二銭銅貨

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祇園の姉妹

2006-11-22 | 邦画
祇園の姉妹  ☆☆
1936.10.15 第一映画社、白黒、普通サイズ
監督:溝口健二、脚本:依田義賢
出演:山田五十鈴、梅村蓉子、志賀廼家弁慶、進藤英太郎

山田五十鈴の役名の「おもちゃ」とは妙な名前です。
こんな名前が当時あったのでしょうか?

めちゃめちゃ強くて現代的な山田五十鈴、
いきなり下着姿で登場です。
当時としてはビックリの演出だったのでは無いでしょうか?
洋装の山田五十鈴に対する和装の梅村蓉子は優しい人です。
気の良い芸妓で、義理と人情に生き、思う人につくします。
山田五十鈴みたいにドライではありません。

そんなチャッカリな山田五十鈴に大きな不幸が襲います。
おおケガをして手当てを受ける山田五十鈴は、
大きな声で世間をのろいます。男供をののしります。
そんな世の中に、そんな男供に、負けてたまるかと、
強い決意で叫びます。
06.11.03 NFC
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浪華悲歌(なにわエレジー)

2006-11-21 | 邦画
浪華悲歌(なにわエレジー)
☆☆
1936.05.28 第一映画社、白黒、普通サイズ
監督:溝口健二、脚本:依田義賢
出演:山田五十鈴、梅村蓉子、志賀廼家弁慶、進藤英太郎

ちょっとコミカルな喜劇調が入った映画だけれど、
強くて芯の通った山田五十鈴によって、やや社会派的な、
強い主張のある映画にもなっている。

投げやりで、やけっぱちな不良娘の山田五十鈴の気持ちを、
家族も、会社の人達も、恋人も、誰も分かってくれていない。
ささくれだって、気も立って、八つ当たりな気分。
警察も冷たいし、世間も冷たい。
夜の寒さ、恋人の裏切り、家族の薄情。
家の玄関の前の灯りだけが友達のようだけど、それも薄暗い。

本当は、みんなのためにと思っていても、でも、結局は、
ただの不良娘だと思われて、こんな私に誰がしたと、
強く思う気持ちは、また、この世のドロドロを、
強く、たくましく、鋭く、生きていくことを決意する大阪娘でもある。
06.11.03 NFC
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折鶴お千

2006-11-20 | 邦画
折鶴お千  ☆☆
1935.01.20 第一映画社、白黒、無声、普通サイズ
監督:溝口健二、脚本:高島達之助、原作:泉鏡花「売食鴨南蛮」
出演:山田五十鈴、夏川大二郎

木枯らし吹く、夜の鬼子母神の境内の木立の、
その下で寒風に吹き散らされる枯れ葉の上に、
ドサッと倒れこむ山田五十鈴。

不幸な運命の山田五十鈴は、これもまた薄幸の青年、
夏川大二郎が自殺しようと手に持つ剃刀を取り上げて、
何とか心の親となって助けてあげようと心に誓う。
強い気持ちは剃刀の刃に託される。

上野駅のセット。やけにしょぼい上野駅に、
バサバサと薄情な雨が降りかかる。
薄情な人々は故障で不通の電車を待ちながら悪態をついている。
夜遅く、電車は来ず、雨だけが降る。
けむる上野の山。けむる鬼子母神。
その停車場の、駅舎の中の混雑した椅子に腰掛けている山田五十鈴。
外では、茫然と上野の山を見上げて、山高帽を被って佇む夏川大二郎。

病院の病室で、過去の記憶と現在を重ね合わせるシーンは幽玄で、
時空を超えた超自然的な感じがして、
悲しい物語をそれだけに終わらせない、
この世を超えた不思議な力を感じさせる場面でもあります。

山田五十鈴の剃刀のような強さ鋭さが主役の映画です。
相手役のやさしい夏川大二郎は夏川静江の弟だそうです。

弁士:片岡一郎
06.11.05 NFC
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元禄忠臣蔵

2006-11-15 | 邦画
元禄忠臣蔵  ☆☆
1941.12.01 興亜映画、松竹、白黒、普通サイズ
監督:溝口健二、脚本:原健一郎、依田義賢、原作:真山青果
出演:河原崎長十郎、三浦光子、梅村蓉子、高峰三枝子

