ひびレビ

特撮・アニメの感想や、日々のことを書いてます。
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"氷菓 第13話"を振り返る

2023-11-03 07:15:07 | 2012年アニメ
 「氷菓」振り返り。新OPから始まる第13話「夕べには骸に」は里志や千反田が妙な噂を耳にし、摩耶花が漫研の河内先輩と討論を繰り広げる話となっております。

・クイズ トライアル7
 セットを見るに力を入れているのは理解出来ますし、サクサク進んでは面白くない!って気持ちも分からんでもないですが、正解・不正解を口にする際にタメを作るのは良し悪しですね。エメラルドや「ダルい」にまつわる問題のタメは良いとして、生徒会長の名前はねぇ……なお、母校の会長の名前を思い出そうとしましたが、一人も出てきませんでした(汗。同じ学年で誰が生徒会長になったんでしたっけ……あれ、割と正しいタメなのでは?(笑。


・「誰だっけ」(里志)
 無事予選を突破した里志に声をかけてきた人物を見た里志の心境。この後当たり障りのない会話をしている最中に思い出すのですが、自分は興味が無いけど、相手は何故か興味をもっているのってあるあるですよね……あるあるですよね?(汗。リアルで割と頻繁に「誰だっけ」となるんですけど、単に私の興味の幅が狭いだけでしょうか。


・「カンヤ祭」の今後
 古典部が「カンヤ祭」の由来を解き明かした!とステージ上で大いに文集を宣伝する里志。その効果は少なからずあったわけですが、その由来を知った生徒は今後も「カンヤ祭」の名称を使い続けるのかどうか、私気になります!また、由来を知った生徒から他の生徒に正しく伝聞されるとも限らず、「昔の生徒に関谷って人がいて、そこから来てるんだって」などと簡略化される可能性も十分に考えられます。
 全ては「時効」。昔のことなのだから関係ない。今更変えられない。カンヤ祭は今後もカンヤ祭なのかなと、個人的には思います。


・「内容はどこの部活も真剣だよ」(遠垣内)
 壁新聞部に古典部の宣伝の掲載を依頼しに行った千反田。文集の内容の真剣さを説こうとする千反田に先んじた遠垣内先輩のセリフです。
 部は引退したものの、文化祭期間中多忙を極めるであろう壁新聞部のサポートとして入っているのでしょうか。奉太郎に苦い思いをさせられたとはいえ、元々は身から出た錆。古典部だからという理由だけで突き放したりはせず、理論立ててやんわりとお断り。それでいて面白い話が持ち上がったらもう一回来てよとフォローも欠かさない。あの一件を除けば何だかんだで頼れる先輩なのかもしれませんね。


・「奉太郎は真面目にやってるかな」(里志)
 大真面目に千反田のコスプレ写真を眺めてました(笑。チア衣装だけ妙にじっくり眺めている気がするのは気のせいではないはず。そこでお客さんから声をかけられて慌てて写真を隠し、声が若干裏返りつつも何とか取り繕うとする様が妙にリアルで大好きなシーンです。


・「必見!ただいま決戦中 乙女の戦いin漫研 マンガ論激論中 巫女VS両性体」
 後半は河内先輩と摩耶花の激論から始まります。河内先輩の挑発は明らかに摩耶花に向けられたもの、摩耶花なら乗って来ると「期待」していたんでしょうね。
 河内先輩曰く、漫画の面白さは本来みんな同じであり、読み手の面白さを感じ取るアンテナが高いか低いかで決まる。名作は長い年月鑑賞者というふるいにかけられて残ったものがそう呼ばれる。対する摩耶花は名作は最初から名作として生まれてくる、書き手の才能や技術の差は絶対にあると反論。

 個人的には摩耶花の意見寄りですが、河内先輩の考えも分からなくもないです。私のアンテナが低いために世間では大人気とされる漫画を読んでもイマイチピンと来なかったりしますし、反対に短期間しか連載されなかった漫画でも未だに思い出の一冊として心に残り続けているものもあります。「新米婦警キルコさん」は良いぞ……
 名作は名作として生まれてくるが、それを名作だと感じ取れるかどうかはその人のアンテナ次第。書き手の才能や技術の差はあるが、それが全てではない……という、折衷案に落ち着いてしまいますね(苦笑。

 「夕べには骸に」の名前を出された河内先輩が苦々しい顔をしたところで、続きは翌日。
 なお、この項目のタイトルは、摩耶花が応対し始めたあたりで湯浅先輩が書いたであろう看板に由来しています。大人しそうに見えてちゃっかりしてて好き(笑。


・気にしたい噂
 囲碁部からは碁石、占い研からは「運命の輪」が盗まれている。それも占い研には「十文字」の名前とメッセージカード、カンヤ祭のしおりが添えられていた。普段の千反田ならすぐに飛びつく話題ですが……ひとまず保留に。
 ここで初めて十文字かほが登場。後のエピソードでも再登場しますが、大人しい系かと思いきや冗談を口にしたりハキハキしていたりと、初登場時の印象が変わった子ですね。


・写真
 はい来た!来ました!大好きなシーン!頬のみならず鼻の頭まで真っ赤に染めた千反田が、奉太郎にコスプレ写真を見たかどうか確認しようとするシーン!ここの両者、本当に可愛いですよね……
 「見た」と言われれば恥ずかしい。「見ていない」と言われれば、奉太郎から興味が無いと言われているようで残念。そんな思いからか、千反田は奉太郎の答えを聴こうとして途中でやめました。ここのBGMは甘々な感じではなく、互いに「やってしまった」感を醸し出しているのも絶妙だよなぁ……


 といったところで、次回「ワイルド・ファイア」に続きます。お料理研の部長のテンション乱高下回です(笑。
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"氷菓 第12話"をもう一度

2023-10-25 08:20:06 | 2012年アニメ
 「氷菓」振り返り、第12話「限りなく積まれた例のあれ」からは「クドリャフカの順番」編として、神山高校文化祭にまつわる物語が始まります。古典部には問題が文字通り山積みで……

・それぞれの夜
 文化祭前日、各々の夜を過ごす古典部員。うち摩耶花は寝つきが悪い時に飲む薬を飲んでいました。常備されていたのか、はたまた文化祭が近づくに連れて不安が高まって眠れなくなったから買ったのか。いずれにしろ摩耶花の責任感の強さが感じられるシーンですね。
 一方の奉太郎は高校のホームページを閲覧し、里志はしおりを眺めて胸を躍らせ、千反田は山を乗り越えられるように祈願……と思い思いの夜を過ごしていました。


・姉と弟
 文化祭初日の朝、供恵から不意に渡された品物がまさかあんなことになるなんて……本当にこの姉はどこまで先を読んでいるのやら。
 ところでここの会話、奉太郎が「ゴミをよこすなゴミを」と言い終わった直後に「あんた遅刻するよ」と言い切る供恵が何か凄く好きなんですよね……奉太郎が以前言っていたように、この姉には勝てないなと視聴者ながらに思わされるシーンです。


・フロル
 ここでの摩耶花のコスプ……もとい装いは「フロルベリチェリ・フロル」。「11人いる!」の主要人物の一人です。「11人いる!」は昔母から薦められて何度となく読み返した漫画でしたが、ここで再会することになるとは夢にも思っていませんでした。久々に読み返したくなりますね。
 なお、他の漫研部員たちは格ゲーのキャラクターだったりボーカロイドだったり……今なら何の装いが多いんですかね?


