ヌマンタの書斎

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売るなら今でしょう

2013-12-16 13:44:00 | 経済・金融・税制

今年もまた平成26年度の税制改正大綱が発表された。

既に新聞やTVなどで報じられているとおりで、特段目立った項目はない。だが、あまり報じられていないのだが、一点私ら税理士が注目せざるを得ない項目があった。それが生活に通常必要でない資産に、ゴルフ会員権が加わったことだ。

かつてゴルフ会員権を手に入れることは、中産階級の人たちには大いなるステータスであった。高度成長期に数十万で買った会員権は、バブル期には数百万円で売却できた。勢いに乗って1000万円以上の預託金と数十万円の入会金の新しいゴルフ会員権が多く発売された。

ゴルフ場開発に資金を出していた銀行がすり寄ってきて、今買っておけば将来値上がりしますよとの甘い言葉に乗せられて、銀行から借金をしてまでしてゴルフ会員権を買ってしまった人は少なくない。

あまりに会員権を大量に発売したが故に、いつ行っても大混雑で、プレーも満足に出来ないゴルフ場が出たのは、ある意味必然といっていい。
やがてバブルが弾けて、長期の景気低迷に陥ると、期限が来ても預託金を返金できないゴルフ場が相次いだ。

結局、預託金はゴルフ場を倒産させないために、大幅に減額されてしまい、高値の売却も望めず、多額の銀行借入金だけが残る。合併が相次ぎ、行名さえ変わってしまった銀行は、過去の話だと知らん顔で融資の返済を平然と請求する厚顔ぶり。まさに踏んだり蹴ったりである。

でも、一つだけ救いがあった。それがゴルフ会員権の売却により、確定申告で売却損を計上し、給与や不動産所得と通算して税金を安くすることだ。これにより税金を安くして還付を受けた納税者は少なくない。

ここで、資産の売買について簡単にまとめてみたいと思います。ただし、不動産(土地、家屋)は除きます。つまり資産のうち動産の売買についてです。

まず、動産を売ればその儲けは譲渡所得として課税されます。ただし、生活に通常必要な動産(家財等)を売却しても、その売却益は非課税であり、売却損はないものとみなされます。ですから、皆さんがリサイクルショップなどで衣服、家財などを売っても税金はかかりません。

しかし、その資産が生活に通常必要でない資産の売却は課税となります。具体的には総合譲渡所得として所有期間(五年)により区分されて計算されます。

ただし、問題は売却損が生じた場合です。生活に通常必要でない資産(美術品や書画骨董、ヨットなどの贅沢品)の売却益は課税されますが、その売却損は「ないものとみなす」所得税法69②、施行令200と規定されています。つまりその売却損は、他の所得との通算が出来ない。

ところでゴルフ会員権って贅沢品ではないでしょうかね。私はそう思っていたのですが、所得税法を勉強すると何故かゴルフ会員権は、生活に通常必要でない動産には含まれていませんでした。つまり売って儲かれば課税、損を出せば他の所得と通算が出来た。

繰り返しますが税法はゴルフ会員権を生活に通常必要な動産とは取り扱っていません。でも、生活に通常必要でない資産にも挙げていませんでした。つまり税法上のグレーゾーンにあったのです。

だからこそ、膨大な含み損を抱えたゴルフ会員権を持っていた人は、それを安値で売却して確定申告で損失の通算をして、税金を安くし、又は還付を受けていたのです。

しかし、今回の税制改正大綱では、ゴルフ会員権を生活に通常必要でない資産に認定して、その売却益には課税する一方、売却損を他の所得との通算を認めないとしてきたのです。

実は、このゴルフ会員権の売却損の計上による節税封じは、過去何度となく噂になってきたのですが、国会に上がる前にいつのまにやら消え去り、今日まで温存されてきたグレーゾーンでした。

だから今回の税制改正大綱も、国会やら委員会やらの審議中にゴルフ会員権の項目は消え去る可能性がないではない。でも、安倍政権は財務省の意向に非常に忠実であるとの印象を拭い切れません。

ちなみに適用は平成26年4月以降のようです。現時点では法案であり、国会通過は2月もしくは3月を予定しているので、まだ確定ではないにせよ、このままの形で国会を通過する可能性は高いと思います。

そんな訳で私の事務所では、含み損を抱えたゴルフ会員権を持っていると思われる顧問先に、急遽連絡をとって今後の対応を助言することになったのです。さっそく今月中の売却を決断した方もいるし、まだ当分遊びたいゴルフ場なのでそのまま持っていると判断した方もおります。

節税のためだけに売却するのもどうかと思いますが、使っていないゴルフ場ならば、その会員権は今のうちに売った方が良いと思います。もし思い当たる節がありましたら、ご検討してみては如何でしょうか。

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