そろそろ頭の中で警告音が鳴り始めている。
なにがって、株式市場である。既に先週末には東証平均で一万5千円を超えている。同様にアメリカ市場も上がっている。
私には妙に思えて仕方ない。まず日本だが、アベノミクスやら金融緩和やらで、上場企業の好決算が続いている。だから東証平均が上がるのは当然だとしたり顔で論評するエコノミスト様がいる。
本当なのか。たしかに株式の大幅な評価減を計上する上場企業は減った。だが売上はもちろん、利益もそれほど好成績だとは思わない。むしそ危機感を持って臨んでいる経営者のほうが多いように思う。
私自身が直接、関わっている企業の決算で昨年よりも好成績なところは稀なのが実情だ。守秘義務があるので具体的な数値は出せないが、マスコミ様が言うほどには売り上げは伸びていない。
もちろん不動産売買は昨年よりは活発だし、一部の高額商品が売れているのは私も実感として分かる。しかし、一般的な商品の売れ行きは、それほど良くないのが実情であろう。
私の見たところ、昨年まで株の含み損を抱えていた連中が、今年の株高から売りに転じ、その売却金額が高額商品の消費に回っているように思う。つまり日常的な生活関連の消費は、昨年とほとんど変わりはない。
これは好景気とは言い難いと思う。いくら金融緩和を行おうと、企業は新たな設備投資に及び腰だし、従業員の給与だって目に見えて増額されている訳ではない。統計数値から増えているはずだと思う人はいるだろうが、あの統計数値は手取り額ベースではない。
総額は増えていても、そこから天引きされる所得税、住民税、そして9月から増税した社会保険を加味すれば、実施的な手取り収入はそれほど増えていない。これがアベノミクスの現時点での実態であろう。
では、何故に株価は上がっているのか。
本来、株価というものはその株式を発行している会社の業績に連動しているはずだ。すなわち高い利益を上げていれば高配当が期待できる。また先進的な事業展開が期待できれば将来の値上がりを予想して株価は上がる。その逆ならば株価は下がる。これが原則だと思う。
しかし、現在の株式市場はこのような原則で動いていない。まったく別の原理で金融市場は動いている。その原理の主役は巨大な国際投資ファンドである。この世界をまたにかけて活動する投資ファンドは、従来の株式市場原理とは異なる動きをする。
天文学的な資金を持つ投資ファンドは、投資家にリターンし、自ら(投資マネージャー)も高い報酬を得る為、常に市場を駆け回る。彼らにとっての恐浮ヘ、動きの少ない金融市場だ。一般の投資家にとっては、動きの少ない金融市場は安定した投資先であり、特段問題はない。
しかし、常に膨大な資金を動かして、その利ザヤで利益を確保する投資ファンドにとっては、安定した市場は利幅の薄い、すなわち儲からない市場に他ならない。だから激しい変化が起こる金融市場こそが稼げると認識している。
厄介なことに、彼ら国際的投資ファンドはその巨額な資金を集中的に動かすことで、市場に波風を立てることが出来る。彼らが安値で推移していると判断した金融市場に、膨大な資金を投入して加熱した市場を作り出す。
そして頃合いをみて資金を引き揚げて利益を確保する。その金融市場の本来の正常な株価なんぞ、彼ら投資ファンドには単なる指標に過ぎず、むしろその正常値を大きく揺り動かすことで利益を得ようとする。
つまり従来の正統的な株式市場における値動きの原理が通用しないのが、国際的投資ファンドなのだ。彼らは4年前のリーマン・ショックから資金をブラジルやロシアそしてシナなどの途上国に移し、そこで大きな値上がりの騒乱をお越し、大きな利益を確保すると、さっさと資金を引き揚げた。
そして市場価格が低迷していたアメリカ、日本の金融市場に再び資金を大量に投じた。日本のアベノミクスなんざ、この投資ファンドの資金流入なくしてあり得ない。なぜなら実態経済はたいして回復していないからだ。それはアメリカも同様であり、雇用統計や住宅着工件数もそれほど伸びていない。
にもかかわらず日本も、そしてアメリカも株式市場は非常に高値を推移している。これこそが、私の脳内警告音の震源である。そろそろ投資ファンドが利益を確保して、売り逃げする時期が来ているのではないか。
その日が来れば、再び株式市場は大きく落ち込み、消費マインドは冷え込むどころか氷結し、一気に不況のどん底に落ち込むはずだ。
私の予測、外れて欲しいと思う。今年が景気低迷の最後の年で来年からオリンピックまで上昇基調に乗って欲しい。そう、切実に願うが、予測が当たる可能性が低くないことも分かっている。
年の瀬に、こんな嫌な予測したくはなかったのだが、最近の状況を鑑みると悲観的にならざるを得ない。あァ、困ったなァ。