・「静かだな」(奉太郎)
 ここで静かさを指摘したのは、単に古典部に通じる廊下が静かだというだけではなく、普段であれば奉太郎と二人きりの状況になれば悪態の一つでもつきそうな摩耶花が黙りこくっているのを暗に指摘していたのかもしれません。この後の作戦会議においても摩耶花は口数が少なかったです。
 また、奉太郎が「こだわり」という言葉を口にしています。後半の店番シーンでも発している何気ない言葉ですが、後の「手作りチョコレート事件」に通じる言葉なので、ついつい耳に残ってしまいますね。


・びっくり千反田
 サターンをつけた里志が部室に入ろうとした際、ドアにぶつかって大きな音を立てるのですが、ここで奉太郎と摩耶花が動じていない一方、千反田はびくっとしています。恐らく先に里志が発していた「ギャラクシー!!」で「里志か」「福ちゃんね」と各々察していたため、何が来ても動じなかったのでしょう。付き合いの長さを感じます。


・乗り気じゃない千反田
 前髪で分かり辛いですが、交渉の話が出た際に眉をひそめていました。
 実際、この後総務委員会に頼みに行くのですが「事情を知らない相手に対し、過程を飛ばして結論を先に語ってしまう」「すぐに諦める」など、とことん交渉に向いていないことが分かります。粘って良い結果が出るとも限りませんが。


・文化祭スタート!
 OPでは華麗なダンスが披露されるのですが……この後の漫才含め、高校時代の文化祭を思い出して「私には無理だったなぁ」と懐かしい気持ちに浸りながら見ていました(笑。とかく目立ちたくない、ステージの上で何かやるなんて恥ずかしくて出来ないとハナから諦めていたっけ。だからといって特に後悔は無く。裏方作業も悪くないものです。


・店番・折木奉太郎
 ここの空気感が好きなんですよ……文化祭という賑やかな空間とは対照的に静かに時間が流れている感じ、落ち着くんですよね。
 と、そんな静寂を破るかのように現れるパンク!初めてのお客さん相手に不慣れながらも応対する奉太郎。接客は苦手かと思いきや、同じ学生とはいえ初対面の相手にも平然と接することができるあたり、千反田の交渉ほど向いていないわけではないのかな?と。
 そう考えると、この話は各々の不慣れなことに挑戦する話でもあったのかなと今更ながらに思いました。


・誘惑の多い文化祭
 一方の千反田はといえば、好奇心の猛獣と評されただけあって、様々な展示に興味を持ってしまい本来の目的が果たせない状況に陥っていました。ここの千反田、ほんっとうに可愛いんですよね……特に写真部は良い仕事をしてくれました!チア千反田、好き。
 また、ちょいちょい階段近くのテントに目を向けていますが、あれは次回以降触れられます。


 そして今回から新ED!曲はもちろんのこと、探偵に扮した千反田と摩耶花が、怪盗・奉太郎と里志を追うという映像が素晴らしい!中でも一度は怪盗たちを捕まえた時の二人の表情ですよ!


 といったところで次回は「夕べには骸に」。写真の件、最高なんで見て。
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"氷菓 第11.5話"をもう一度

2023-10-24 08:18:05 | 2012年アニメ
 「氷菓」振り返り、第11.5話「持つべきものは」はOVAとなりますが、以前BS11で再放送された際には、最終回の後にこの回が放送されていました。
 「第11.5話」のとおり、「愚者のエンドロール」の一件を通していつも以上に活気が無くなってしまった奉太郎。そんな彼の心境を知ってか知らずか、姉・供恵が帰国したところから物語は始まります。

・姉から弟へのコミュニケーション
 ちょいちょい奉太郎の髪を触る供恵。奉太郎も電話中以外はいつものことだと言わんばかりに無反応を決め込んでいます。この仕草だけで姉弟仲が表現されているの、良いですよね……千反田が姉を欲しがる気持ちが分からなくもないです。
 にしても、入須先輩に良いように操られたとはいえ、奉太郎のテンションの低さよ……

・プールと古典部
 バイト先のプールに現れたのは里志!のみならず、千反田と摩耶花も一緒。奉太郎は摩耶花には目もくれず、視線が千反田に向くのが良いんですよね(笑。この後、ちょっとだけ声が上ずっていることからも、奉太郎の動揺を感じられます。
 また、千反田が罰ゲームとして奉太郎に水をかけるシーンがありますが、プールから上がる際の動きが何か好きです。

・古典部とお昼
 頬に手を当てて口をもぐもぐさせてる千反田が可愛すぎる……!あと、水着にパーカーってのも可愛くて好き。
 とまぁ、こちらや千反田たちが盛り上がる一方で奉太郎のテンションは一向に上がらずじまい。悪気が無いにせよ、ここまで無反応だとさすがに気にするなというのが無理であって……千反田も何と声をかけて良いものかと戸惑っていました。


・普通の人間と特別な人間
 と、ここまで反応が極めて薄かった奉太郎ですが、水泳選手と思しき人物たちが練習する風景を見ている際、千反田の「金メダルを取る選手が出て来るかもしれない」という言葉に「さあな」と初めて返事らしい返事をしました。
 特別な人間ならなる、普通の人間ならならない。そして自分は普通の人間だという奉太郎。入須先輩の一件が余程応えたのでしょう。この時の口調は、二度とあんな真似はするまいと自分に言い聞かせているように聞こえました。

・「主観じゃダメですか!?周りと比べて普通とか特別とか、そんなこと気にしなくたっていいじゃないですか。誰か一人でもいい、特別と思ってくれる人がいれば、私はそれで十分だと思うんです」(千反田)
 千反田にとって、自分と関わった人はみな特別。奉太郎はあくまでも主観での「特別」を語ろうとしますが、それを遮るように言い放たれたのがこの言葉。金メダルを取った選手など、誰から見ても「特別」な人間はもちろんいるでしょうけれども、何もそれだけが「特別」ではない。誰かにとって特別と思われていればそれで十分。誰もが誰かにとっての特別。奉太郎は「特別」の言葉の意味を、重さを、必要以上に大きくとらえ過ぎてしまっていたのかもしれませんね。


