多分、30数年ぶりである。
なにがって、私がTVドラマを意識して観たことだ。もちろん友人宅でつきあいで観たことならある。だが、ほとんど頭を素通りである。だから、まともにTVドラマを観たのは本当に久しぶりであった。
このドラマ、随分と話題になっていることは知っていた。おそらく今年はNHKの朝ドラマの「あまちゃん」と、この「半沢直樹」が私が耳にしたTVドラマの双璧であるように思う。だから少しは関心を持っていた。
ただ、観るようになったのは偶然だ。たまたま高速道路で大渋滞にはまり、致し方なく車の中で同行者と観る羽目に陥っただけだ。ところが案に相違して面白かった。思わず引き込まれてしまった。
正直、あり得ないっ!と思ったが、似たようなことなら銀行に限らず、大企業、お役所問わずあるだろうとも思った。だからこそ視聴者の関心を惹きつけたのだろうし、組織の中で仕事をしている人間なら、出来そうで出来ないことをやってのける主人公に喝采を送るのも当然にも思う。
ただ、最終回の終盤、悪役たる常務への処遇が分かった時点で、主人公が組織から放り出されることが予測できてしまった。おそらく大組織で管理職経験がある人なら、当然の結末であったと思う。
もちろん、視聴者のなかにはあの結末に納得がいかず、あれは次回作を予感させるための演出だと捉えた人も少なくないだろう。そのような側面がないとは言わない。でも、組織を管理する立場にあった経験があるなら、あれはある意味必然の結末でもあったはずだ。
組織というものは、その組織が作られた目的を達成するための手段であるはずだ。しかし、多くの場合歳月が経つごとに、その組織を維持することを無意識の裡に至上の命題としてしまう。
銀行という組織にとって、半沢直樹の主張は如何に正しかろうと、半沢の存在そのものが組織の維持を危うくするとの認識が先立ってしまう。それゆえの当然の結末である。
だが、あのドラマに勧善懲悪のカタルシスを求めた視聴者は納得するまい。あれだけの視聴率をとり、話題にもなった金の卵でもある。間違いなく二匹目のドジョウは狙われるだろう。
私がそれを観るかどうかは不明だが、久々にわざわざ観るだけの価値はあったドラマでした。敵役であり、悪役でもあった常務の土下座。あの演技は見物でしたね。個人的には主人公の好演よりも感心しました。