令和5年1月10日
あなたの国民健康保険料は高い?安い?
地域間格差3倍超の現実
国民のだれもが健康保険に加入する「国民皆保険制度」のもと、自営業者や高齢者が加入する国民健康保険(国保)。
実は、住んでいる市町村によって加入者が支払う保険料が異なることはあまり知られていない。
地域ごとの所得や医療の水準などを加味した算定方法であることが主な原因だ。
京都府の場合は市町村格差が1・8倍近くにのぼっている。
府は保険料の水準統一をめざし検討を進めるが、先行きは不透明だ。
最高は年間19万円
令和4年12月12日、京都市内で開かれた京都府の国民健康保険運営協議会。
3年度の決算が報告されたが、資料には市町村ごとに異なる保険料が記されていた。
年間の平均保険料が最も高額なのは、全26市町村の中で唯一の10万円台となる久御山町の10万2158円。
一方、最低は府北部にある伊根町の5万7796円で、同じ国保にもかかわらず、府内の最大格差は1・76倍と差が顕著だ。
府北部など医療資源が乏しい地域では医療機関に行く回数や医療費が少ないといった理由で保険料が安くなるケースがある一方、
保険料が最高の久御山町などの場合は加入者の所得水準が高いため保険料も高くなっているという。
全国では、平成29年度決算ベースで、最高は北海道天塩町の年間約19万円、最低は東京都御蔵島村の約5万6千円で、格差は3倍を超えた。
赤字体質避けられず
国は平成30年度に財政運営の主体を市町村から都道府県に移管させ、
財政運営の規模を広げることで保険料の安定を図っているが、地域間格差は解消できていないのが現状だ。
京都府の現行の国保保険料徴収は医療費や世帯数、世帯の構成人数、所得水準などを基に、府が市町村ごとに「納付金」を設定。
これを基に、市町村が保険料を決めて加入者から徴収している。
府の令和3年度決算では、納付金は歳入(2368億円)の26%に当たる615億2千万円に過ぎず、
残りは国の補助金などに依存する。
国保加入者が自営業者や年金生活者、非正規雇用者らで構成され、低所得者層が多いという構造上、
赤字体質は避けられないためだ。
また、納付金自体にもすでに市町村の予算からの繰り入れ、基金の取り崩しなどが入っており、
こうした複雑な財政も格差が解消しない一因になっている。
水準統一に向けて
こうした中、国保加入者は年々減少し、高齢化が進む。
昭和13年の発足時は農林水産業従事者が多かったために加入者が多く、
昭和40年代には他の健康保険を含めた全体の半数以上を占めたが、産業構造の変化で無職の年金生活者が中心になった。
近年は企業を退職した人が後期高齢者医療制度(75歳以上)に入るまでのつなぎとして加入しており、
令和2年度の65~74歳の占める割合は44・6%となった。
このような状況を踏まえ、都道府県が進めるのが「保険料水準の統一」だ。
各都道府県内でどの市町村に住んでいても、所得、世帯構成などの条件が同じなら、
ほとんど同じ保険料で加入でき、不公平感解消にもつながる。
近畿で先行して平成27年度ごろから検討に入った大阪府は、平成30年度に統一化。
市町村で少しずつ保険料率を調整しながら、令和6年度の完全統一を目指している。
大阪府の担当者は「人口が少なく、高齢者が多い市町村は保険料が上がりやすい。
府の全域で支える形にしなければ、国保がもたない」と話す。
京都府も保険料水準の統一の検討に入っているが、完全に統一するか、
部分的にとどめるかなど方向性をこれから定める段階で、具体的な展望が開けるにはまだ時間がかかりそうだ。