ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「アフガンの仏像は、自ら壊れた」 モフセン・マフマルバフ

2008-05-15 12:10:58 | 
無関心は、ある意味無知であるより恥ずかしい。

表題の本の正しいタイトルは「アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ」です。長すぎたので、端折って記載しました。

この本を書店で見かけたのは4~5年前だが、当時はイスラム原理主義者が貴重な文化遺産を破壊したことを強弁しているだけだろうと思い込み、手に取ることさえしなかった。

ひどい勘違いだった。

この本は著作というよりも、マフマルバフ監督の映画上演後の談話をまとめたものだ。マフマルバフはイランでは屈指の人気映画監督だ。アフガニスタンは、古来より隣国イランと関係が深い。

イラン人の視点から見た隣国アフガニスタンの現状は悲惨の一言に尽きる。冷戦とソ連のアフガン侵略。その後の空白状態を利用したパキスタンとイスラム原理主義者タリバン。近代的国家ではないアフガンは、部族連合に過ぎず、険しい山々が近代化を阻み、相次ぐ戦乱により、餓死者が続出している現状。国外への逃亡と収容所暮らしの悲惨さは、アルカイーダの暗躍により、更に困窮を極める。

おそらく現時点では、北朝鮮と並ぶぐらいの世界最低レベルの生活水準だと思われる。石油もなければ、核兵器もない現実が、世界を無関心のままに安住させる。これほどの悲惨さがあるにもかかわらず、報道されることもなく、援助もほとんどなく、餓死病死が拡がり続ける。

皮肉なことに、アルカイーダへの米軍の掃討作戦が世界の関心を呼び、麻薬の生産と輸出だけがアフガンに富をもたらす。岸壁に掘られた巨大な仏像が、この現状を恥じて崩れたのだと皮肉に語るマフマルバフ監督の言は、死に行く幼い餓死者を腕に抱えたものだけが語りうる。

正直、私に出来ることはほとんどないが、それでももう少し関心を持とうと思う。ちなみに米軍の活動を側面から自衛隊が支援しているのだから、日本はまったく無関係でないことは、言うまでもない。
コメント (4)
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