先だって、漫画「コブラ」を再読したら、急にウルフガイ・シリーズを再読したくなった。
以前、「死霊狩り」を取り上げた際にも書いたが、私が十代の頃最も失望した作家が表題の作者・平井和正だ。人間に絶望したあまり宗教に走り、一時期はGLAのゴーストライターのようなことをしていたらしい。現在は団体を離れ、再び作家としての活動を再開しているが、私はどうも読む気になれない。失望が大きすぎた。
だからといって、ウルフガイ・シリーズの面白さが減じるわけではない。いや、やっぱり面白かった。少なくとも、宗教に走る前までの狼男は。より正確に言えば、狼男に変身する前の、しがないルャ宴Cター・犬神明のキャラクターが面白い。
知らない人のために一応書いておくと、ウルフガイ・シリーズには二つある。謎の高校生・犬神明の物語と、やせこけたジャン・ポール・ベルモンドといった風情のルポライター・犬神明の物語だ。便宜上、後者をアダルト・ウルフガイと呼ぶ。ややこしいことに、高校生の犬神明が主人公のウルフガイ・シリーズにはルャ宴Cター神明が登場する。どうも、これがアダルト・ウルフガイのもう一つの姿らしい。作者はこれを、多次元世界の物語などと述べていたが、異なる雑誌に時期を微妙にずらして連載していた弊害だと思う。
ちなみに表題の作品は、アダルトウルフガイの第一作に当たる。一見ボロボロのブルーバードに乗った、咥えタバコが妙に似合う、くたびれた中年男性だが、実は狼男である。おんぼろ車も、実は高性能エンジンにチェーンアップした羊の皮を被った狼の如きスーパーカーだ。
怪しい事件に首を突っ込み、ヤクザやチンピラに滅多クソに痛めつけられるが、満月になると異常な怪力をふるって、強引に事件を解決してしまう。新月期には、普通の人間並みに弱くなるが、月が満ちるたびに強くなる妙なヒーローだった。
人間をバカにしつつ、その人間の引き起こしたゴタゴタに首を突っ込む。不死身の超人でありながら、傷つきやすい心根を持ち、それを軽薄な振る舞いで隠し通す。
初めて読んだのは、私が中学生の頃だが、本当にはまった。勉強は当然に放り出したが、好きな夜遊びさえ我慢して、ウルフガイの活躍に読み痴れた。夢中だったと思う。
それだけに、ウルフガイが神の愛を語りだした時は、失望を禁じえなかった。そりゃないだろうと、吐き捨てた。宗教に憎しみを覚えたのは、この時が最初だと思う。神様、あんまりだと月に向かって遠吠えしたくなったもんだ。ム~ン!
正直、この背信を許す気には、まだなれない。だから新作も読まないが、もう少し年をとって、寛容な老人にでもなったら、読んでやろうかと思っている。
小説家の先生方、愛読者を裏切ると、後が怖いですぞ。
以前、「死霊狩り」を取り上げた際にも書いたが、私が十代の頃最も失望した作家が表題の作者・平井和正だ。人間に絶望したあまり宗教に走り、一時期はGLAのゴーストライターのようなことをしていたらしい。現在は団体を離れ、再び作家としての活動を再開しているが、私はどうも読む気になれない。失望が大きすぎた。
だからといって、ウルフガイ・シリーズの面白さが減じるわけではない。いや、やっぱり面白かった。少なくとも、宗教に走る前までの狼男は。より正確に言えば、狼男に変身する前の、しがないルャ宴Cター・犬神明のキャラクターが面白い。
知らない人のために一応書いておくと、ウルフガイ・シリーズには二つある。謎の高校生・犬神明の物語と、やせこけたジャン・ポール・ベルモンドといった風情のルポライター・犬神明の物語だ。便宜上、後者をアダルト・ウルフガイと呼ぶ。ややこしいことに、高校生の犬神明が主人公のウルフガイ・シリーズにはルャ宴Cター神明が登場する。どうも、これがアダルト・ウルフガイのもう一つの姿らしい。作者はこれを、多次元世界の物語などと述べていたが、異なる雑誌に時期を微妙にずらして連載していた弊害だと思う。
ちなみに表題の作品は、アダルトウルフガイの第一作に当たる。一見ボロボロのブルーバードに乗った、咥えタバコが妙に似合う、くたびれた中年男性だが、実は狼男である。おんぼろ車も、実は高性能エンジンにチェーンアップした羊の皮を被った狼の如きスーパーカーだ。
怪しい事件に首を突っ込み、ヤクザやチンピラに滅多クソに痛めつけられるが、満月になると異常な怪力をふるって、強引に事件を解決してしまう。新月期には、普通の人間並みに弱くなるが、月が満ちるたびに強くなる妙なヒーローだった。
人間をバカにしつつ、その人間の引き起こしたゴタゴタに首を突っ込む。不死身の超人でありながら、傷つきやすい心根を持ち、それを軽薄な振る舞いで隠し通す。
初めて読んだのは、私が中学生の頃だが、本当にはまった。勉強は当然に放り出したが、好きな夜遊びさえ我慢して、ウルフガイの活躍に読み痴れた。夢中だったと思う。
それだけに、ウルフガイが神の愛を語りだした時は、失望を禁じえなかった。そりゃないだろうと、吐き捨てた。宗教に憎しみを覚えたのは、この時が最初だと思う。神様、あんまりだと月に向かって遠吠えしたくなったもんだ。ム~ン!
正直、この背信を許す気には、まだなれない。だから新作も読まないが、もう少し年をとって、寛容な老人にでもなったら、読んでやろうかと思っている。
小説家の先生方、愛読者を裏切ると、後が怖いですぞ。