難しいことを難しく書くのは、そう難しくはない。
本当に難しいのは、難しいことを優しく分かり易く書く事だ。さらに面白く書ければ、まさに素晴らしいのだが、非常に難しいのは常々感じている。
税理士という仕事柄、税金に関してなるべく分かりやすく、かつ興味をもってもらえるような記事を書きたいと思っている。でも、生半可な専門知識が邪魔をして、日頃税務に無縁の人たちに楽しんでもらえるような記事は、ほとんど書けていないのが実情だ。
ところで表題のタイトル「事象の地平」という言葉から、何を思い浮かべるであろうか。
少し物理学、相対性理論をかじった人ならば、シュヴァツシルト面のことかと思い出すだろうし、SF小説好きならばワープ航法だとか、ブラックホールを思い浮かべるかもしれない。
はっきり言って簡単に説明することなんざ無理だと思うが、それでも無理してみると、我々人間が把握できる情報認識の限界を指して事象の地平線と呼ぶ。
これでも難し過ぎる。
まァ、要するに私らに実感できることの限界点なのだろう。・・・書いていて頬が赤らんできたぞ。こんな雑な説明でいいのか?
こんな難解な言葉をタイトルにもってきた困った御仁が川原泉である。しかも、この小難しいタイトルをもってきたエッセイな癖に面白いのである。並大抵の知識人ではないと思うぞ。
ただしカーラ教授自身、思いっきり文系の人であり、物理学も相対性理論も出てこない。主に歴史と哲学関係の薀蓄なのだが、これが面白い、いや、笑ってしまう。
薀蓄で人を笑わせるのって、けっこう難しい。私自身、何度となく失敗しているので良く分かる。ただこのエッセイの書き手は、脱力系漫画で名高い川原泉である。思わずニヤりと、あるいは吹き出してしまうような薀蓄満載である。こりゃ、才能というか天性のものがあるね、この人。
師走という忙しない今日この頃、少し疲れた脳みそを和らげようと思ったら、最適の一冊かもしれませんよ。どうぞご賞味あれ。