・消えた「白いもの」
 親子で来ていた赤い水着の女性の耳についていた白いものが無くなった、と千反田から聞かされた奉太郎。もしもそれがピアスやイヤリングだったら、誰かが踏んで怪我をしかねない。かといって話を聴こうにも、彼女の夫がもめ事を起こしているのを見ていた以上、話しかけづらい。
 ということで、奉太郎はやむなく古典部共々白いもの探しに赴くことに。探偵役としての行動なら拒んでいたでしょうが、今の奉太郎は監視員。立場上、プールの安全を確保しなければならない。「やらなければいけないことなら手短に」という奉太郎のモットーにも反せず、今の奉太郎が最も嫌うであろう探偵役とは異なる立場での捜索。上手いこと話を進めるなぁと。
 なお、千反田に懇願された際の奉太郎の動揺っぷりも見所です(笑。後に第16話でも似たようなシーンがありますが、千反田で夢中になると自分の今の行為が他人にどう映っているのか気にしなくなりますよね……

 併せて「広大な敷地内から小さな白いものを探す」というシチュエーションは、続く「クドリャフカの順番」における「大勢の中からたった一人の犯人を見つける」に通じるものがあります。奉太郎の立ち直りのみならず、こうした点でも次の話へと続く要素が盛り込まれているので、ますます本放送時に流して欲しかったエピソードだなと感じさせられますね。


・里志と摩耶花からの言葉
 里志は若干遠回しに、摩耶花はストレートに。それぞれ今の奉太郎を心配して、言葉を投げかけます。それは著名な人間が残した特別な言葉ではなく、普通の人間が発する普通の言葉。ですが、奉太郎を思って発せられた特別な言葉。それが奉太郎の心に響く、というのが良いんですよね。
 しかし、プールで物を探している時の千反田、明らかに奉太郎のフィルターがかかっているんじゃないか?と思ってしまうくらいに、里志のシーンとは違ってキラキラしていましたね(笑。


・「大丈夫だ」(奉太郎)
 赤い水着の女性の行動と子供がソフトクリームを食べているのを見て、何かに気づいた奉太郎。それを千反田たちに言う前に一呼吸置き、内心こう呟いてから話を始めました。自分の中で再度物事を整理するのと共に、間違っていれば里志たちが指摘してくれる、という信頼がこの言葉には込められていたのかもしれません。


・摩耶花を抱っこ
 特に恥ずかしがらずに抱っこしようとする里志と、照れる摩耶花が印象的であるのと同時に、仮設の裏付けのためとあらばと恥を忍んで千反田に抱っこされることを選ぶ摩耶花からは、無意味なことをさせようとしているわけではないという、奉太郎への信頼を感じます。
 しかし、千反田も摩耶花も文科系故に色は白めですが、千反田は水着の白も相まって一層色白に見えますね。


・千反田と摩耶花の謝罪
 真相が明らかになったあと、騒がせて申し訳なかったと二人。奉太郎にしてみれば、気落ちしていた自分を気遣ってあれこれ言ってくれた二人から謝られることに申し訳なさを覚えたのでしょうね。


・千反田と奉太郎
 里志が摩耶花に連れられて行った後、二人きりになるのですが……ここからのやり取りが最高なんですよね!奉太郎の「いい迷惑だ」に「ひどいです」とちょっとむくれる千反田からは、二人の距離が縮まってきたことを感じますし、そして何よりも「プールにもう一つあった白いもの」の件ですよ!あそこからの千反田の表情がもう可愛すぎるんですよね!どこか照れくさそうに立ち去る千反田も良いし、互いに目を合わせづらいものの、「白いもの」を見送る奉太郎も良いし、一部始終を見ていたっぽい監視員さんの笑顔もまた素敵。

 
 とまぁ、奉太郎が立ち直る回であるのと同時に、奉太郎と千反田が「特別」を意識し始める話としても素晴らしいものとなっています。原作はあの後どうするんですかねぇ……
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"氷菓 第11話"をもう一度

2023-10-06 08:09:55 | 2012年アニメ
 「氷菓」振り返り。第11話「愚者のエンドロール」にて今回の話は一区切り。改めて見ても全体的に暗いなぁ……

・摩耶花の指摘とフォロー
 強度を気にしていたザイルを使わないのはおかしいのではないか……摩耶花は本郷案だとすればおかしい点を指摘するのみならず、奉太郎案の面白さも褒めてくれています。飴と鞭というわけではなく、良いと思ったものは良い、違うと思ったことは違うとはっきりと口にしつつも相手を気遣える摩耶花の気の強さと優しさが感じられる良いシーンです。


・視線をこちらに向ける奉太郎
 視聴者に「お前もそう思うのか?」と問いかけているのでしょうか?


・「俺が」(奉太郎)
 何故ザイルの存在を忘れていたのかを自問自答する奉太郎。「俺が」の前には「特別な」がつきそうな言い方をしているのが印象的です。「これが本郷の真意だ」と断定したことと併せて、今回の奉太郎は自分に自信を持ち過ぎている、持つように誘導させられていることが伺えるシーンです。


・里志の指摘
 「奉太郎。本当にそう思ってるのかい?」。
 ホームズを参考書とした本郷に今回のトリックが思いつくはずがない、と里志から告げられてなお必死に食い下がる奉太郎に対し放たれた一言。この時の里志の表情はどこか辛く、寂しそうでした。奉太郎に「期待」していたからこそ、その奉太郎が自分の都合のいいように話を作り上げる様が見ていられなかったのでしょうね。
 加えて、直前のシーンで自分が解答に合わせて問題を捻じ曲げていたことに気づき始めていたにも関わらず、ここでまたしても「本郷はホームズ以外でも推理物に触れていた」と問題を捻じ曲げようとしており、そのことに気づかないのもまた寂しく……


・千反田の「気になること」
 振り返ればただ一人、ずっと本郷のことを考えていた千反田。そんな彼女が気になるのは「本郷を追い詰めたのは何だったのか」。そこには志半ばで筆を折った本郷の無念が、叫びが隠されている……
 状況こそ異なれども、言いたいことを言えないまま表舞台から降ろされたという点においては「氷菓」に思いのたけを込めた関谷さんを彷彿とさせます。次の長編エピソードである「クドリャフカの順番」も遠回しに自分の想いを伝えようとした者の行為であり、「手作りチョコレート事件」や「遠回りする雛」も思いを口に出来ない者たちの物語。アニメ「氷菓」とは、そうした口には出せない想いを抱えた者たちの物語だったのかなと、今更ながらに気づかされます。
 

