一概に「オーディオマニア」と言ってもピンからきりまである。
一般には「高価な装置」を持っている人ほど「ハイクラス」なマニアと見られているが、私は違う見方をしている。装置ではなく「オーナー」そのものの「資質」(スキル)で分類するのがより実情に近いと思っている。
具体的には以下の様に分類している。
1)ビギナークラス・・・オーディオを初めて10年未満の方。
2)ジュニアクラス・・・自分でコンポーネントの組合せが出来、接続関係も自分で出来る20年未満の方。
3)ミドルクラス・・・SPユニットを組み合わせてシステムが作れるスキルがあり、20年以上継続して「音楽」を聴き続けている方。(ここからが本来のマニアである)
4)ハイクラス・・・SPのセッティング術やアンプやSPの組み合わせのスキルが多彩な方。
5)スーパークラス・・・再生する音のバランスや音色のコントロールが自由自在に出来る上に自分の目指すサウンドイメージが描け実践できる方。
このクラス分けで重要な経験値が有る。それは「音楽をオーディオで楽しんで20年以上の経験」が必要な事だ。
「音を聞き分けコントロールする」術を得るには「耳」(感性)の鍛錬が必須である。これはまさに「職人技」であり、人間の耳にかなう測定器は存在しない。この感性を養うには少なくとも「毎日聴いて20年以上の時間」が必要なのである。20年以下の方がどんなにあがいてもこの「耳」は出来ない。
30歳位の方が数千万円のシステムを持っていたとしても、単なる散在をしたに過ぎない訳で出てくるサウンドもその装置に振り回されて出ている音である。また老齢で高級品がゴロゴロあっても「にわかオーディオマニア」ではどうにもならないものである。若い時から「継続」して経験した人だけが持つ「感性」(耳)がないとスーパークラスにはなれないのである。
装置の話だが、メーカー製で2000千万円以上かけた装置と自作の100万円の装置とでは「金額と音質」は正比例」しない。中には逆転するケースが出てくる。それがスーパークラスの実力だ。
例えばAと言うアンプの音の評価をしているのに、コメントは電源ケーブルの事を言っているとしか思えない文章が多々ある、本人が知らない(判らない)で言っている訳で、単純な「思い込み」の評価を鵜呑みには出来ない。
評論家の言葉にも「うそ・誘導」が含まれる事も承知しておかなければならない。過去40年の評論家の言動は「メーカーの商品礼賛」で有り、「本音」は別の所にあるのではないか?と思っています。
事実SPは進歩していると言えるか?評論家はこぞって礼賛した文章を書いている。新しい商品ほど一見進化しているように思えるが、私にはとてもそうは思えない。私の場合どんどん古いユニットに向かっているのだ。性能の高い物を探すと古いものに行ってしまう。JBLならハーツフィールドの時代。それ以前はメンテとユニットの数、価格の面で手が出せない。
今なお「WE」(ウエスタン)の装置が最高だと言うベテランマニア(スーパークラス)のお話が良く理解できる。
この頃から「コストダウン・大量生産」の意識はあったみたいだが、測定器が進歩していなかったので「過剰品質」の部分が多いのだ。それが「音質」に大いにきいている。当時の技術で引き出せなかった能力が現在の技術と融合させるととんでもない性能を発揮する。
測定器は「コストダウンと量産」の為の道具であり、「音質」を測る道具ではない。その時々のメーカーや作り手達の都合の良いように変えられてきている。まだ「音質」を計る「測定器」はないのである。「人間の耳の勝る測定器なし」が私の実感である。
測定器の使い方の一部を紹介しよう。Aという電子部品が1回目の測定でNGであった。そこで測定器を「校正」して図ったらOKであった。だからこの電子部品は「良品」であると出荷される。JISにおける電子部品の推奨規格は定格の20%前後で使うようにすすめられている。
前述の件は1例では有るが、規格に対してOKかNGの判定で出荷され、アンプやCDP等に使われる。しかもその出荷検査(定格)の20%程度で使うように回路設計されるのであるから、形の上では非常に過剰品質な使い方になっている。ここまでは誰でも簡単に理解できるだろう。問題はその根底に有る。
何故その規格なのか?・・・はじめから音質など無視(評価項目に入っていない)が問題なのである。測定器も都合の良いようにしか作られないし、使われ方をしない。
音質についての評価項目も良く判っていないし、評価方法も確立されていない。
それは我々が使っているオーディオ装置にも当てはまる事です。だから聴く「耳」が全ての源なのです。この「耳」は簡単に獲得できるほど生易しくないのです。自分ではわかったつもりでも判っていない。厄介なものなのです。
高級な装置でも安い装置でも「それなり」に音を出してしまう。そこがオーディオの難しさで、そこにオーナーの「魂」が入れば、価格の差をひっくり返してしまう事もあながち不可能ではない。だからオーナーのスキルや感性の成長が重要なのです。
その点に的を絞って「クラス分け」をせざるを得ないのです。
そのクラスを把握できてはじめてお客様にアドバイスが出来るのです。中には逆にアドバイスをしてくれるお客様も現れてくるでしょう。