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ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

ターザンと失われた帝国 エドガー・ライス・バローズ

2012-10-15 12:03:00 | 

現在は不遇なヒーロー、それがターザンだ。

1920年代にアメリカで青少年たちから絶大な人気を博したパルプ・マガジンのヒーローたちの代表格が、スーパーマンとターザンであった。いずれもアニメーションとしてTVで放送されたり、あるいは映画化されたりして、何度もブームとなっている。

だが、近年あまり見かけることがなくなったのがターザンなのだ。

理由はいろいろ考えられるが、ターザンの書かれた時期が黒人に対する差別が普通で、アフリカは暗黒大陸と呼ばれて無知と偏見がまかり通っていた時代であったことが大きく災いしていると考えられる。

誤解を招くといけないが、原作者のエドガー・ライス・バロウズには、白人優位の思想はあっても有色人種を蔑視するような傾向は、あの時代のアメリカ人としては薄いほうだと思う。

むしろ赤褐色の肌への憧れが強い傾向があり、白人の文明を進んだものとしてより批判的な視点であることが、その作品から強く読み取れるほどだ。バロウズの理想はアメリカの南部紳士であり、奴隷の存在を容認しつつも、虐待や蔑視を厭う健全な精神の持ち主であることを重視している。

これはターザン・シリーズに限らないが、火星シリーズ、地底世界ペルシダー・シリーズ、金星シリーズなどでも肌の違う異人種、異星人、あるいはトカゲ人間とか、いろいろと多彩な登場人物が出てくるが、良い奴もいれば悪い奴もいるといった人物設定であり、人種差別的な傾向は少ない人だと私は考えている。

ただ、現代の価値基準からすると、アフリカの黒人を土人と称したり、ターザンをご主人様と呼ばせて白人の優位ぶりを示していたりするような場面は、いささか問題があるのかもしれない。

近年、アメリカでかつてのアメコミ・ヒーローたちの映画が作られ人気を博しているにも関わらず、ターザンが冷遇されているのは、このあたりに原因があるように思う。残念に思うが、もはや白人の国とは言い難いアメリカでは、人種の問題は繊細な問題でもあり、分からなくもない。

しかし、だからといって日本で早川書房がターザン・ブックスを廃版にするのは如何なものかと思う。かつて早川書房は早川SF文庫において、わざわざターザン・ブックスと銘打って大々的に売り出していたのに、今の冷遇ぶりとの落差に唖然とする。

一時、ターザンの初期を映画化した「グレイストーク」が公開された時だけ、「類猿人ターザン」を表紙を映画の画像に変えて刊行しただけで、他の24冊は廃版にしたままなのだ。

この早川版ターザン・シリーズは、武部画伯の挿絵も素晴らしく、現在ではマニア垂涎のお宝化している有様である。私もかれこれ30年以上、全25巻を揃えようと、古本屋めぐりを続けているが、今のところ半分を揃えるのが精いっぱいだ。

表題の作品は、久々にゲットしたターザン本。見つけた時は、思わず小躍りしましたね。ターザン、ゲットだぜ~!ってポケモンじゃあるまいし。

こんな本ほど、電子書籍化して再販してもらいたいものです。おい、早川、なんとかせい!!! あ、もちろん武部画伯の挿絵付きでね。

コメント (6)
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