・「どうも」「ヒントは何だった?」(奉太郎/入須先輩)
 タロットの本から「見方を変える」発想に行きついた奉太郎が、校門前で入須先輩に発した一言。文字にすると何の変哲もない挨拶ですが、実際は軽く怒気をはらんだ声色になっています。
 後半は場所を変えて「自分は探偵役ではなく推理作家だったのではないか」と奉太郎から問われた入須先輩の一言。こちらもそれまで優しく明るめな雰囲気から一転、冷え冷えとした口調に切り替わっています。アンケート結果の「無効票」の理由を言い当てた奉太郎に対する「さすがだな」や「さっきから違うとは言っていない」の高圧的な感じも含め、これまでの入須先輩とは打って変わって「女帝」たる一面が強く発揮されているシーンであり、声ひとつでここまで変わるか!と改めて声優さんの凄さを感じさせられたシーンでした。
 奉太郎が入須先輩の手のひらのうえで踊らされるのが少々苦手な「愚者のエンドロール」編ではありますが、ここからの容赦ない入須先輩、嫌いじゃないです(笑。


・「それを聴いて、安心しました」(奉太郎)
 自分に才能があるといったのは本郷のためか、誰でも自分を自覚すべきだという言葉も嘘か。その問いに対する入須先輩の答えを聴いた奉太郎の一言。「もうこれで勘違いしなくて済む」という意味での「安心」なのでしょうけれども……それでも自分に向けられた言葉は嘘では無かったと信じたかった、自分には才能があると言って欲しかった……そんな「薔薇色」への憧れが彼にこの問いかけをさせたのかもしれません。


・チャット
 本郷の真意はここで明らかになります。元々の事件の展開含め、気は弱いが優しく良い子なんだなと感じられますね。元より脚本のみならず演技も映像も素人である高校生が作った自主製作映画。だというのに、脚本に求められる比重があまりにも大きすぎたのも問題だったと思います。
 そして入須先輩と「あ・た・し♪」のチャットでは、「あのバカ」が気づけなかった入須先輩の真意も明らかに。これを指摘されて、口と指先しか映らないものの、感情的になっている入須先輩が印象的です。ああいう風に本音をさらけ出せる相手も貴重ですね。
 また、入須先輩の本郷を想う気持ちは紛れもない真実でした。結果的に奉太郎を傷つけてしまうことになったものの、それでも守りたかったものは守れた。誰かの犠牲の上に成り立つ成果、という点においても「氷菓」との関連性を感じさせられます。


・本郷の脚本とは
 抜け殻のようになっていた奉太郎を気にする千反田。本郷の脚本がどういったものだったか、推論を交わし合う二人を見ていると、いつものやり取りが帰ってきた!という感じがしますね。
 本郷は、自分を傷つけた者を許す話をどう描こうとしていたのか……タイトルをつけるならば、それこそOPから拝借して「優しさの理由」でしょうか。


 といった感じで締めくくられる「愚者のエンドロール」編でした。で、テレビ放送ではこの後すぐに文化祭へと移りますが、奉太郎がプールの監視員のバイトをする第11.5話があるので、そちらを挟んでから文化祭に移ります。
 また、入須先輩とは喧嘩別れしたような感じになってしまいましたが、「遠回りする雛」で再会した時のやり取りがまた良いんですよね……冷たく接した入須先輩も、ただの先輩として接する入須先輩も、どちらも魅力的な人物です。
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"氷菓 第10話"をもう一度

2023-09-23 08:26:43 | 2012年アニメ
 「氷菓」振り返り。第10話「万人の死角!」は、入須先輩と奉太郎の会話から、犯人の特定?に至るまでが描かれます。

・「最初から君が目当てだった。古典部などではなく」「君は、特別よ」(入須先輩)
 試写会の時もそうですが、入須先輩は建前ばかりではなく、ある程度本音を話してくれるからこそ厄介な相手なんですよね。全てが建前なら疑ってかかればいいが、試写会の時に見せた感謝の言葉や、この言葉などは紛れもない本心。故に騙されてしまう。
 自身の「人使いの荒い女帝」として噂すらも「そんな女帝に自分は頼ってもらえている、期待されている」と相手を調子づかせる要素に変えてしまっているように感じます。

・「俺に技術など……ただ運が良かっただけです」(奉太郎)
 「運が良かった」というのは千反田の「一身上の都合」を聴かされた時にも発した言葉ですが、千反田が「運に頼らせてください」と運を認めたのに対し、入須先輩は「運で済ませてしまうことの残酷さ」を語り、奉太郎に自身が特別であることを自覚させようと試みます。
 恐らくここで入須先輩が千反田のように奉太郎の運に頼ったのであれば、奉太郎は古典部員たちの力を借りつつ解決したでしょう。ですが、今回は奉太郎自身が「特別」であることを自覚してしまった。「一人で解ける」と思ってしまった。それが大きな落とし穴だとは知らずに。
 これまでの事件では解決したのは奉太郎であるにせよ、実際には古典部員たちからの情報提供や軌道修正があったからこそ、真実にたどり着けていました。何でも自分一人でやった気にさせられてしまった奉太郎は、ちょっと悲しく見えてしまうので、この話は苦手なんですよね(苦笑。


・里志と奉太郎の会話
 自分にしか出来ないことは無いと断言する里志。彼の「こだわり」に関する思いはもう少し先の話で語られます。
 また、奉太郎の里志に対する評価ですが……何気ない会話の中であれば里志の表情をあそこまで暗くすることは無かったでしょう。奉太郎に他意が無かったにせよ、なまじ入須先輩に「期待」されてしまっている奉太郎からあんな言葉を聞かされてしまっては、「こんな自分が特別なのだから、きっとお前も特別になれる。頑張れ」などと、どこか上から目線、無責任な応援をされているようにも感じてしまいます。
 

・摩耶花の魅力
 摩耶花ならこの映画をどう撮るか?と問われて、あれこれ指摘を始める摩耶花。構図へのこだわりは自身も……だからこそ、でしょうね。
 里志が補修に連れていかれた後、摩耶花も図書登板だから、入須先輩を手伝う気はあっても奉太郎を手伝う気は無いなどと言いつつも、最後には謝りながらその場を去っていく摩耶花。千反田や里志とはまた違う、この親しい距離感こそが摩耶花の魅力だと思います。


・「これが本郷の真意だ」(奉太郎)
 推論ではなく結論。その後、入須先輩への説明においても「確信しました」と自分の結論に間違いが無いと確信しています。
 首吊りの影の正体は「~だったんだろうな」、進度間違いについては「こう書くだろうからだ」、糸魚川先生に話を聞きに行く前には「補足できるはずだ」と、これまでいずれも「推論」を語ってきた奉太郎でしたが、今回は「結論」を出している。その点においても入須先輩の影響の大きさが感じられます。


