二銭銅貨

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愛怨峡

2006-11-13 | 邦画
愛怨峡  ☆☆
1937.06.17 新興キネマ、白黒、普通サイズ
監督:溝口健二、脚本:依田義賢、溝口健二、原作:川口松太郎
出演:山路ふみ子、河津清三郎、清水将夫

明るく、てきぱきと洗濯をしている山路ふみ子に、
謝罪する元夫の清水将夫は、人を踏みつけにしたくせに、
考えが甘いし、それに相変わらずの意気地なし。
きっぱりと、ばっさりと、洗濯物を干しながら、
これを切り捨てる山路ふみ子は強い。
鋼のように強い心もち。子を思う母の気持ち。

子供を里親に預ける山路ふみ子。
別れがたく、忘れがたく、別れを伸ばしに伸ばします。
心も空気も寂しく寒く、ぼうやを忘れがたく。

山路ふみ子と河津清三郎の漫才がうまくて、
本当にその道のプロかと思ってしまう。戦前の漫才も、
ちょっと前までの漫才と同じようなスタイルだったんだと
思って感心してしまった。

トルストイの「復活」をベースにした物語。
06.11.03 NFC
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滝の白糸

2006-11-12 | 邦画
滝の白糸  ☆☆
1933.06.01 入江プロダクション、白黒、無声、普通サイズ
監督:溝口健二、
脚本:東坊城恭長、館岡謙之助、増田真二、清涼卓明、
原作:泉鏡花「義血侠血」
出演:入江たか子、岡田時彦、村田宏寿、菅井一郎、浦辺粂子
   見明凡太郎、滝鈴子

滝の白糸を演ずる入江たか子の自慢そうな、楽しそうな水芸の場面、
満面に笑みをたたえて、両手を広げ、水を出しています。
最後に水が噴水のようにワーッと噴出す場面では、
画面の中の観客達は大喜びで、大拍手が来ます。

自信があって楽しくて、幸福な日々の白糸の滝は強気です。
押して押して押しまくります。可愛がって下さいと言われる
岡田時彦の方はたじたじです。

新任の裁判官のところに出頭する滝の白糸。
驚いて、ずーっと後ずさりをし、白い汚れた壁の前に立つ。
汚れた顔、汚れた衣服、すさんだ心、ズタズタな気持ち。
哀れとも、恐怖とも、薄幸とも、取れる一瞬に、
幸福で、純粋で、汚れの無い、無垢な心を見るのです。

この新任の裁判官の所へ出頭する3分ほどの場面について、デジタル画像処理によるノイズ除去を行ったフィルムでの上映が行われた。冒頭に処理前と処理後の比較画像が流され、かなり大きな釣り針のようなノイズが綺麗に消えていた。コンピュータでの自動処理は難しいので、かなり手作業が入っているのではないかと思われる。基本的に大きなノイズを取るだけで、細かいノイズや画質の劣化まではいじっていないようです。

弁士:澤登翠
06.11.05 NFC
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愛の町

2006-11-05 | 邦画
愛の町  ☆☆
1928.08.31 日活、白黒、無声、普通サイズ
監督:田坂具隆、脚本:山本嘉次郎、原作:エクトル・マアロウ
出演:夏川静江、三桝豊、南部章、見明凡太郎

洋上に、白く薄く霞のかかった客船は、
中国から日本への航海の旅の途中のゆっくりとした佇まい。
船室の病床に伏せる母を看病する輝子の気持ちをそのままに、
やがて船窓からは日本の山々が現れ出て来ます。
始めての日本は輝子をどうもてなしてくれるのでしょう?

日本の山々に囲まれた田舎道を歩く輝子は
足が痛くなってきています。
でも、後ろから来た若い男に抜かれてなるものかと、
元気を取り戻して、もう一度頑張って
なんとか勢い良く歩き出します。
勝気で勇ましい輝子役はまっすぐな眼、
輝く眼をした夏川静江です。何かを訴えるように、
大きく強くまっすぐに前を見詰める純粋な眼です。

重い荷車を必死で押していく夏川静江は
よろけながらも健気に必死でがんばります。
倒れても起き上がり、罵声にも我慢しながら、
1つの目的に向かって頑張って頑張って荷車を押していきます。

明るく輝く思いのするこのサイレント映画は
大正デモクラシイの終りの頃、
軍国主義の始まる前に作られた元気の良い作品です。
まっすぐで純真な夏川静江の印象はこの物語に良く合っています。
エクトル・マロの「家なき娘」、少年少女文学の翻案ですから、
純真で純粋なところが核になりますが、
明るい社会派的な面もこの映画の重要な構成要素です。

宇宙人のような、クリスマスキャロルのスクルージを思わせる
爺さん役の三桝豊のギクシャクした芝居も、
この老人のひねくり曲がった心の内をうまく表現しています。
これが、まるで宇宙人のような芝居で印象的であったことも、
この映画に彩りを添えました。

上映は、弁士と伴奏付きでしたが、
この映画の明るさと強さ、輝子の健気さと純真さを表現するのに、
良く役立っていました。

輝子の輝き、夏川静江の輝きが印象に残るのでした。

弁士:斎藤裕子、
フルート:鈴木真紀子、ギター:湯浅ジョウイチ
06.10.28 NFC
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下町の太陽

2006-11-01 | 邦画
下町の太陽  ☆☆☆
1963.04.18 松竹、白黒、横長サイズ
監督・脚本:山田洋次、脚本:不破三雄、熊谷勲
出演:倍賞千恵子、勝呂誉、早川保、柳沢譲二、藤原釜足、石川進

下町大好き。

下町の太陽、
元気な子役の柳沢譲二、
まじめな勝呂誉、
健気な倍賞千恵子、
町内の人々はみんな気がいい、
夜、チンチン電車に乗って帰る勝呂誉を送る倍賞千恵子、
わるさを見つかって2人で疾走して逃げる勝呂誉と柳沢譲二、
鉄工所で働く勝呂誉と溶けた鉄、
不良仲間の石川進のつっぱりと健気さ、
藤原釜足のがんこ、
土手で話合う早川保と倍賞千恵子、
隅田川のやさしさ、
土手のおおらかさ、
下町のすみやすさ、
雑草、
人々、
空、
太陽。

下町大好き。

「しーたまーちいのー...」という、倍賞千恵子のヒット曲がベースになってできた映画。土手を倍賞千恵子が大きな口をあけて、歌いながら歩きます。全体として「男はつらいよ」に雰囲気が似て、その準備的映画ともいうべき雰囲気の映画。

土手で2人が話合う場面では、2人の仲を暗示するように、会話の最中に上空をUコンの模型飛行機が飛んで邪魔します。Uコンは、いわばひも付きのエンジン付き飛行機で、ラジコン飛行機と同じなのですが、無線では無く、紐でコントロールする模型飛行機です。紐でつながっていますから、当然、操縦者を中心にしてぐるぐる円を描きます。映画では、その機体は出て来ませんが、定期的なエンジンのうなり音と模型飛行機の影が入ります。それで会話の緊迫感、イライラした感じを出しています。
05.12.11 シネスイッチ銀座
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