ヌマンタの書斎

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軍事帝国中国の最終目的 杉山徹宗

2012-09-26 12:53:00 | 

期待と予測は違うべきだ。

シナのことになると、なぜか将来は分裂するとの予測を述べる識者は多い。これは日本だけでなく欧米にも散見する。たしかにシナの歴史を顧みれば、急成長と拡大の後、地方に軍閥などが出来て中央政権の云うことを聴かずに事実上の分裂状態を招いたことが何度もある。

あるいはシナの民が蛮族と馬鹿にしていたチベット、モンゴル、ツングース、ウィグルなどの異民族の侵略を受けて、シナの大地が分裂統治されたこともある。五胡十六国時代などが典型だ。古来より侵略を招きやすい国柄だともいえる。

つまりシナの大地は、侵略と支配、分裂と統一を繰り返してきた歴史を持つ。それが当たり前の感覚としてシナの民には脳裏に深く刻まれている。

だからこそ、シナを統一させた政府は、まず第一に軍事的優位に立つことを至上の命題と肝に銘じる。それは現在の中国共産党の一党独裁の下で統治されている中華人民共和国でも変わらない。

ところでシナは分裂するだろうか。

私の考えでは、当分分裂することはないと思う。中央政府(北京)の指示に従わいたくない地方政府は、けっこう多いようだし、面従腹背で臨んでいるようにもみえる。しかし、正面切って堂々逆らう地方政府は、現在のところ存在しない。

実のところ、シナの外的状況は決して芳しくない。膨大な国境線でもって対峙するロシアとは、表面上は友好状態にある。しかし、お互い宿敵であることを自覚した上での笑顔の握手なので、空いている手には常にナイフを隠し持つ間柄だ。

実際、経済力を背景に平和的進出をシベリア地方に繰り返すシナには、ロシアは警戒を隠すことは出来ずにいる。シナはシナで、最新の兵装を備えた部隊を中露国境近くに配置し続けている。油断なんて出来やしない。

更に中央アジアには、イスラム系の異民族が数多く存在し、シナにとっては悩みの種以外のなにものでもない。ウィグル人に対する人道無視の拷問的抑圧は、シナ政府が如何に彼らを恐れているかの証しでもある。

そしてチベット、背後にいるインドとの関係も含めて、シナにとっては最も気の抜けない問題でもある。日本人は忘れているが、チベットは五胡十六国の時代から常にシナの宿敵であり、何度も中原の地を侵略され支配されている。

シナ政府はパキスタンを軍事支援することで牽制しているインドは、シナに匹敵する人口大国であり、その潜在的経済力は無視できない。インドとシナは、今もかなりの緊張状態にあり、かなりの兵力を割いて警戒に当たっているのが実情だ。

更にミャンマー、ラオス、ヴェトナムとの関係も気が抜けない。経済こそ華僑たちが握っているが、アメリカをはじめとした西側諸国が着々と進出しており、友好的衛星国とは言いかねる。

そして北朝鮮と韓国。表題の本でも触れられているが、北京政府は絶対に韓国主導での南北統一を認める気はない。歴代のシナ帝国がいずれも難治の地として苦労した朝鮮半島に、友好、敵対を問わず大きな勢力が産まれる事を望むほど、シナ人は暢気ではない。

しかも、東北部には一千万人を超す朝鮮族がいて、彼らを抑えておくためにも統一コリアの実現は望ましくない。北にシナの傀儡政権が出来て、その主導での統一ならともかく、韓国主導の統一なんぞ絶対認めないだろう。

要するにシナの周囲は敵対性国家ばかり。そんな状況下で分裂を望むシナ人なんているわけない。まとまっていなければ、いつ攻め込まれるか分からない。そんな不安を抱えているが故にシナは統一国家であり続ける。

では、シナ人が安心して眠れる日は来るのか。

ある。それがシナの周辺国家が北京政府の支配下に置かれ、少なくても太平洋の西半分がシナの支配下にあり、シナの主張が世界の正義として通用する社会が到来する日だ。そうなってこそ、初めてシナは安心できる。世界に冠たる大中華帝国の成立である。

シナの平和こそが、世界の平和。それがシナ人の世界観。

表題の書は、そんなシナ帝国が如何に軍事力を駆使して、シナ人のための平和を実現するために、如何に努力を重ねているかを記している。いささか、シナ嫌いが甚だしすぎる気もするが、日本のマスコミが報道したがらない事実を上手くまとめているので参考になると思います。

ただね、分裂待望論はともかく、レーザー兵器だの宇宙防衛システムの構築などを語らなければ、もう少し評価は高いのですがねぇ。ちょっと冷静さを欠くと思います。

コメント
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