・「沢木口の言葉を借りましょう。『別にいいでしょう、それくらい』」(奉太郎)
 個人的に奉太郎が一番調子に乗ってしまっているのがここだと思います。入須先輩からの問いかけに「待ってました」と言わんばかりに口角を上げて、このセリフ。調子づいてんなぁ……


・「どうやら羽場はお気に召さなかったようだ」(奉太郎)
 盛り上がりを重視する中城、本郷が7人目の役者を探していたというヒントをくれた沢木口。この2人は少なからず自分の案や考えに沿うものだったため、受け入れられたのでしょう。一方羽場がお気に召さなかったのは「羽場の推理が採用されなかったから」「奉太郎案が面白かったから」「ザイルが使われなかったから」のどれですかね。


・「どうだった」(奉太郎)
 映画を見た古典部員たちに感想を尋ねる奉太郎。文字にするといつもの感じですが、実際には普段よりややテンション高め、自信ありげに問いかけているように感じます。ですが返ってきた答えは……


・奉太郎を窓際に引っ張る摩耶花
 まだ室内に人がいるのを気にしてか、窓際に移動したうえで、どこか申し訳なさそうに疑問を投げかける摩耶花。仲は良好とはいえないまでも、大勢の前で問いただすような真似はしない。そんな摩耶花の優しさが光る場面ですね。


 摩耶花の指摘により色づいた世界は一転して灰色に。何故あの件を忘れていたのか。本郷の真意はどこにあるのか。といったところで、次回は「愚者のエンドロール」編ラストにして、奉太郎曇らせ回です(汗。
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"氷菓 第9話"をもう一度

2023-09-22 08:00:24 | 2012年アニメ
 「氷菓」振り返り。第9話「古丘廃村殺人事件」では、古典部は3人の探偵役志願者から推理を聴くことに。みんなが「事件」に寄り添う中で、千反田の着眼点が異なっていることにも注目です。酔っぱらいの意見と言えばそれまでなんですが(汗。

・ウイスキーボンボンと千反田
 奉太郎たちもむせていましたが、私も酒が入ったチョコは大の苦手です……無理です……
 そんな中、一人黙々と口に運び続ける千反田。その結果はお察しのとおり。段々口調がぽわぽわしていくのが可愛いですね(笑。将来酒を飲みに連れていくと、見慣れぬ銘柄の酒を次から次へと頼んでとんでもないことになりそうな気がしないでもないです。

・撮影班・中城先輩
 「誰も本郷を責めたりしなかった」などと言いつつ、自分の推理に都合の悪い出来事は本郷のせいにする中城先輩。まぁ、悪い人ではないのですが……そんな彼曰く「トリックなんか気にしない、盛り上がればいい」「犯人は窓から出ていった」。1時間のミステリーの結末としては、摩耶花が言ったようにあまりにもお粗末です。あの後の解決編で「窓だ!」と気づくまで何分尺を使うんでしょうね……?
 結局彼の案は否定されますが、中城先輩の案では犯人は分からずじまい。「夏草を刈り込めばOK!」と意気込んで去っていきましたが、刈り込んだ後の話はどうするおつもりで……?

・涙ながらに事情を語る犯人(演:奉太郎)
 あの構図だと中城が主役の年配刑事、里志と摩耶花が中城の部下の新米刑事、千反田は奉太郎が事件を起こしてでも守りたかった人……的な感じですかね?しかし虎のパーカー、似合わんなぁ(笑。

・「探偵小説」の読書歴
 小学校の図書館に置いてあったホームズをいくつか読んだぐらいですねぇ……あと「漫画以外も読んだ方がいい」と言われたので「じゃあホームズの漫画なら良いだろ!」という考えに至り、「四つの署名」の漫画を買ってもらったことは覚えています(笑。


・小道具班・羽場先輩
 「君らミステリの話が出来るんだってね?」登場時から如何にも自信満々なオーラを放っています。奉太郎も下手に何か言うと機嫌を損ねかねないと分かっていたからこそ、適当な返事をしたのでしょうね。それで舞い上がる羽場先輩のチョロさたるや……(汗。摩耶花
 彼は「窓の外に足跡が無い」と中城案を否定する発言をしていますが、仮に奉太郎たちが試写会に訪れず、オブザーバーとしても参加しないまま撮影に向かっていたら、中城案と羽場案の対立が起きそうに思えます。まぁ「盛り上がればいい」中城先輩なら、単に窓を開けて逃げたよりも、2階からザイルにぶら下がって降りてきたといった方が盛り上がると考えて、結果羽場案に収束しそうな気がしますが。窓の建付けの悪さは撮り直すか、海藤が開けていたことにするとか?


・広報班・沢木口先輩
 名前だけなら二度目の登場。この後も時折登場してくる先輩です。ここでは明るく気さくな先輩ですが……(汗。
 7人目の登場人物として、壁抜けが出来る怪人や怨霊が登場!という突飛な案ですが、割と嫌いじゃないのも事実。中城先輩も盛り上がるでしょうし、羽場先輩も否定しきれないでしょう。この場合ザイルは怪人から逃げるために使用すれば回収できるかなと。


・議事録
 あぁ、ここで出ていたのか……と今更ながらに気づかされました。


・ミステリーとホラーの区別
 幽霊とか怪奇現象の有無……ですかね?まぁどっちも「怖い」に帰結するような気がしますが(汗。


・眠る千反田
 この時、顔と腕の色が異なりますが、酔っぱらって意識を失う時ってあんな感じになるんですかね?


・横断歩道を渡る奉太郎
 傍から見れば他の人に混じって横断歩道を渡る学生Aに過ぎない。しかしその中で入須先輩が声をかけたのは、他の誰でもない折木奉太郎ただ一人。「選ばれた」「特別」。そんな雰囲気がここの描写からも伝わってきますね。

 といったところでまた次回。
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”氷菓 第8話”をもう一度 

2023-09-21 08:18:18 | 2012年アニメ
 「氷菓」振り返り。第8話「試写会に行こう!」から第11話までは「愚者のエンドロール」編となります。

・「名前を入れて下さい」と「あ・た・し♪」のチャット
 「あ・た・し♪」は「使い方によっちゃ踊ってくれるやつ」を紹介する前に、一瞬寝たふりをしています。さすがに気が咎めたんですかね?この後の「名前を入れて下さい」さんの「効率的」などの言動からして、この後「使い方」を色々教わったのでしょう。
 しかしチャットルームとはまた懐かしい……ブログを始めた頃は参加させていただいたことがありました。

