続きです。
鶏の絵馬に関する伝説は全国にあります。
一番ポピュラーな話だと「子供が百日咳に罹ったら、親が神社へ行って鶏の絵馬を黙って持って来る。その絵馬を逆さに吊るし水をかける。それで子供の百日咳が治る。治ったらその絵馬と新しい鶏の絵馬を持って、黙って神社に括りつけてくる」っと言うものです。
百日咳は短い咳がケフォ、ケフォ、ケフォ、ケフォと続くそうで、それが完治するまで100日かかると言われるから百日咳。感染症です。
その百日咳の症状と鶏のコッコッコッコッと言う鳴き声が似ている。だから百日咳と鶏を関連付けたのでしょう。
でも、鶏は庭鳥。庭は人に一番近く、一番大切な境界線。鶏は境界線の神ではないのか。
一般的に鶏は荒神様の使いと言われてます。つまり子供の百日咳は荒神(こうじん)様が起こしている。
百日咳は疱瘡。つまり荒神様は疱瘡神。疱瘡を巻き散らして貰いたくない。百日咳を治して貰いたいから、鶏の絵馬を逆さに吊るして水をかけていると考えられる。
ここで荒神様について説明しるべきなのでしょうが、荒神様は仏教やヒンズー教の教えが入っている。
かなり長くなっちゃいますので、今回は荒神様では無くて神道で考えたいと思います。この荒神様と習合した神道の神は誰なのか。
鶏は庭鳥。つまり庭の神。強いては屋敷神。
摂津一之宮の坐摩(いかすり)神社、大阪城、そして江戸城にも祀られていると聞いていますが、屋敷神に坐摩神が存在します。生井神、福井神、綱長井神、阿須波神、波比岐神の五座神が坐摩神です。この五座神の中に荒神様がいるのか。
鶏の絵馬を逆さに吊るし水をかける。これって拷問です。鶏を逆さに吊るして水をかけるのですから。
生井神、福井神、綱長井神は井戸の神。御井神。つまり水神。
水神を逆さにして水をかける。これって意味があるのか。水神に水をかければ水神は喜ぶのかも知れないが、逆さに吊るしているのはおかしい。この御井神は荒神様と言い切るのは困難でしょう。
残る阿須波神、波比岐神はどうなのか。
この二神の親は大歳神と天知迦流美豆姫。境界神であり疱瘡神でもある。阿須波神・波比岐神は疱瘡神の系列である。百日咳に繋がる。
この疱瘡神でもある二神を逆さに吊るして水をかけてどうなるのか。
この二神は十人兄弟ですが、その中に庭津日神、庭高津日神が存在する。庭神である。
同神であるとは断言できないが、鬼渡神社に阿須波神、波比岐神が祀られているのは、庭神の性格があるからだと思える。
そして荒神様は竈神とされる。阿須波神・波比岐神の兄弟には竈神である奥津彦命・奥津姫命が存在する。そして阿須波神・波比岐神を竈神として祀っている神社も存在する。
奥津彦命・奥津姫命と同神とはこれも断言出来ないが、竈神としての性格を有していると思える。
続く。