
佐佐木信綱『思草』が届きました。
地震の前に頼んであったものです。
明治36年刊の初版にはべらぼうな値段がついていたので
あきらめて、38年刊の再版、2000円です。
この見開きに「園山文庫」の朱印がある本は、
関東大震災を経験した本です。
第二次世界大戦にも生き残った本です。
結社のホームページ掲示板にO野さんが書きこんでいらっしゃいますが、
信綱先生ご自身も関東大震災を経験され、
『豊旗雲』に「大震劫火」28首を残されています。
・まざまざと天変地異を見るものか斯くすさまじき日にあふものか(九月一日)
・天をひたす炎の波のただ中に血の色なせりかなしき太陽
・空をやく炎のうづの上にしてしづかなる月の悲しかりけり
・もだをりて親子はらから夜をあかすせばき芝生にこほろぎ鳴くも
・鶏の夜声しきりに闇に響きむくつけき夜はややくだちたり
・夜は明けぬ庭につどへる家人が命ありし幸に涙おちけり(二日)
・おそろしみあかしし朝の目にしみて芙蓉の花の赤きもかなし
・蝋燭の息づくもとに親子ゐてつかれ極まりいふ言もなし
○
・いかに堪へいかさまにふるひたつべきと試の日は我らにぞこし
・うせし者帰り来しごと水道の水いでたりとかたへにつどふ
・須田町(ちやう)の焦土のよるの霧雨に電車まつ群の一人なりけり
帝都復興
・大き都よみがへりたり人間の力おもふに涙こぼるる
大震災後大学の仮教室にて
・バラックの教室の屋の上(へ)うつ雨の音をはげしみ声つかれたり