・女帝・入須冬実の微笑み
 来た!入須先輩来た!これで勝つる!……という古の話はさておいて。黒髪ロングで、ちょっと伏し目がちでCVゆかなさんとか最高かよ……
 「人使いが荒い」ことで知られる入須先輩。「愚者のエンドロール」編における中心人物であり、その後の「クドリャフカの順番」においては千反田の助言役として、最終回「遠回りする雛」においても僅かながら、しかしこの時とはまた違った一面を見せてくれるクールビューティーな先輩です。
 そんな入須先輩ですが、千反田の「(映画が)楽しみです!」を聴いて微笑みを浮かべています。千反田のように裏表なく素直に接してくれる人間は、入須先輩にとって貴重な友人なのかもしれません。そんな彼女を嬉しく思うのと同時に、利用したことを申し訳なく思っている表情に見えました。

・2年F組の自主製作映画
 演技するつもりがあまりなく気だるそうな山西、緊張しすぎて視線がうろうろし声が上ずる杉村、張り切り過ぎている瀬之上、淡々と喋る鴻巣、普通の勝田、声を張る海藤……自主映画感満載の映像と演技が見事ですね。全員が単に棒読みではなく、一人ひとりにも個性が出ているのが興味深いです。この中だと演技と素が入り混じってそうな山西がある意味自然体の演技と言えなくもな……い?髪くるくるいじるの可愛くて好き。

・脚本家・本郷の体調不良
 「漫画書いたことあるんだって?じゃあ一時間の映像作品の脚本よろしく!」……私は漫画も映像作品も作ったことが無いですが、相当な無茶振りってことだけは何となく理解出来ます。しかも依頼を受けたうえに、ミステリーの勉強までしてくれたクラスメイトに対して……ねぇ?
 なお、これに真っ先に無茶だと反応したのが摩耶花。経験者の言葉は重みが違いますね。

・何故古典部が選ばれたのか?
 奉太郎から問われてちょっと険しい顔つきになる入須先輩。予期していた質問にせよ、納得してくれるかどうかは賭けだったのでしょうね。奉太郎が「糸魚川先生に聞いたのか?」と自己解決してしまわなければ、もう少し真相に近づけていたかもしれません。

・入須先輩の交渉術?
 押してダメなら引いてみる、責任感を和らげる……加えて千反田の性格を熟知したうえでの対応。見事なまでに術中にはまってしまった古典部と奉太郎でした。最後の「助かる」は恐らく彼女の本心。奉太郎がハッとしたような表情を見せたのは、それを察したためでしょうか。虚実織り交ぜて相手を手ごまにする……女帝、恐るべしな一幕です。

・タロット
 あなたのタロットはどこから?私はドラメッド三世から!(笑。

・「迎えに来ちゃいました」(千反田)
 奉太郎たちが二年生に進級した後の話である「ふたりの距離の概算」。そのとある場面において、この時千反田は奉太郎の家を訪れていないことになっています。原作とのズレっちゃズレですが、そもそも糖分多めのアニメ版ですから、そんなに気にすることでもないかなと(笑。

・「では行きましょう」(江波)
 と言われて千反田たちが立ち上がる一方、奉太郎は座ったまんま。この後「やれやれ」的な感じで立ち上がるか、千反田あたりに催促される様が見える見える……


・「私の親友です」(江波)
 基本淡々と案内する江波さんですが、本郷のことを語る時はちょっと明るめな声色なのが、彼女への友情が感じられて良いんですよね。
 微笑ましいエピソードではあるものの、本郷は現在体調不良。親友を思う気持ちを察し、千反田たちも少々暗めの表情をしているのも印象的です。

・Why didn't she ask EBA?
 親友を介して犯人を聞けば良いんじゃね?的なメッセージ?でしょうか。考えてみれば最もな話。果たして江波さんはどこまで知っていたのか。本当に親友の執筆活動に一切関わっていなかったのか。その疑問は……本編で触れられたっけ?


 というのもですね、実はこの「愚者のエンドロール」編。本作で一番苦手なエピソードです。ネタバレになりますが、要は「主人公が負ける話なんて見たくない!」的なわがままです(笑。入須先輩は好きですし、この後の解決?編も興味深くはあるのですが、このほろ苦さは何度見ても慣れませんね。
 
 ともあれ、甘いだけではない、ほろ苦さあっての「氷菓」を代表するエピソードの一つ。これがあるからこそ、「遠回りする雛」の入須先輩が映えるわけで。避けては通れない話です。
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”氷菓 第7話“をもう一度

2023-09-13 08:17:05 | 2012年アニメ
 「氷菓」振り返り。第7話「正体見たり」は、古典部一行が合宿として摩耶花の親戚が営む民宿を訪れ、そこで見た首吊りの影の正体とは何かに迫るお話です。

・善名梨絵(姉)と嘉代(妹)
 積極的な姉・梨絵と内気な妹・嘉代。初対面の時から性格の違いが如実に表れていますね。

・「奉太郎が一人旅ぃ?」(里志)
 千反田が企画し、摩耶花がコネを使ったからこそ成立した合宿。奉太郎一人では「人ごみの多い時期・場所を避けようとあれこれ考えあぐねている内に『家にいた方が楽だ』という結論に至る」のかな?と。まぁ私の行動パターンなんですが(笑。

・「シチュー、グラタン、チーズフォンデュ……」(奉太郎)
 漂うチーズの匂いから連想されるメニューを口にする奉太郎。前述の一人旅云々といい、何だかんだで旅行でテンション上がり気味なのかな?と感じられるシーンでした。また、「子供は苦手」と言いつつ、梨絵が「デザートがある」と発言した際には「チーズケーキか?」と確認していることから、割とチーズ好きなのかな?とも。まぁ梨絵が初対面や年上だからといって身構えたりせず、積極的に話す子だからかもしれませんが。

・味噌汁をこぼす嘉代
 サラダの椀を取ろうとした梨絵の左手が、味噌汁を持つ嘉代の右手にぶつかっています。
 今回初めて気が付いたんですが、嘉代は左手で箸を持っています。となればお椀は右手。一緒に暮らしている梨絵ならば、そのことは当然知っているはず。それなのに話に夢中で注意を怠った梨絵が、一方的に嘉代に注意を促すというのはどこか理不尽な気がしないでもなく……

・「気の置けない相手がいつもそばにいるなんて、素敵だと思いませんか?」「思いません」(千反田/奉太郎)
 姉か弟が欲しかったという千反田に対し、心の中でツッコミを入れた奉太郎。今回はこれまで以上に掛け合いが楽しい話という印象が強いです。
 ちなみに私には弟がいますが、兄としては割かし気が合っていると思っています。普段から積極的に近況報告をしあうような間柄ではありませんが、たまに会えば同じゲームで遊ぶぐらいの仲ではあります。

