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ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

蛍の泣く島 松本零士

2015-03-27 12:15:00 | 

古本屋の店頭で見つけたとき、買うか、買うまいか結構迷ったのが表題の作品だ。

まず間違いなく家のどこかにあるはずの漫画なのは確か。ただ、どこにあるのかが分からない迷子の作品なのだ。もしかしたらレンタル倉庫に送ったのかもしれないが、何故か記録には残っていない。

普通なら諦めるのだが、なにせ値段が100円(税抜き)なのだ。古本の価値を短期間で売れるか売れないかで判断する某新古書店ならばの値段なので、買う気になってしまった。

ちなみにネット通販などで見ると、大体400円から500円前後で売られている。ちょっと得した気分である。

短編集であり、1970年代にビックコミックなどに発表されたものばかり。この頃の松本零士は、まだ宇宙戦艦ヤマトや銀河鉄道999の前だけに、よく見かけるが、あまりメジャーな人気はない不遇な作家のイメージが付きまとっていた。

しかも、その作品からは売れずとも誇り高さだけは失わないといった気概とは裏腹な惨めさが漂っていた。貧乏くさい画風の漫画家なら沢山いたが、プライドの高さと劣等感とを同時に感じられる漫画家は、この松本零士がダントツだったと思っている。

そして白状すると、私はこの頃の作品が一番好きだ。後年ヒット作、特にヤマト以降の松本作品には、なんとなくだが劣等感の裏返しの匂いが強く感じられて、それがあまり好きでなかった。

むしろ売れなくても、自分の好きなことを描いていたこの頃の松本作品にこそ、この人の真価があったように思うのだ。だから私の好きなのは「インセクト」「セクサロイド」そしてこの「蛍の泣く島」の三冊だ。

「セクサロイド」を除けば皆短編集ばかり。連載が続くような人気作家ではなかったが故だと思うが、その分短編には佳作が多い。もし機会があったら是非とも手に取って欲しい。決して売れ筋の漫画ではないが、その分松本零士という漫画家の根幹ともいえる作品に出合えると思います。

コメント
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