誰もが知っている著名な作品なのだが、原作を読んだことがある人は案外少ないと思う。
実は漫画アクション誌上に連載されていたのは、1967年から69年までの三年あまりに過ぎない。面白いアイディアだと思ったが、当時小学生だったので単行本さえ読む機会は滅多になかった。
しかし、読んでみて驚かされたのは絵柄の個性。アメコミとも劇画とも異なる長身痩躯のキャラクターは、あまりに印象的過ぎて忘れがたい記憶を残した。ただ、作品自体は、けっこう暗めのストーリーに思えたのは、後のアニメが違い過ぎたからだろう。
そう、人気が出たのはやはりTVアニメとして放送され出してからだ。放送時には中学生であったが、どちらかといえば大人向けのアニメであることに驚いた覚えがある。ただ、いつのまにやらキャラクターの性格やストーリー展開が明るくなっていたの違和感を感じた。
これは初期のルパン三世を観ていた人でないと感じない違和感だと思う。後で分かったのだが、TV局のアニメ制作部門と著者との間で話し合いがもたれ、子供向けにだいぶ変更をしたらしいのだ。
元々ルパンの敵方として現れた五右衛門なんて、いつのまにやらルパンの仲間と化し、ニヒルなガンマン次元に至っては、その渋さがお笑いネタになるキャラに堕してしまった。
そして、世紀の大泥棒ルパン三世は本来の闇社会の住人から脱して、明るいオバカキャラを演じるようになり、子供たちの人気に火が付いた。この人気は長く続き、現在では青山剛昌の人気漫画のTV版「名探偵コナン」とコラボされて映画化されるほどである。
元々の原作で暗く光っていた犯罪者ルパン三世は、今ではその痕跡を探すのも難しいほどキャラクターが変わってしまっている。きわめて個性的な絵柄を特徴としていた作者であるモンキー・パンチは、けっこう不満なのかと思っていたらそうでもないらしい。
ファンの間では名作として名高い「カリオストロの城」が人気を博した時も、もはや私のルパンではないと云っていたようですが、「デッドオアアライブ」で自ら監督を務めながらも、かつてのダークな雰囲気をまとった犯罪者ルパン三世の姿は描けなかった。
もはやルパン三世は、作者の手を離れて自由に出来ないほど巨大な人気キャラクターと化してしまった。だから原作漫画で描かれた敵を背後から撃つ抜いて、ニヒルに笑うルパン三世をTVに出すことは出来なくなっていた。
現在のモンキー・パンチ氏は漫画製作から離れて、某大学の講師をしているそうだが、子供たちの支持を受けてルパン三世が変わるなら本望だと述べていたと聞いたことがある。どこまでが建前で、本心はどうなのかは不明だが、ルパン三世の稼ぎは彼を十分満足させるものであったのだろう。
でも機会があったら是非一度は原作漫画に目を通して欲しい。TVの明るくてコミカルなルパンとは、まったく別人の犯罪者ルパンに驚かされると思いますよ。
余談ですがルパン三世といえば峰不二子。でも子供の頃はどこがイイ女なのか、さっぱり分からなかった。大人になってようやく分かりましたね、あの手の悪女の魅惑という奴が。まァ、知らずに済んだほうが良いのは間違いないのですがね。