・脱衣所の奉太郎
 骨が浮き上がっているなど、妙に力が入っているのが面白いですね(笑。

・湯あたりした奉太郎、と里志と摩耶花
 車酔い+千反田の入浴シーンを想像した結果、湯あたりしてしまうことに。里志に抱えられてぐったりした奉太郎を見た摩耶花は心配する言葉をかけていました。その後も布団を敷いたり窓を開けてくれる摩耶花。こういったところからも、普段は悪態をつきながらも心底嫌っているわけではなく、むしろ気の置けない間柄だというのが伝わってきますね。
 で、個人的には弱った奉太郎の声と素直さが印象的です。何だかんだでまだ高校一年生、子供っぽさを感じるシーンだなと。

・首吊りの影
 首吊りの影を見てしまい、布団にくるまって震えながら千反田にすがりつく摩耶花可愛くて好き。そんな摩耶花にすがりつかれて起きた時、普段と髪の分け目が違ってちょっとボサッとしている感じの千反田も好き。アニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ」の髪がもじゃっとした島村卯月が可愛かったのに近しい何かを感じる。

・「梨絵の」夏休みの宿題を見る摩耶花
 嘉代はとっくに終わっていたか、あるいは言い出せなかったか。

・ぐっすり里志
 奉太郎たちが朝食を食べ終えて行動を開始したにも関わらず、まだまだ気持ちよさそうに眠り続ける里志。どんな時も目覚まし無しで朝5時~6時起きの私としては、何故そこまで眠れるのか割と不思議で気になります!

・嘉代との会話
 本館への立ち入りを断った理由が「お父さん」でも「お母さん」でもなく「お姉ちゃん」なんですよね……
 また、千反田が嘉代に目線を合わせているのに対して、奉太郎はそのままの姿勢で、見下ろす形で嘉代と接しています。加えて話が終わった際には「役に立った……」と言いかけていました。子供相手に「ありがとう」とは言えども「役に立った」とはあまり言わない気がしますが、ここら辺も不慣れの表れなんですかね?

・ラジオ体操
 千反田が中学二年まで通っていたと知った時の奉太郎の表情がツボです(笑。まぁ、やらなくてもいいことといえばそうですが、割と良い運動になるんですよね、ラジオ体操。今更ありがたみを知ることになろうとは。


・「趣味は良いね」「何が良くない?」(里志/奉太郎)
 梨絵の浴衣を見た里志の感想に対する奉太郎の返答。里志が何を言いたいかを悟る奉太郎から、二人の付き合いの長さが感じられます。


・首吊りの影の真相と「枯れ尾花」
 終わってみれば簡単な話。けれどもその真実は千反田に幽霊の正体が枯れ尾花だったと伝えるに等しいことでした。それでも奉太郎が提示した答えが納得できるものだったからこそ、千反田はあれほどまでに寂しい表情を見せたのでしょう。受け入れ難い真実だからといって否定しないのは千反田の良いところではありますが……
 ですが、果たして本当に幽霊の正体は枯れ尾花だったのか。たまたまその時は枯れ尾花だったにせよ、もしかすると幽霊は実在するのではないか。わざわざ自分のものに名前をつけているのにも、何か理由があるのではないか。出会って日が浅い千反田のことを理解出来なかったのであれば、1日そこらしか経っていない相手の事ならば猶更理解出来るはずもありません。であれば、幽霊の正体は枯れ尾花ばかりではないはず。
 この優しい終わり方こそ、アニメ版「氷菓」の特徴だなと感じられる話でした。

 次回からは女帝登場!
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”氷菓 第6話“をもう一度

2023-09-12 07:49:28 | 2012年アニメ
 「氷菓」振り返り。第6話「大罪を犯す」は、数学の先生は何故千反田が所属する1-Aの授業進度を間違えたのか?という話。


・憤怒の摩耶花
 OPが明けてから1分近く里志に対して怒りをぶつける摩耶花。この怒りは奉太郎の「疲れないか」の一言で一旦沈静化しますが、実際怒るのって相当体力と精神力もっていかれるんですよね。実際に怒るのも疲れるのに、アニメで長々と怒る演技をするってのも相当大変なんじゃないかなと感じたシーンでした。
 
・ふくれる千反田
 「どうにもならん」と目を伏せた奉太郎に対する千反田のリアクション。かわいい。

・「いやぁ、それにしてもよく怒るね。ストレス発散になるだろう?」(里志)
・「まぁでも、少しは千反田さんを見習った方がいいよ。怒ったところを見たことが無い」(里志)
 散々怒られた挙句に出てきた言葉がこれ。摩耶花の怒りを再燃させかねない言葉にも思えますが、摩耶花は割と落ち着いて受け止めていました。摩耶花も最後の方は「槍が降る」と言い出していましたから、理詰めではなく感情の赴くままに怒りをぶつけている雰囲気を感じ取ったからこそ、こういった言葉でも再燃することは無い、と踏んだのでしょうか。

・「お、ほら怒れた」(奉太郎)
 摩耶花から奉太郎は怒れないと言われて、内心ムッとした奉太郎の反応。かわいい。

・七つの大罪
 あなたの大罪はどこから?私は「鋼の錬金術師」のホムンクルスたちから!もしくはデジモンの七大魔王から。

・程度の問題
 「大罪」という言葉だけを取って怒っちゃダメ、嫉妬しちゃダメ……ではなく、程度の問題だという千反田。間違っていることには正しく怒りを表明し、嫉妬することで自身を向上させ、たまには怠惰をむさぼることでリラックス……と。その程度は人に寄るでしょうが、何にせよ頭ごなしに否定するのはおかしな話だと。

・「あっ……」(奉太郎)
 藪蛇を踏んでしまったことに気づいた奉太郎。まだまだ千反田がいる環境に慣れていないのが伺えます。千反田が忘れていたのは、摩耶花が怒り心頭だったから、ですかね?

・奉太郎を下からのぞき込む千反田
 何故先生は授業進度を間違えたのか。「わからん」と一蹴しようとする奉太郎に必死に食い下がり、遂には机に上半身を預けて奉太郎を下からのぞき込む千反田。一見清楚な黒髪美少女。しかして実態は好奇心の猛獣。こうした大胆な行動は千反田の魅力の一つですね。

・「千反田が何に怒り、何に喜ぶのか。それを知るには、俺はまだこいつを知らなさすぎる」(奉太郎)
 知らなさすぎるが故に藪蛇を踏んでしまった奉太郎。「まだ」ということは、この先があるということ。少なくとも千反田との関係は高校在学中、古典部にいる限りは続くと思っているからこその言葉であり、恐らくこの時点ではそれ以上の意味は無いでしょう。

