ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

人に棲みつくカビの話 宮治誠

2012-09-03 17:15:00 | 

私としては、お化けよりも魔物よりも、よっぽど怖い。

なにがって、カビである。

お恥ずかしい話だが、私はあまり掃除が得意でない。ある程度、部屋が乱雑なほうが気持ちが落ち着くとさえ思っている。実際、寝っころがって本を読むのが好きであり、寝床から手を伸ばした先に本の山があることに幸せさえ感じている。

そんな怠け者の私だが、近年は以前よりも小まめに掃除を心がけている。理由は花粉症にある。事務所の近くの医院で、アレルギー抗体の検査をしてもらったところ、杉花粉とブタクサの花粉に対してアレルギー反応があることが分かった。

問題は三番目のハウスダストの項目にもチェックがかかっていたことだ。どうやらダニもダメらしい。調べてみると、ダニという奴は人体から出る老廃物(フケや垢)以外にカビを食べるらしい。

医者に言わせると、寝室と風呂場に気を付けろとの事。気になって部屋の隅とかを調べると、埃がたまっている。だから鼻水が止まらないのかと納得し、現在は以前より掃除機をかけるようになった。

驚いたのは風呂場で、わりと綺麗にしているつもりだったが、マットなどをひっくり返すと裏が黒ずんでいる。これがカビなのだろう。塩素系の洗剤を買ってきて、2か月に一度は大々的に掃除している。

たかがカビと侮るなかれ。

表題の本では、カビの研究をしている第一線の学者が分かりやすくカビの病害を説明してくれる。通気性の良い伝統的な家屋から、気密性の高い西欧型の家屋になって以降、急速に増えてきたのがカビによる疾病だ。

カビの元というか、カビの胞子は地球上、至る所に浮遊している。健康な人間ならば、カビを体内に取り込んでも弊害はない。しかし、病気や高齢化して免疫力が衰えた状態では、カビは人体を侵食する恐るべき病原体となる。

HIV患者によく見られたカンジタ菌などがその典型だが、国際化が進んだ今日では、日本には見られなかった海外からのカビによる病害が密かに増えてきていると、本書で警告されている。

あな、恐ろしや。

私がかつて苦しんだ難病は、ある種の自己免疫疾患でもあるので、その治療に免疫抑制剤を使用することがある。実際、合計2年余の入院生活中、ひどい時は免疫力が健常者の6割程度であった。自宅療養に切り替えてからも、免疫力が8割を超えるのに8年以上かかった。

この怖さは、経験してみなかれば分からないと思う。外出して電車に乗り、同じ車両に風邪を引いてクシャミをする人がいれば、私はその日の夕刻には発熱して寝込んでいた。浮「ほどに感染症に抵抗力がなくなっていた。

また入院中に、退院間近で無断外出中に風邪をもらって、あっというまに肺炎に移行して亡くなった同病の人も知っている。免疫力が低下している人間にとって、感染症ほど恐ろしいものはない。

本当は部屋が多少汚れているぐらい、屁でもないくらい無精な私なのだが、感染症怖さに部屋の掃除をしております。臆病に過ぎるかもしれないけど、あたしゃお化けや物の怪よりも感染症が怖いです。

コメント (2)
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