ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

人生画力対決 西原理恵子

2012-09-11 15:34:00 | 

悪食。

以前から思っていたが、西原理恵子って悪食だ。いや、食べ物に関してではなく、人間に対してだ。だいたい、漫画デビューした頃の麻雀雑誌で、おじさん編集者をたぶらかしての作品掲載だった。私が知る限り、麻雀のルールを知らずに、麻雀の漫画を描いた漫画家は西原だけだ。それだけではない。

あの画力で普通の漫画雑誌では採用されるはずもない。にもかかわらず連載までされていた。嘘だと思ったら、西原の「まーじゃんほーろうき」を読んでみればいい。あの絵柄で原稿料をもらっていたというのだから信じがたい。まるで子供の落書き並みなのだから。

ちなみに、デビュー作の「ちくろ幼稚園」は、西原を見出したヤングサンデーの編集部員であった八巻氏が、編集長に無断で登用させたそうだ。たぶん、許可を求めていたら、落とされていたので、これは八巻氏のファイン・プレーとしか言いようがない。

あの下手くそな絵柄を見て、多くの漫画家志望の若者たちが「なんで!?」と悲鳴にも似た疑問を口にしたことだろう。それぐらい下手だった。連載されたのは、きっと編集者をたぶらかしたからだとの陰口が出たのも無理ないと思う。

たぶらかした、というよりも西原の営業努力の成果だと私は思う。この人、昔っから中高年の男性、つまりオジサンたちに取り入るのが上手い。おじさんキラーだと言ってもいいぐらいだが、驚かされるのは、そのオジサンたちが揃いもそろって、一癖二癖ある変わり者ばかりだからだ。

間違っても品行方正で、社会的地位が高い紳士は、西原のターゲットとならない。高須医院長は微妙だが、末井さんといい、山崎たぬドンといい、まともじゃない。そんな変わったおじさんばかりを周囲にはべらす西原を悪食と言わずして、何と呼ぶ。

更に付け加えるなら、この人の漫画はただ絵が下手なだけではない。下手は下手でも、西原にしか描けない下手さなのだ。これを個性と呼ばずして、何と呼ぶ。その個性は、毀誉褒貶の激しい西原の人生の賜物以外の何物でもない。

ところで、あれから二十数年がたった。西原の画力は上がったのか?

本人曰く「上達ではなく、下達した」とのことだが、「私より下手な漫画家はもっといる!」との科白を聞きつけた八巻氏が、では対決してみましょうと言いだして、引くに引けなくなった西原がやる羽目に陥ったらしい。

凄いのは、その対戦相手だ。元々親交のあった「とがしやすたか」はともかく、あの藤子氏まで登場させてしまった。他にも釣りバカ日記の高井氏や、あんぱんまんのやなせ氏まで、その対戦相手に引っ張り出すのだから、西原の営業力は凄い。

しかも、企画を知らずに対決に巻き込まれた高井氏に怒られるも、逆に噛み付き返して漫画のネタにするあたり、無頼派西原の面目躍如といったところだろう。

それにしても、漫画家の先生方がその場で即効で描いた絵のしょぼいこと、しょぼいこと。もう引退しているといっていい藤子氏や高井氏はともかくも、現役バリバリの先生方の絵には爆笑するしかない。

ちなみに私が密かにこの人、性格悪いんじゃないかと疑っている浦沢直樹は、事前に練習して登場(第二巻)。だから上手いんだけど、やっぱこの人、性格悪いわな。その上、あの昼{恵子先生まで引っ張り出すのだら、西原の横暴ぶりには呆れかえる。でも爆笑。

ええ、下らない企画だと思いますよ。でもね、仕事に疲れたなァ、家事したくねぇなァなどとボヤいている時に読むと、馬鹿笑いして、気が付くとやる気が出てくるのが、西原ワールドの不思議なところ。

まァ、西原初心者にはお勧めしませんがね。

コメント (6)
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