・授業進度を間違えた理由
 アルファベットのクッキーでその理由を明らかにするのはセンスの塊すぎる……

・「うん、それあり得る……」(摩耶花)
 真相を知って照れくさそうに納得する摩耶花。かわいい。

・「やっぱり私、先生に少し言い過ぎたかもしれませんね。悪いことをしてしまいました」(千反田)
 千反田の気持ちを理解出来るというのは、それこそ「傲慢」だとは思いますが、それでも「怒った自分は正しかったのか」「怒らなくてもよかったんじゃないか」と思ってしまう気持ちは理解出来ます。怒るのはエネルギー消費も激しいですが、怒った後も色々と考えてしまうので、精神面も削られていきます。だからこそ怒りたくないし、怒る必要は無かったと、個人的にはそう思いたいからこそ理由を探す気持ちは分かります。

・薔薇色の千反田と灰色の奉太郎
 ここの対比が何とも美しいんですよね……最終回の薔薇色満開とはまた違った良さがあります。
 一見背中合わせの千反田と奉太郎ですが、実際にはまだまだその距離は離れている。行動は読めても心は読めない……とか何とか思っていたら、呼ばれて振りむけば眼前に千反田がおり、思わず頬をうっすら赤く染める奉太郎。実際には行動すらも読めていませんでした。
 これから先も「意外」と思わされることは沢山あるのでしょう。それは相手を理解出来ていなかったということでもあり、相手の新しい一面を知るきっかけでもある。人は「納得」と「意外」を繰り返して、少しずつ距離を縮めていくのだろうなと感じた話でした。

 
 といったところで、また次回。次回は原作と結末が異なる「正体見たり」!
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”氷菓 第5話“をもう一度

2023-09-07 08:15:05 | 2012年アニメ
 「氷菓」振り返り、第5話は「歴史ある古典部の真実」。前回「文化祭を巡る学校と生徒の対立の末に、関谷純は退学した」ことが明らかになったものの、まだ千反田が泣いた理由は分からぬまま。その真相に迫る、氷菓編クライマックスとなります。

・「お前らを見てるとたまに落ち着かなくなる。俺は落ち着きたい。だが、それでも俺は、何も面白いとは思えない」(奉太郎)
 第2話で学校史の謎を解いた後、楽しそうにする千反田たちを見て奉太郎は疎外感を覚えると同時に、自分と千反田たちの何が違うのかを考えていましたが、それは「落ち着きたいから」だったと。この時何故分かったのかを問われた奉太郎は「ただのひらめき、ただの運だろ」と告げ、今回事件を解決した後も「たまたま」としていました。傍から見れば理路整然とした推理であっても、奉太郎自身が「偶然」「たまたま」「運」だと思ってしまっていては、当たった時の喜びも、外れた時の悔しさも感じられない。だから何も面白いとは思えていないのかなと。

・空模様と十字路
 奉太郎と里志の会話の最中、灰色がかった空から光が差し込み始めてきます。そして奉太郎は十字路を直進。
 灰色に飽きた奉太郎に千反田という光が差し込みはじめ、保留(左右に進む)でも後退するでもなく、前に進み始めた奉太郎の状況を表しているように感じました。

・姉・供恵からの電話
 タイミングを見計らったかのようにかかってくる供恵からの電話。言いたいことだけ、聞きたいことだけ聞いて切る、という点だけを見れば供恵もある意味では省エネ主義な気がしますね(笑。「このくそ姉貴!」の言い方、普段千反田たちと接する奉太郎とは違い、弟感溢れる怒り方なのが印象的でした。ここでは悪態をつきつつも、手紙の末尾を「アドバイスありがとう」で締めくくっています。姉弟関係の良好さと奉太郎の素直さが感じられる好きな言葉です。
 ところで、供恵が在籍していた頃の古典部では、関谷純のことが脈々と語り継がれていたのでしょうか。あるいは供恵が個人的な興味で調べて突き止めていたとか?後々の話を見るに、供恵ならば一人で瞬く間に真相にたどり着けそうですからね……

・奉太郎の招集
 省エネ主義ということは仕事をしないことではなく、仕事を効率よく進められるということ。段取りと手際の良さが素晴らしかったですね。
 摩耶花から見て「張り切っている」ように見えたのは、関谷純の行動が自分が憧れているかもしれない薔薇色だったのかどうかをはっきりさせたかったのでしょう。

・糸魚川先生の過去
 ここ!ここ今回で一番印象的なシーンです。糸魚川先生が歩んできた道のりが現在から過去に向かって描写されています。ほんの一瞬のシーンですが、顔つきや服装などにこだわりが感じられます。言ってしまえば今の糸魚川養子と過去の郡山養子の比較だけで十分であり、その過程を描くのはエネルギー効率が悪いようにも思えますが、こういったところへのこだわりがあるからこそ、本作はいつまでも薔薇色の輝きを放ち続けているのだろうなと感じますね。

・45年前の真実
 関谷純は望んで全生徒の盾になったのか。事のあらましが糸魚川先生から語られ、それを聴けば自ずと「氷菓」の表紙の意味や「カンヤ祭」の由来は導き出せました。
 また、この真実を語る最中、糸魚川先生は眼鏡をはずしています。学生時代は裸眼だったようですから、その頃の気持ちを思い出すために外していたのかなと。

・「氷菓」の由来
 蓋を開けてみればくだらないダジャレに過ぎない。しかし、それを本当に糸魚川先生は理解出来なかったのか。理解出来たからこそ、その声に応えるかのように、氷菓第二号の序文に関谷純への想いを綴ったのではないのか。関谷純が氷菓第二号を持っていたのは、彼の声に気づいた誰が送ったのではないのか……その理由は分からずじまいですが、あの時周囲で見守る側だった者として、理解出来ても語る資格は無いと感じたのでしょうか。

・台割を作る摩耶花
 「漫研に所属している=漫画が描ける」とはならない。となると……?原作では興味深い展開になっていますから、早く続きが読みたいですね……


・「確かに10年後の私は気にしないのかもしれません。でも、今感じた私の気持ち、それが将来どうでもよくなってるかもなんて、今は、思いたくないんです」(千反田)
 10年も経てば興味も変わるし、考え方も変わる。私事になりますが、ブログを10年以上も書いていると、似たような話を書くこともありまして。
 それが作品の感想となると若干あるいは大きく変化していることもあります。だからといって「今の感想が全て。10年前の感想なんてどうでもいい」というわけではなく、10年前の感想はその時の私にしか抱けない大切な感想であり、当時そういった思いを抱いたからこそ、今との比較が面白く感じられることもあります。

 10年後の自分が高校生活を振り返って後悔しないかどうかなんてわからない。分からないからこそ、目の前にある「今」を大事に積み重ねることで、その判断材料を少しでも増やしていくことも大切なのだと思います。何事も経験あるのみ、です。



 といった感じで氷菓編はこれにて終了。次回、次々回は短編を挟んで「愚者のエンドロール」編へと続きます。
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