瑶泉院(ようぜいいん)の静かな佇まいを、
きちんとした鋭い線で表現する豪華な着物の衣装と、
長い黒髪を印象的に見せる後ろ姿で演じているのは三浦光子です。
鋭い直線的なイメージと柔らかく優しい感じの三浦光子の線が、
交わりあって調和して、端整なろうそくの炎とともに、
フィルムにくっきりと焼き付けられています。
重苦しく厳しい思想的な表現にあふれるこの硬い映画全体に、
優しくて美しいお姫様が若干の色合いを付けています。

義士討ち入りの場面は無く、瑶泉院と、
梅村蓉子が演じる付き人らしき戸田が、討ち入り場面を記述した
手紙を読む場面をもってその場面に替えています。
打ち入りを予感する瑶泉院と戸田の夜明け前のシーンから、
その手紙を読み上げるまでの強い緊張感の中に、
清らかな柔らかい線がこの2人によって表現されています。

京都御所、天皇に向かって遥拝する大石内蔵助ともう一人を
ローアングルで撮影したシーンは、
この映画を象徴する場面でもあり、
またその製作年代を感じさせるものでもある。

この映画は真珠湾攻撃の1週間前に封切られたという映画です。新藤兼人によると客席はガラガラだったそうです。この時代を象徴する、国の威信をかけた映画だったのだと思います。国というか軍の指導のもと、ものすごい資金を使って製作されたことがその重厚長大な、また細部まで美しく仕上げられたセットを見れば良く分かります。まさに映画界の戦艦大和でしょうか。実際の戦争で、巨大な大和、武蔵は小さな軍用機の群れに成すところなく撃沈されてしまいます。最初の巨大な松の廊下、現物そっくりに作ったそうですが、その空虚な風が吹き抜けるような冒頭のシーンに、この2大戦艦と同じ運命を感じてしまいます。この映画で表現されている思想は今の時代には受け入れられないものですから、その点は割引して見ないといけません。思想的に許せないから駄目だと言っては、この映画のために頑張った人たちに失礼だと思いました。

開戦直前の封切ということを知って見ていたので、大石内蔵助が日米開戦に反対の立場を取りつつも真珠湾攻撃を指導する山本五十六、いきり立つ義士たちが陸軍若手将校、吉良上野介(演じている三桝万豊は三桝豊の改名らしい)が米国軍人、打ち入りが真珠湾攻撃に見えてしまった。
06.11.04 NFC
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残菊物語

2006-11-14 | 邦画
残菊物語  ☆☆☆
1939.10.10 松竹、白黒、普通サイズ
監督:溝口健二、脚本:依田義賢、原作:村松梢風
出演:花柳章太郎、森赫子、高田浩吉

セットだと思うんですが、夜の土手を歩くお徳と菊之助のシーンは、
子供を抱いたお徳が菊乃助に、控えめに意見をする場面です。
通りすぎる通行人や物売りとすれ違いながら、風鈴を買ったりして、
ゆっくりと、間合いをとって会話が進んで行きます。
2人のなれそめの、恋のからまりあいを、土手の様な所を下から、
ゆっくりと落ち着いた横移動の長回しで追いかけて行きす。

義理のお父さんに謝る菊之助は、それでも受け入れられず檄昂し、
出て行きそうになる所を、隣の部屋でおじさんおばさんになだめられ、
もう一度と義理の父に向かうのですが、すぐに言い争い、
バタンと音を立てて出ていってしまいます。出て行った後の
開いた障子の跡を見るおじさんおばさんの場面まで、
ダイナミックに動くカメラアングルの長回しで、
すっと続く長い緊張を、滑らかに表現しています。

歌舞伎興行の宣伝のため、屋形船の先頭で、菊之助は
御ひいきに向かって、大きい身振りで大きく両手を広げ、そして
何度も何度もお辞儀をし、お礼をしています。
どうもありがとう、どうもありがとう、
どうもありがとう、
お徳、どうもありがとう。
屋形船はゆっくりと進んで行きます。

森赫子(かくこ)の純情な声質は、菊之助の人生だけでなく、
映画全体の純情さを支え、
また、主役の花柳章太郎の端整さは、
映画にきっちりした秩序を与えていました。

長回しが特徴の、長回しで有名な映画だそうです。
06.11.04 NFC
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