問を行い、来所相談も1400件を超えています。電話による相談も年間で3275件。
それに加えて民生委員・児童委員、町会自治会、社会福祉協議会、高齢者クラブ、ケアマネージャーなどの活動への参加や情報交換なども行っています。
地域包括支援センターになる前の在宅介護支援センターのときから地域との連携をはかるための活動を行ってきているため、地域住民やケアマネージャー民生委員などとの関係も非常に良いといいます。
地域の相談役として認知されているため、来所件数も世田谷区の中でも二番目に多く、一番多いところは区役所の隣であるという立地から考えても、「あんしんすこやかセンター下馬」がいかに地域と密着した運営が行えているのかがわかります。
一方の大田区では、予防給付プランの委託件数が多いほど、地域とのコミュニケーションがとれいていると評価しているようです。
人員配置には、世田谷区と大きな違いの見られない大田区ですが、大田区の地域包括支援センターでは、予防給付プラン作成を委託し、他のどのような事業に力をいれているのでしょうか。
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