本音はどこか。
なにが分かりにくいって、中国人の喧嘩ほど分かりにくものはない。直接に殴り合い、蹴り合いと実力行使に及んでいるのならともかく、口げんかとか悪口の場合は注意を要する。
これは私が直接体験したことだが、ある中国人が私のことを悪し様に罵っていると数人の知人が教えてくれた。その知人は皆、日本人であったことが後々のポイントであった。
私には身に覚えがなく、何故なのか分からないうちに月日が経ってしまった。そして数年後に分かったのは、その中国人が本当に罵りたかった相手は、当時私の顧問先であった某中国人のことであったこと。
ただ面子を気にする中国人は、直接相手を攻撃せず、私と云う日本人を攻撃することで間接的に私の顧問先の中国人を攻め立てていたのだ。そのことを理解できなかた私の知人(当然、日本人ばかり)は心配して、私に知らせてくれた。
一方、そのあたりの事情が分かっていた中国人は、黙って見ぬふりをしていた。だからこそ、数年後、私を罵っていたはずの中国人の店へ平然と連れてきてくれたのも、当然に中国人。彼女は分かっていたようだ、本当の狙いが私でないことを。
この中国人の面子を重んじた喧嘩の仕方は、中国人以外の国の人々には本当に理解しがたい。だが、知らないでは済まされないのが、今回の北京政府の防空識別圏の発表である。
もともと領空外に設定される緩衝域としての性格が強い防空識別圏は、世界各国で自由に設定されており、特段規制もなければ統一化されたルールもない。一方的に設定され、押し付けられることがほとんどだ。
互いに認め合ったルールがあれば世界平和は守られるなんて、妄想的平和幻想に憑りつかれている人にとっては、このような防空識別圏の存在は不安なものなのだろう。しかし、現実には平和とは、互いの緊張感の均衡点に存在する不安定なもの。
絶対的に安定した平和なんて存在しないし、する訳がない。むしろ不安定で、いつ何時平静が打ち破られるかもしれない状態こそが平和の本質なのだと思う。だからこそ、平和を守るための間断なき努力が求められる。
今回のシナの一方的な防空識別圏の発表だが、これは軍事的というよりも政治的な目的の方こそ注意すべきだと考える。軍事的な面ばかりが強調されているが、北京政府はもちろんシナの人民解放軍首脳でさえ、現時点でのアメリカ側の軍事的優位性を認めている。
そして尖閣諸島はアメリカ自らが、軍事的防衛権に含まれると公言している。負けると分かっている喧嘩をするほどシナ人は愚かではない。
やはり第一に考えるべきは、政治的な面、それも国際的な面ではなく、国内政治だと思う。もっとも新聞などは、日本に対して尖閣諸島周辺へのシナの支配権を既成事実化するための一手段だとする見解が多い。その面を狙った効果を見込んでの発表である側面はあると私も思う。
でも本命はやはり、北京政府内での権力闘争だと睨んでいる。私が妙に思うのは少し前までは、習政権への批判的言論がしばしば見られたことだ。しかし、ここ最近はそのような政権批判はあまり見かけなくなっていた。
だからこそ、怪しいと思う。シナの人たちの争いは、その大半が裏で行われる。水面下で密やかに争い、結果が決まって初めて表に出てくるのが通例だ。日本に対する攻撃的姿勢なんざ、内々の争いを隠すための煙幕に過ぎない。
まァ、その煙幕にさえ将来的な実益を狙うあたりが狡猾なシナ人らしい。そう遠くない時期に、北京政府内部で小さくはない人事異動が発表されるのではないか。私はそう予測しています。