ひびレビ

特撮・アニメの感想や、日々のことを書いてます。
当ブログの記事をコピーした、怪しいサイトにご注意ください。

イン・ザ・ヒーロー

2014-09-09 07:41:15 | テレビ・映画・ドラマ
「イン・ザ・ヒーロー」を見てきました。

下落合ヒーローアクションクラブのベテランスーツアクター、本城渉。特撮番組のスーツアクターとして活躍する一方、いつか自分の顔と名前を映画館の大スクリーンに映すことが夢だった。そんな夢がかなおうとしていた矢先、その役は人気新人俳優の一ノ瀬リョウに変更させられてしまう。本城は、リョウのマネージャーから、リョウがハリウッド映画のオーディションを受けていること、そしてリョウにアクションを教えて欲しいと頼まれたため、引き受けることに。
当初はリョウも生意気でスタッフとの関係も悪く、ハリウッド映画関係者の前で自分を良く見せようとして、出来ない動きにチャレンジし、結果スーツアクターの1人に怪我を負わせてしまった。
そんなリョウだが、「アカデミー賞をとって、スピーチをする」という夢があった。その夢のために、弟や妹のためにも、リョウは本城に頭を下げ、本格的にアクションを習い始める。仲間とも打ち解け、アクションの腕も磨かれてきた矢先、ハリウッド映画の方ではハプニングが発生し・・・


自分の夢を追い続ける男たちの物語でした。主人公・本城渉を演じられる唐沢寿明さんは、実際にスーツアクターの経験もあり、ラストの長丁場の殺陣も、極限まで唐沢さんご自身で挑戦されたとのこと。衣装が忍者装束であるため、はっきりと表情が見て取れるのは目元でしたが、その目からは気迫が、息遣いからは必死さが伝わってきました。唐沢さんといえばもっぱら「白い巨塔」のイメージだったので、まさかこんなに凄いとは、思いもしませんでした。
本作のために体を鍛えられたそうであり、先日番組に出演されていた際も話されていたサウナのシーンでは、それがしっかりと見て取れます。現在51歳とのことですが、練習風景や殺陣ではとてもそうは思えない力強さも感じられました。
本城は「人前でガムを噛むなと忠告する」「迷惑な客にも武士の教えを説く」など、撮影現場のみならず、常日頃からヒーローとしての心構えを忘れていませんでした。ウルトラマンでもそんな話があったような。

一方、新人俳優の一ノ瀬リョウは、会議中にガムを噛み、スタッフを軽視し、アクションをやりたいのだから裏方を知る必要など無いと言ったり・・・序盤はとにかくイラッとくる行動が多いです。しかし、その心の中には大きな夢がありました。本城の会社に勤める真鍋は「アイドルにアカデミー賞なんて無理」といいますが、本城はその夢を笑いもせず、「最高の夢、持ってるじゃねぇか」と認めていました。年齢は違えども、同じ夢に向かって歩く者同士。他人の夢を笑うことは、自分の夢が笑われているようなものだと思います。

そんな夢を叶えるためには、決して1人では出来ないのがアクション。リョウは実際にスーツとマスクを装着した際、その視界の狭さに驚いていました。ディケイドのネット版でも、ディケイドのマスクがどこまで見えているか?という話があり、そのあまりの狭さに驚かされました。自分の見えていないところでも、何が起こっているかを把握しなくてはならない。だからこそ、他のスタッフとの協力関係が必要なのでしょう。

リョウはスタッフを「裏方」と称し、彼らの存在を重要視していませんでした。美術スタッフが作ったアイテムを雑に扱い、あまつさえ「また作ればいい」「それが仕事」などと言ってのける始末。お金の問題ではなく、それが壊れてしまった際、撮影がストップしてしまうこともあり得たことを考えると、道具1つ1つを慎重に扱って撮影しているんだなと感じさせられました。

これまでの行為を反省し、改めて本城にアクションを習いたいと頭を下げたリョウ。そんな彼に、本城は「アクションは、リアクションがあって成立する」といった趣旨の説明をしていました。攻撃する側と受ける側など、双方の息があって初めて成立するのがアクション。やろうと思えば幾らでも1人でカッコよく動くことは出来るものの、それでは周囲を危険にさらしてしまい、怪我を負わせかねない。自分1人目立とうとした結果、作品を台無しにしてしまうかもしれない・・・改めて、撮影現場の大変さを感じさせられる映画でした。


幼い頃から本城はブルース・リーに憧れ、彼が本城にとってのヒーローでした。子供向けであろうと無かろうと、アクションは人に伝わると信じて挑戦し続けてきた彼の前に、とある男が現れ、彼の口からは、夢を諦める一言が本城に伝えられます。リョウのように、夢を叶える人間は、他の人間とは違う何かをもっている。夢を諦めずに頑張れば叶うというが、いつまでも叶わない時、いつ諦めれば良いのか・・・若いうちは夢に向かって進むことが出来ても、何十年も経って尚、夢を追い続けられるかどうか。自身の生活や家族のことなど、暮らしていくうちに様々なことを考えなければならず、夢だけ追っているわけにもいかない。そんな思いもあったのでしょうか。

危険な仕事の場合は、家族が心配するのも当然のこと。自身の夢が叶うと知り、本城が全身で喜びを表現しながら向かった先は、昔の妻・凛子のもと。凛子は、最初は喜んでくれていたものの、あまりにも無謀な撮影内容を知り、彼を怒って追い返してしまいます。それでも夢を諦めず、白の忍者装束を身に纏う本城のたたずまいからは、並々ならぬ覚悟が溢れていました。常日頃からヒーローの姿勢を忘れない本城は、着替えて現場に向かう際も、一言も発せず、既に役に入っているように感じます。
本城の撮影直前まで、凛子はお見合いをしていました。お見合い相手に彼女が問いかけたのは、「仕事に命を懸けられるか」。「一所懸命」という言葉があるように、本城らは常に一つの所に命を懸け、仕事をこなしているのでしょう。


ヒーローに憧れ、ヒーローを目指した少年が、ヒーローとなり、そして新たなヒーローを生み出していく。夢を諦めざるを得ない時が来るかもしれませんが、夢は叶うと信じ、そして夢を叶えるために努力を積み重ねる。ヒーローも初めからヒーローではなく、多くの人の支えがあってヒーローになれるのだと、そう感じた作品でした。


そういえば本作で寺島進さんは、劇中ヒーローのピンクのスーツを着ていましたが、何と実際に特撮ヒーローの女性キャラクターの中に入っていた経験があるとのこと。ピンクの中からブラジャーを装着した寺島さんが出てきた時は思わず笑ってしまいましたが、これまた実際に買いに行った経験があるとのことで・・・意外な過去でした。
コメント