ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「醜い中国人」 柏楊

2008-05-12 14:45:29 | 
4月の最終日、朝日新聞の死亡欄に、台湾の柏楊氏の死去が記載されていた。

私にとっては魯迅以降、最も中国に対して厳しい指摘を投げかけた中国人であった。まだ台湾を蒋介石が支配していた頃から、国民党政権に対して厳しい論陣を張り、それゆえに投獄の憂き目にあったこともある苦労人でもある。

表題の本で、柏楊氏が語る中国4000年の愚かさは、辛辣であると同時に、哀しい指摘でもあった。決して自らの誤りを認めず、反省をすることもなく、ひたすら自己の面子の保身にのみに走る中国人の精神構造を鋭く抉り出した。

アメリカや日本に居れば、西側社会のマナーを学び、身につけるのに、帰国した途端マナーなど忘れ去り、自己中心的傲慢さに立ち戻る中国人の振る舞いに呆れると同時に、変われない中国に絶望を覚える。

1980年頃までは、日本では中国を賞賛し、讃えることが文化人の嗜みだとされた風潮があった。それだけに、当の中国人自身が指弾した中国の愚かさは衝撃的であった。

現在、日本にとって中国との関係は経済を中心に、きわめて密接なものとなっている。しかし、交流が進めば進むほど、トラブルが頻発しているのも事実だ。

経済が急成長して、傲慢さにお墨付きを得た中国人は、ますます唯我独尊を増長させると思う。出来るなら、あまり関りたくないが、そうも言ってられない。アジアを代表する大国同士、これからも衝突と緩和を繰り返すことになるだろう。

私は、台湾が共産中国の近代化に重要な役割を果たすのではないかと予想していた。共産中国よりもはるかに西側との交流が長いがゆえに台湾は、古い中国の愚かさを自覚している。悪い意味での伝統的中国人であり続ける大陸の中国に対し、緩衝材的役割を果たせるのではないかと期待していた。

緩衝材どころか、大陸に進出した台湾人は、西側社会へのアドバイザーとしての役割を担っているかもしれない。直接、大陸に日本企業が進出するより、台湾を介在させて進出したほうが望ましいのではないかと考えていた。

しかし、私の考えは甘かった。当の台湾人でさえ、大陸の中国の強固な愚かさに苦労している。それどころか、近代的経済人としてのマナーを身につけたはずの若い台湾人が、いつのまにやら伝統的中国社会の頑迷さに取り付かれることさえあるらしい。

改めて、柏楊氏の指摘の厳しさを思い知らされた気分です。それにつけても残念な訃報でした。謹んでご冥福をお祈りいたします。
コメント (2)
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