ヌマンタの書斎

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クライスラーの破綻

2009-05-21 12:13:00 | 社会・政治・一般
大は小をかねる、は嘘ではない。

嘘ではないと思うが、全てではないとも思う。20世紀は自動車の世紀でもあり、自動車メーカーを代表するアメリカBIG3の一角を担うクライスラーが遂に破綻した。

過去に何度か危機はあったが、実際に破綻したのは今回が初めてだ。ほんの十年前までには、SUVの大ヒットで高収益を上げる優良会社であった。

皮肉なことに、そのSUV車が足を引っ張った。この時代に高価格、高燃費では売れるはずもない。ダイムラーとの合併もうまくいかず、ガソリン価格の高騰で止めを刺された。

これはクライスラーに限らないが、大型車で高収益を上げている会社は、小型車造りが下手だ。80年代、日本の小型車攻勢に悩まされたGMは、巨額の開発費用を投じてサターンを開発したが、見事に頓挫した。

当初、あのGMが作った小型車というので戦々恐々としていた日本メーカーは、その実物を見て安堵した。いや、失笑すら漏らした。あまりに大雑把な造りに呆れてしまったからだ。

あのダイムラーですら小型車は得意ではない。ダイムラーが売り出したAタイプのベンツは、デザインがスマートで私ですら気になったぐらいだ。事実7年前車を買い替える際、候補車の一台であり、ディーラーで試乗させてもらった。

小さいながらも、しっかりとした造りはドアを閉じる音からも分る。もみ手の営業を横に乗せての短時間の運転でも、その直進安定性の優秀さは分った。ただ、こまわりが利かない。これには驚いた。ベンツという車はハンドルの切れがよく、同じ大きさの国産車(クラウンやセドリック)よりも取り回しがいいことを覚えていたので、このAタイプの不器用さに呆れた。また、国産車(ヴィッツやフィット)ほど使いかってが良くなく、値段のわりに使えない車だと失望した。

その後、クラスチェンジしたAタイプはだいぶ改善したらしいが、値段を考えると購入は躊躇わざる得ない。同じ小型車ならば、VWのほうがはるかに出来がいいと思う。

やはり大型車を作りなれているメーカーには、小型車は難しいようだ。これは国産メーカーでも同じで、トヨタも日産も小型車は造っても、軽自動車は造らない。あの値段で利益を出す難しさが分っているのだろう。だからこそ、トヨタは系列のダイハツに任せ、日産はOEMに甘んじる。これは正しい判断だと思う。

一方、アメリカのフォードは小型車は系列会社に任せる戦略をとる。幸いヨーロッパ・フォードという小型車で実績のある会社があるため、今回の危機もうまく乗り切れそうだ。

残るGMは、労働組合というお荷物があるため、おそらく破綻処理以外に再生の道はないと思う。しかし、CNNの番組を観ていると、意外なぐらいアメリカ人はGMを信じている。経済アナリストも、アメリカ人はいずれ大型車に戻ると断言する。燃費のいいハイブリッド車なんて気取った連中の乗るもので、ほんとうはデカくてパワフルな大型車が好きなんだと断言する。

これはアメリカの国民性といってもよく、私も一面の事実であろうと思う。思うが、ガソリンという化石燃料の枯渇が予想される今世紀に、未来を見据えた考えではないとも思う。

事実、現在アメリカでは鉄道建設計画が目白押しだ。エネルギーコストが十分の一で済む鉄道は、将来の交通の大きな柱だと、当のアメリカが判断しているのだ。

しかしながら、一般庶民の感情は違う。やっぱり大型車が好きなのだと私も思う。今回のサブプライム問題に端を発した経済危機がなかったら、いまでも燃費の悪い大型車に乗り続けていると言わざるえない。

人の意識とは、かくも頑固で変りづらいものなのだろう。
コメント
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